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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
72/96

72『アデリア王女に先導されて王都に向かう』

くノ一その一今のうち


72『アデリア王女に先導されて王都に向かう』そのいち 





 じっさいアデリア王女はレイバンのサングラスをしている。



 落ちこぼれJkのわたしにサングラスのブランドなんか分からないんだけど、『お、レイバン』『マッカーサーのといっしょだ』と、徳川社長と百地社長が闇語りで呟いたから分かった。


「王女殿下おん自らのお出迎えに感謝いたします。まず、撮影準備隊メンバーの紹介をいたします」


「うむ」


 桔梗さんのイントロディユースに合わせて、みんな一列に並び、わたしも最後尾に付く。桔梗さんが通訳しながら紹介していくようだ。


「徳川物産社長の徳川秀長です」


「ん、徳川なのに秀吉の秀の字が付くのか?」


「二代将軍秀忠の子孫ですので、代々秀の一字を戴いております」


「そうか、よろしくな」


「徳川グループ、百地産業社長の百地三太夫です」


「百地です」


「よろしくな」


「『バトル オブ ハイランド』の作者三村紘一先生です」


「よろしく」


「主演女優の鈴木まあやです」


「鈴木まあやです、お目にかかれて光栄です」


「……どことなく、先王后に似ている」


「あ、それは光栄です」


 パッと頬を染めるまあや。


「……よろしくな」


「まあやの後見職の風魔そのです」


「ほう、こんなに若いのに後見職か、よろしく」


「お目にかかれて光栄です」


 後見職にされてしまった(^_^;)


「主演の相手役をいたします、ミヒャエル・ミュンツァーです。ミッヒとお呼びください」


「よろしくな、ミッヒ」


「そして、わたくし、徳川物産の社長秘書兼通訳の桔梗と申します」


「うむ、よろしく頼むぞ」


 仏頂面のまま王女が締めくくると、空港の格納庫から年代物のボンネットバスが出てきて、我々ゲストはバスに、王女はトヨタに乗って高原の道に乗り出した。桔梗さんが「都のカワンバートルに向かいます」と教えてくれた。




 草原の国よりも緑が豊かだ、高原というからには標高が高いだろうに、どういうことだろう。




「先々代の国王が治山治水に熱心で、先代の国王は産業の振興に励まれました。日本流に言いますと美し国、そこを草原の国が狙っています」


「そうなんだ」


 バスの席が隣同士なので、桔梗さんは地声で話してくれる。


「それだけじゃありません、高原の国が手に入れば、その富と技術で中央アジアを手に入れられます。そうすれば、中国やロシアとも肩を並べられます。すでに、西部や北部では紛争が起こってPKOの部隊まで……日本は、もう引き揚げましたが。そして、木下が埋蔵金を資金にして乗り出し始めています。この国を木下が呑み込んでしまったら……」


「取り返しがつかなくなるのね」


「はい」


「でも、ちょっと大げさじゃない。社長が出てくるなんて初めてでしょ、それも二人も来て」


「それは……王宮に行けば分かるかと思います。王女さま次第ですが……」


 バスの前を行くトヨタに目を向ける桔梗さん。


 そう言えば、どうなんだろ……王女さま自ら来られた割には、貧相な出迎え。挨拶の間もサングラスを外さず、ちょっと違和感。


 王都カワンバートルが近くなるにつれ、整備途中の、おそらくはハイテク産業と思われる建物がチラホラ見えてきた。


「稼働中の企業もあったんですが、半分近くは閉じていますね」


「…………」




 JK忍者のわたしには、発展しかけか没落の始まりか分からない景色だ。




 バスは、工場よりビルが目立つ市街に入って行った。


 大通りに入ると、正面に金色の尖塔を従えた宮殿が見えてきた。




 あ!?




 あと2ブロックで王宮というところで、官公庁のようなビルの上1/3あまりが焼けただれているのが目に入った。




☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母(下忍)

百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一

十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下

杵間さん         帝国キネマ撮影所所長

えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手

豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)

アデリヤ         高原の国第一王女

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