表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
51/96

51『魔石の感触』

くノ一その一今のうち


51『魔石の感触』 





 事故や病気で手足を失うことがある。


 失ってしばらくは、失くした方の手や足が痒くなって、掻こうと手を伸ばして――ああ、無いんだ――ということがあるらしい。




 それに似ている、失くした魔石。




 七日ぶりに学校へ行く電車の中、もう二回も感じている。胸の谷間に魔石がぶら下がってる感じ。


 その都度手を当ててみる。


 むろん失くした魔石があるわけもなく、胸をさすって俯いておく。


 アイドルグループの子に、緊張すると胸をさするクセの子がいたっけ。


 胸をさする仕草と、ヘタレ眉が可愛くて、物真似タレントが決め技みたいにやってウケていた。


 わたしがやったって可愛くない。物真似タレントみたいにウケることもない。




 よし、もうやらないでおこうと決心する。




 今朝は運よく座れた。前にいっぱい人も立ってるし、目立つことは止めておこう。


 仕事中や任務中は、こんなに内省的になることはない。


 まあやの付き人、時どき代役として充実してる。業界の人たちは、可愛いとかブスとかで対応を変えることはない。


 この業界、可愛い子なんて掃いて捨てるほどいるし、ブスでも活躍してる人がいっぱいいる。


 だけど、制服着てJKというリアルに戻ると、元に戻ってしまう。


 たいていの高校のたいていのクラスに一人はいるジミ子。


 わたしの場合は、その上に二つ名まで付いて、ブス ジミ子。




 ちょっと自虐すぎ……




 スマホを出してまぎらわせる。


 ニュースをスクロールしていて手が停まる。




―― 諏訪湖で局地的異常気象 ――


 深夜の諏訪湖に突然竜巻が荒れ狂う。竜巻は、諏訪湖の中央部で発生、稲光を伴い、十数分荒れ狂った後に消滅。気象庁は、単純な竜巻であるとしているが、あまりに均整のとれた形と不動のまま消滅したことから、地元では冬場に起こる御神渡り同様に神の意思を示すものと噂されている。


 説明と、あちこちの防犯カメラやスマホで撮られた映像がいっぱい出ている。




 神の御意思なんかじゃない。




 猿飛佐助が草原の国の幻術とコラボして埋蔵金をテレポさせている証拠の映像。


 でも、十数分で消滅している。消滅前の数秒を繰り返して見る。


 欲目かもしれないけど、何かに邪魔されてたち切れているように見える。


 社長はみんなで阻止した的なことを言っていた。埋蔵金のいくらかは転送を阻止できたって。


 どれくらい阻止できたかは言ってくれなかったけど、あの洞窟での言葉は気休めではない……と信じたい。




 あ?




 また胸に魔石の感触。


 思わず胸に手をやって……え、魔石ある( ゜Д゜)!?


 抑えた手にピンポン玉を半分に切ったような手応え。制服の上から握ってみる。


 え、ええ!?


 マジックみたいに手応えが消えて、思わずセーラーの胸当てを引っ張って覗いてしまう。


 とたんに前からの視線を感じる。


 見上げると、オッサン二人と大学生風の顔。揃って――え、残念!――と表情が裏返る。


 そんな、ラッキースケベが地獄になったみたいな顔すんな!




 これは、学校行ってもろくなことないと俯きながら改札を出ると、同じ制服が横に並ぶ。




 ちょうどロータリーを周って目の前にバンが停まって窓ガラスに二人の顔が映る。


 え、ドッペルゲンガー!?


 すると、隣のわたしが口を開く。


「しばらく大阪に行け、学校は儂たちが交代で通っておく」


 わたしの声が社長の言い回し。


 やり過ごしたバンのドアが開いて嫁持ちさんの顔が覗いて、わたしは当たり前のように乗り込んだ。




 あとに続いて猫が乗ってきたのは、わたしも社長も嫁持ちさんも気づかなかった。


 


☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母(下忍)

百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一

十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ