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独白  作者: 斜に構えたい
3/4

 俺は弱キャラ友崎くんというラノベが嫌いだ。なぜなら内容が刺さるから。


 俺は努力することが嫌いだ。まあ好きなやつも少ないだろう。正味俺のステータスは上の下くらいであるだろう。運動ができない以外はそこまで悪くないという自負がある。そう信じている。いやコミュ力が終わっていた。下の下である。ガチの弱キャラだ。


 いや少し違うのだろう。会話ができないわけではないのだ。交流の輪を広げる気がないのだ。そもそも一人が好きなのだ。おしゃれには気を使っている。これは自分に自信を持つためである。髪、眉、服、靴を整え香水を身にまとうと自分が違う存在になった気になれる。周囲から浮くことがなくなる。一人でカフェに行く、ショッピングに出かける、遠出する。自身をもてる自分、すべて一人だ。


 ここにおいて俺は変化を求めていない。ひとりである程度の幸福を味わえてしまっている。ここから変化することが怖いのだ。大学生活も幸いにもコロナが直撃したことでぼっちでもなんとかなった。いや不幸にもなんとかなってしまったのだ。


 俺は必要に駆られれば行動する。勉強も将来に必要だから頑張った。親に迷惑をかけるわけにいかないから。中学、高校では周囲とかなり良い関係を築けていた。他人に一人をバカにされるのが嫌だから。部活にも精力的に活動した。人に良く思われたいから。いつまでたっても俺は行動基準を他者に求めている。何と愚かなことか。


 初めに戻ろう。友崎はどうしてあそこまで行動的になれるのか。それが理解できないのだ。俺との違いを圧倒的に見せつけてくる。自らの意思で変化を求めることは怖いことだ。


 変わらなくていいのだと自分に言い聞かせる。あと二年なんとなく研究をしてなんとなく就職するのだろう。必要だから。


 

 必要に駆られ高校の同窓会にも行った。別人のようになったやつ、変わらないやつ、来ないやつ、いろんな奴がいた。俺も見た目だけは変わっている。周囲から浮かないため、自信を持つために見た目だけは整えるようにしたから。別人かと思った、今の方が断然いいよと言われた。俺は嬉しいよと返す。中身は何も変わっていないのに。


 将来の展望を語るやつもいた。聞けばなかなかの企業に春から働くのだと言う。同棲をはじめ結婚を考えていると言うやつもいた。根本的に俺とは違うのだと感じた。彼らはもうれっきとした大人なのだ。建設的に現実的に物事を組み立てている。俺はいつまでも思春期を引きずり拗らせている子供のままだ。


 二次会にも行った。思い出話をした。彼ら大人にとっては懐かしくものであったのだろう。昔話を聞いている気分だった。俺は何も変わっていないことが浮き彫りになった気がした。嫌気がさす。

 俺は酒に弱い。顔に全くでないから酔っていないと思われがちなのが嫌だ。酒を飲みすぎても吐くことはないが記憶が薄くなる。あやふやな記憶のまま三次会にも行った。終電もわざと逃し残った十人ほどとたわいもない話をした。ほとんどの人が来年度から社会人だった。オールするのも最後かな、そういうのも耳にした。彼らは大学生の終わりとして最後を楽しむためにいるのだろう。

 俺は強い酒を一気に煽った。何も考えたくないから。忘れられるように。正直そこからの話は詳しく覚えていない。上手く笑えていただろうか。彼らの学生としての最後が悪いものになっていなければよいが。俺は自分が酒に弱いことに今は感謝している。


 もう少し自分に酔えたらよかったな。


 


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