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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
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7『百地芸能事務所・2』

くノ一その一今のうち


7『百地芸能事務所・2』 





 油断はできないけど、単調過ぎると思った。



 勢いはあるけど、古書店の店内から本が飛んでくるだけの事。注意していれば避けられる。


 これで済むわけないよね。


 ビュン!


 今度は、道の反対側から飛んできて、店の中に投げ込まれる。


 ブン!


 次は店の中から!


 ビュン! ビュン! ブン! ビュビュン! ブン!


 不規則に方向が入れ替わる。


 でも、まだまだ大丈夫。投げてる奴は、なかなかの強さとコントロールだけども、直前に――投げるぞ!――って殺気を膨らませている。駅前で、男の子が屋上から飛び降りようとしたときの気配に似ている。


 だから、避けられる、問題はない。


 ブビュン!


 しまった! なんと、工事中のマンホールの穴から本が飛び出してきた!


 反射的に建物側に身を躱す!


 ズビュン!


 次は、工事車両から!


 思わず、開いていたシャッターの中に滑り込む! 


 タタタタタ! 道路側の前と後ろから、人が走る気配!


 まずいと思いながら階段を駆け上がる。古書店の共同倉庫なんだろうか、あちこちから古書のニオイがする。


 たくさんの本やグッズが積み上げられていて、さすがに、ここで襲われたら避けきれない!


 三階の階段を上がると風が吹き下りてくる、屋上が開いてる?


 ズサ!


 踊り場の階段を蹴って、開いているドアから一気に屋上に飛び出る。


 ガチャン! バサバサバサバサ……


 扉を閉めると、ダメ押しに投げられた本たちが、扉に当って落ちる音がした。


 それが止んで、屋上を観察すると、日よけの天幕の下にかなりの本が並べられている。


 虫干しかな?


 中には広げて干されている本もあり、中身が見える。


 その中の一冊。会議机の上に広げられている本に目が停まる。


―― 風魔忍者系図 ――


 ページの見出しがあって、その下に役小角から始まり、数代後に爆発的に子孫や係累が増加し、風魔小太郎に収束。そのまま、子孫や係累は丸く膨らんで尻すぼみになって、最後の一滴のように『風魔その』と、あたしの名前が記されている。


 お祖母ちゃんが言ったように、風魔忍者は役小角にはじまり、いったん衰えたものを直接のご先祖である風魔小太郎が盛り返し。それが栄えたのち再び衰え、全体としてひょうたん型になっていて、ひょうたんのお尻から垂れている最後の一滴が、あたし、風魔しのなんだ。


 しまった!


 気づいた時、本は、すごい殺気を漲らせて電気仕掛けのように閉じた。


 バタム! イテ!


 わずかに間に合わず、鼻を挟まれてしまうけど、反射が早かったので、挟み潰される寸前に抜くことができた。


 ここに居ちゃマズい!


 感じると同時に跳躍して歩道に着地すると、古書店街の外れの交差点を目指した。



 忍者アニメキャラの着ぐるみ二体がポケティッシュを配っている。



 通行人の流れを左右から挟んで、ポケティッシュ配るふりして狙う気マンマン。


 その向こう、下校途中の高校生の群れ。


 群れの中にウブなカップルが居て、微妙な距離を空けている。


 クク、隙あらば手でも繋ごうってか、クソ!


 思うと、横っ飛びに電柱をキック、着ぐるみの上方横を飛んでカップルの隙間を駆け抜ける!


 ビュン……なに!?


 油断した! 着ぐるみはカマセで、カップルがフェイクだ!


 カップルもジャンプして、男女の手が伸びてきて、あたしを掴まえようとする!


 セイ!


 気合いで胴一つ分抜いたけど、二人の手にジャージの下を掴まれる!


 逃げなきゃ!


 スポン!


 間抜けな音がしたかと思うと、体が自由になる、自由にスースーと……え!?


 し、下のジャージを取られてしまった! 




☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生

風間 その子       風間そのの祖母

百地三太夫        百地芸能事務所社長

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