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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
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27『C130機内』

くノ一その一今のうち


27『C130機内』 





 横田基地から米軍の輸送機で飛び立つ。



「これはC130ハーキュリーズという輸送機でな、西側では一番よく使われている輸送機なんだ」


 やっと本来の姿に戻って社長がレクチャーしてくれる。


「C130である意味があるんですか?」


「1000メートルちょっとで離陸できて、500ちょっとの滑走路で着陸ができる」


「えと……飛行機のことって、よく分からないんで(^_^;)」


「同サイズの飛行機の半分以下で離発着ができる。1000メートルの滑走路なんて、どんな田舎の飛行場でもあるからな。世界中どこの飛行場でも離発着できるということだ」


「オスプレイとかだったら、滑走路そのものが要らないんじゃ……」


「オスプレイは、まだ使っている国が少ない」


「なにか問題なんですか?」


「C130は69か国で使われている……つまり、ほとんど世界中で使っているから特定されにくいんだ。いまの軍用機は国籍マークや機体番号はボンヤリ書かれて、よほど近くで見ないと特定できない。車で言えばナンバープレートの付いていないカローラみたいなもんだ」


「隠密性があるということなんですね」


「そういうことだ」


「それから、米軍との関係なんだが……」


 ひとしきり輸送機や米軍と会社の関係や装備など、いろいろ話してくれる。


 途中で気が付いた。


 わたしは飛行機に弱い。修学旅行でも半分くらいはシートを倒して寝ていた。


 まあ、地味子のわたしだから、話しかけてくる者もいないし、ゲロゲロになるほどでもないし、目立つことは無かった。けど、社長は、そういうことを知っていて気をそらしてくれている。


「では、闇着替えの練習をしておこう」


「このコスじゃダメなんですか?」


「現地の状況では着替えることになる。とりあえずは……これだ」


 社長は野戦服を取り出して、輸送機の床に置いた。


「印を結んで、着替え終わった姿をイメージする……えい!」


 一瞬姿がブレたかと思うと、社長は国籍不明の野戦軍兵士になった。


「やっと、自分の姿に戻ったんですね」


「サイズが、オッサンのサイズだからな(^_^;)」


「あはは、その方がいいかも」


 ヘリコプターからこっち、首は社長で体はリコリコのコスを着たわたしだったから、ちょっと気持ち悪かった。


「じゃ、今度はソノッチの番だ」


「はい、えと……印の結び方は……」


「あ、俺は百地流だけど、風魔流でいいよ。要は気を貯めて集中することだから」


「は、はい……息は止めた方が……」


「あ、自然に。うん、ちょっと止めるぐらいが集中できるかな」


「はい……えと……」


 忍術とは言え、人前で着替えるのは抵抗ありまくり。まして、オッサンオーラ出しまくりの社長の目の前だよ。


 エイ!


 掛け声をかける……着替えられてはいなかったけど、周囲の景色が停まった!


 社長は、優しいのかヤラシイのか分からない表情のままフリーズするし、エンジンの振動で小刻みに震えていた金具も静止しているし、なによりもエンジンの音がしない。


 時間を停めてしまった……に近いけど、恐らくは、お祖母ちゃんのいう『境地』という奴だ。


 境地に入って、すごいスピードで着替えることができる。そういうことなんだろう……うん。


 納得すると、普通に着替えた。普通と言っても、やっぱり恥ずかしいから、前の授業が長引いて速攻で着替えなきゃならない体育の授業って感じだけどね。


「惜しい、ボタンが一個ずつズレてる!」


「え、あ、ほんとだ」


「もう一回」


「はい」


 それから、二回三回とやるんだけど、なかなか完ぺきにはできない。シャツが後ろ前だったり、ブーツが左右反対だったり。


「う~ん、ソノッチは境地の中でリアルに着替えている?」


「は、はい」


「それは、まだ初級だなあ」


「ダメなんですか?」


「境地に入るところまではいいんだけど、その先もイメージで姿が変えられなければ完全じゃない」


「あ、それって、変身するのも……」


 そうだ、社長は着替えるだけじゃなくて、わたしの姿に変身までしている。


「まあ、現地に着くまで時間がある、ゆっくりやればいい。そうだ、骨語りの稽古もしておこう」


「はい」




 それから骨語りの練習、それから二つの豊臣家についての話を聞いている間に、いよいよ目的地の上空に着いた。




「え、やっぱりわたしの姿になるんですか?」


 社長も嫁持ちさんもわたしそっくりに変身した。


 そして、C130は、草原の真ん中にバリカンを掛けたような滑走路に着陸していった。


 エンジンを掛けたまま停止すると、縛着していた三台の原チャが解かれる。


「じゃ、しっかり付いてくるのよ!」


「「ラジャー!」」


 わたしソックリの姿と声で命令すると、社長はアクセルを吹かしながらC130のお尻から走り出した。


 もう一人、わたしソックリの嫁持ちさんと三人で、草原の道を疾駆する。


 バックミラーに目をやると、早くも離陸して、ギア(車輪)を格納しつつあるC130の後姿が小さくなりつつあった。


 


☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母(下忍)

百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三(中忍)

十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者


 

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