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君と歩んだ地獄手記。  作者: 秋月
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第二章 一項 事件発生と執行官

霧雨の降るある夜、男は苦しみ悶えながら逃げるようにして彼の自宅から飛び出した。

彼に続いてもう一人の男が悶え苦しむ男を追い詰めるようにしてゆっくりと現れる。その彼の手には短剣が握られていた。


「頼む殺さないでくれ」

「わかった。貴様に20秒やる。若し、貴様が私から逃げきることが出来たら殺さないでやろう」


腹部を刺され服に血が滲み、痛みのあまり動けなくなっている男に対し情け容赦なく亡者は言った。

「どうした?逃げる機会をやるといっているんだ。走れ」


男は右手で左下腹部を押さえ、顔が歪むような激痛と葛藤しながら体を起こし、傷口を広げないようにガクガクと走り出した。

男は暗闇の住宅街に向かって叫んだ。

「おい!誰か助けてくれ。あの男に刺されたんだ」


しかし、暗闇に包まれる家々からの回答は残酷なのもであった。さっきまで見えていた家の光が突如として消され、同時に開いていたカーテンが勢いよく閉じられる。まさに、彼は世界から断絶されたのである。その間も時は止まらない。亡者の持つ懐中時計は着々とその秒針を進めてゆく。

「18」

「待ってくれ!話せばきっとわかってもらえるはずだ」

男は左手を亡者の方へ突き出しストップのジェスチャーをした。

「19」

嬉しさのあまり亡者のカウントダウンの声が大きくなる。

「助けてくれ」

「20」

秒針が20を指した時、亡者の顔は期待の顔から満面の笑みに代わった。


「ああ、やっとだ。お前を殺そうとして何年がたっただろうか。獄卒に追い回され、やっとの思いで逃れることができたかと思えば永遠と続く逃亡生活。」

亡者は嬉しそうに男へ歩み寄る。

「ずっと君に逢いたかったんだよ」

男の耳元で囁くように言った。さらに獄卒は男の喉を掻っ切るために髪を掴み短剣の刃先を喉元に突き立てた。

「ああ、そうだ君の奥さん無様な姿で見つかったんだってね?あれ私がやったんだ」

「貴様……をコロ…シテ」

男が話すたびに亡者が男の喉元に突き立てている短剣が食い込んでゆき、ゆっくりと流れ出る男の血が短剣の刃を伝って滴り落ちる。

「あ、確か君には娘さんがいたね。指をくわえて見ていればいいさ。娘さんもじっくりと甚振りながら殺してあげるから」

わずかに抵抗する男を髪を掴み、力づくで静止しながら嬉しそうに言う。まるで亡者はスカッとする復讐劇でも見ているかのようであった。

「さぁ、君は死ぬけど娘さんはいつまでもつかな」

男は喉を深く刺された瞬間、魚のように口を大きく開け不気味な声を上げ痙攣を起こしながら死んでいった。










獄卒と麟太郎は新しい拠点に身を置いている。その拠点は獄卒専用のビジネスホテルのようなもので盗聴、傍聴を防ぐために電話線も特別なものが使用されていた。獄卒が受話器を取るとその先には電話交換手がいる。

「こんばんわ。どちらにお繋ぎいたしますか?」

「こんばんわ。司法省に頼む」


その声は電気信号となって電話交換手のもとまで届けられた。複数人いる女性の電話交換手は忙しくカチカチとスイッチを切り替え、さらにケーブルをつなぎなおす。






司法省


木を基調とする西洋式の執務室で参事官は窓を通して入り込む青い光に照らされ、書類に目を通す。

「ジリジリジリ」とデスクの電話がけたたましい音を立てながらその部屋の主である参事官を呼び出した。

参事官は彼女のデスク端に置かれた電話に手を伸ばした。

「獄卒番号22374です。ご用件とは何でしょうか」

「ああ、君か。実は、君の連れのことで話がしたかった」

参事官はキンッと音を立て彼女のお気に入りのライターでタバコに火をつけ話し始める。

「今回ある事件が起きた。あの世で50年ほど前に有罪の判決を受けた亡者が獄卒の監視を搔い潜り逃亡したのは知っているだろうが、その亡者が現世において女性一人、男性一人を殺傷しさらにはこの両人の娘を殺そうと企んでいるらしい。さらなる被害を拡大させるかもしれない亡者をあの世の司法省としてもみすみす見逃すわけには行かない。そこで、君の連れている霧崎麟太郎だ。実は、本事件を引き起こした亡者というのが霧崎麟太郎が除霊しなければならない者のリストに入っているんだ。だから、霧崎麟太郎を本件においてのみ執行官に任命して事件の早期解決と娘の早期保護のために全力を尽くしてほしい。やってくれるかい?」

「はい」

「よろしく頼むよ」

参事官は電話を切った。






同刻。ホテル

「さぁ、麟太郎!お仕事だ」

麟太郎は部屋に一つしかないベッドに大の字になって寝ころび尋ねた。

「今回は何をすればいい」

獄卒はまたやりやがったなコイツと思いながらベットをまんまと占領する麟太郎を見たが、すぐに気を取り直して話を続けた。

「今回君には執行官になってもらう」

「執行官ってなんだ」

「執行官ってのはあの世で行われた審判の罰を履行しない亡者に対して強制的にその罰に見合う代償を負わさせる者のことだ。通常であれば、獄卒がこの仕事を任されるのだけれど、今回に限っては君にご指名がかかったからね」


そういうと獄卒はパチンッと彼の指を鳴らし破邪の太刀を取り出した。そしてゆっくりとその刀を鞘から引き抜く。

「略式だけど大事な儀式だからさ麟太郎はそこに立って、俺の方へ向いてほしい」

麟太郎はベットから立ち上がり獄卒の方を向いた。

「ふつうはこれ大王がやる儀式なんだけどね」

と獄卒は麟太郎に笑いながら言ったが、すぐに真面目な顔に戻り儀式を始めた。

麟太郎からすれば何が始まるんだと不思議に思いただ見ているだけであったが、獄卒が口をパクパクしているのが見える。よく見ると、「ひざまずけ ひざまずけ」といっているのが見える。麟太郎は指示に従いひざまずく。続いて、獄卒は麟太郎の右肩に刀の側面を置き、更に彼の手首を返し麟太郎の頭越しに刀が半円を描くようにしてもう片面を麟太郎の左肩に置いた。

「さぁ!これで儀式は終わりだ。これから君はれっきとした執行官だ」

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