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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
94/96

94『月が綺麗だぞ』

くノ一その一今のうち


94『月が綺麗だぞ』そのいち 





 ――月が綺麗だぞ――



 いきなり思念が飛び込んできた……動けない。



 姿も気配も完ぺきに隠していた。


 実戦では多田さんにも敵わない。まして、その棟梁の猿飛佐助には勝てない。これまでにも何度かぶつかったことはあるけど、勝負にならなかった。


 でも、手出しをせずに見ているだけなら気づかれることは無い。


 これでも風魔流の統帥なんだ、自分の力量は分かっている。


――そこはな、ムクドリの休憩場所なんだ。その休憩場所にムクドリの気配がない。ということは、そこに誰かが居る。すっかり気配を消していたんだろうけど、今ので動揺して気配が漏れてソノッチだと分かったぞ――


 ク……そういうことか。


 立ち上がると最短距離で佐助の横に座る。


「大胆だな」


「見つかってしまったのなら、少しばかりの距離を置いても同じですから」


「そうだな、的確な判断だ」


「どうしたんですか?」


「満月と云うのは魂の道しるべという言い伝えがある。星々でもしるべにはなるんだがな、満月は星の何十倍も明らかに死者の魂を冥界に誘ってくれる」


「はあ……」


「太閤殿下が身罷られた時はあいにくの曇り空で、月はおろか星も出ていなかったという……太閤殿下の御霊は、往生できずに淀の方様に憑りついて豊臣の家の行方を誤ったと言われている」


「そうなんですか?」


「どうだ、月をしるべに飛んで行く魂が見えないか?」


「え?」


 何を言ってるんだ、昼間の戦闘で命を落とした者たちのことか? いや、佐助は人の死にいちいち感傷を抱くような男ではない……!?


 ハッとして俯せている王子の方に目がいく。


「王子は眠らせてある、動揺が激しいんでな」


「?」


「国王が死んだ」


「え……ええ!?」


「腹上死だ」


「フクジョウシ……?」


『愛し合っているうちに突然死することですッ』


「え(#'∀'#)」


 えいちゃんが教えてくれて、あたしは狼狽えて佐助は声を出さずに笑った。


「ノッチ、お前はいい助手をもったな」


 しまった。


「王子に全権を握らせるために、国王は好きにさせていた。王子については十分すぎるほどに気を付けていた。必要な時は、こんな風に俺が代役をやっていたしな。しかし、親父の国王はノーマークだった。まだ52歳だし、健康には何の問題も無かったしな……草原の国は戦争どころでは無くなってしまった」


「どうするんですか?」


「国王の死は伏せてあるが、じきに知れてしまう。医者と側室には『極秘』を言い渡してあるがな、どこまでもつか……しばらくは混乱が続く。我々は当分手を引く」


「え、そうですか」


「おまえ……」


「はい?」


「こういう時でもタメ口にならないんだな」


「え、あ……」


「忍びにあるまじき美点だ」


「はあ」


「褒めてるんだぞ」


「ども……あの……」


「なんだ」


「素朴な質問なんですが、どうして国王に化けなかったんですか? 最高権力者は国王なんだから、国王に化けた方が確実じゃないですか?」


「アハハハ(ᵔᗜᵔ*) 」


「なんで笑うんですかぁ!?」


「まあ、しっかりやれ、俺たちが次の手を考えるまではな」



 ほんの一瞬月が陰ったかと思うと佐助の姿はかき消えていた。


 


☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母(下忍)

百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一

十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下

杵間さん         帝国キネマ撮影所所長

えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手

豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)

アデリヤ         高原の国第一王女

サマル          B国皇太子 アデリヤの従兄


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