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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
39/96

39『おたまがいけ』

くノ一その一今のうち


39『おたまがいけ』 





 甲斐善光寺を出て、三村紘一(課長代理が化けてる)の車で甲府市内のホテルに戻ってロケチームと合流する。



「なにか面白いことあったぁ?」


 顔を見るなりまあやが聞いてくる。


 ロケチームで借り切っている喫茶室なので、遠慮も警戒も無い。


「信玄の心を覗いてしまったかも……」


「え、信玄の心!?」


 反射のいいまあやは、鼻がくっ付きそうなところまで顔を寄せて話を聞きたがる。


「実はね……」


 まあやの好奇心に応えるべく、ことさら、秘密っぽく善光寺でのあれこれを話してやる。


 むろん裏稼業のことは秘密にしてね。


「わたしも行ってみたいなあ、心の字の形の地下迷路って、そそられるよね!」


「三村先生は、大いにインスピレーション掻き立てられたみたいだけどね」


「うん、三村先生って、結末で九個謎解きしても一個は謎のままにしてるでしょ。それって視聴者にも人気だけど、やっててもワクワクするのよねぇ。ほら、第二十回の『お玉が池由来』で、千葉道場ができたころの話があるでしょ?」


「ああ、龍馬たちが無茶ばっかりやるんで、師範が昔話して意見するとこだね」


「うん、建築費まけてもらうために神田祭の警備係りやったり、お化け退治やったり」


「うん、立ち回りやったら『その、すごみ過ぎ!』って怒られた(^_^;)」


「いっぱい、仕掛けのある回だったけど、肝心の――なぜ、お玉が池に道場を開いたのか!?――って謎解きは無かった」


「あ、そう言えば」


「でね、撮影が終わって先生が見えた時に聞いてみたの『なんで、お玉が池だったんですか?』って……ふふ、そしたらね(〃艸〃)」


「そしたら?」


「こっそり教えてくれたの」


「なんてなんて!?」


「江戸に来た時に、周作は、宿の飼い猫に『お玉が池がいいよ』って勧められるの」


「猫に?」


「うん、その猫の名前がね『お玉』って云ってね『お玉が行けと申したからだ』ってオチになるんだって! あ、これは最終回まで秘密だから、ソノッチも人に言っちゃダメだよ」


「う、うん」


 それって、絶対に咄嗟の言い訳だよ(^_^;)。なんせ三村紘一の本業は徳川物産の課長代理、徳川忍者部隊の元締めだからね。


 寂しがり屋のまあやは、その後も話を聞いたり話したりで喜んでくれたんだけど、肝心の事を忘れていた。


「あ、いっけない!」


「どうしたの?」


 ちょっと待ってと、打合せから戻ってきた監督になにやら相談。


「ソノッチが戻ってきたら、さな子さんのお墓に行こうと思ってたんだけどね、もう日が落ちて天気も悪くなってきたから今度にしなさいって」


「あ、ごめん、わたしも話し込んじゃったから!」


「ううん、めっちゃ楽しかったし、また今度。アハハ、『お玉が行け』といっしょ!」


 

 いい子だ、まあやは。



 けっきょく、その日は、お天気も崩れてきたので、撮影も無くなって、二人でお風呂入って晩ご飯。


 明日からは、遅れた分を取り返す。


 がんばろう。


 


☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母(下忍)

百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一

十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者


 


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