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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
21/96

21『ダブルブッキング』

くノ一その一今のうち


21『ダブルブッキング』 





 声さえ出さなければソックリ!



 まあやの代役とスタントの仕事は増えてきた。


 それまでは、アップでまあやの演技を撮っていて、そこで倒れるとか落ちるとかの危ない演技になる時は、カメラが切り替わる。


 切り替わって、カメラがロングになったり、後姿になるとかして、倒れるとか落ちるとかする、つまり代役の仕事。


 ところが、ソックリになってきたので、台詞が終わった時に入れ替わって、そのままアップで倒れたり落ちたり。


 昨日なんか、暴漢に火を点けられ、苦しみながら川に飛び込むなんて、忍者でなければ不可能な吹替までやった。



「いやあ、あはは、まあやの人気は天井突き破ってしまったわ!」



 マネージャーさんは手放しの喜びよう。


 金持ちさんに聞いたら「マネージャーのギャラ倍になったそうよ」だった。


 マネージャーのギャラが上がるんなら、むろんまあや本人のギャラも上がってるわけで、当然わたしのギャラも上がるはずで、わたしのギャラが上がれば事務所の収入も増える……ことにはならなかった。


「いやあ、今のところ、そのちゃんのことは秘密だからね。いきなりギャラあげられないのよ、表向きはまあやが自分でやってることになってるから、そのちゃんの立場は付き人兼代役でしかないのよ。へたにギャラに反映させたらさ、ネットの時代でしょ? すぐに足が付いて、そのちゃんの存在に気付かれてしまうからね。いや、ネット民恐るべしなのよ! いずれは、身の立つように考えるって社長も言ってるし、ごめん、もう少し辛抱してね!」


 弱小事務所の駆け出しアルバイトでは、それ以上言うことはできない。


 自分のことはいい。生活費と、お祖母ちゃんに渡すだけのギャラがもらえるんだったらね。


 でも、社長と金持ちさんの期待を裏切ることになるのは辛い。徳川物産に入って、会社の支出は減ったけど収入が増えるわけじゃないからね。


 まあやが気を遣って手を合わせる。


「ごめんねぇ、後でそのちゃんの口座教えて」


「え?」


「わたしのギャラから、いくらかは回せるようにしとくから」


 まあやの嬉しい気遣い。


「それはダメだよ。まあやの口座なんて、全部事務所が把握してる。変なお金の流れとかあったら、すぐに分かってしまう」


 こういうことも金持ちさんから教わっている。お金の流れはクリアーにしておかないと政務署がうるさい。


 今は、ただただ辛抱の時なんだ。仕事自身は十分楽しいしね。




「ごめん、助けると思って『うん!』て言って!」


 


 会うなりマネージャーさん。


「え、どうしたんですか?」


「じつは、ダブルブッキングしてしまって(^皿^;)!」


「ダブルブッキング?」


「うん、吠えよ剣のリハーサルと、一日警察署長の仕事が重なってしまって……」


「え、そんなことってあるんですか?」


「コンピューター管理してるから起きるはずないんだけどね、入力ミスとシステムエラーが重なったとかでね……リハの方を代わってもらうわけにはいかないでしょ?」


 そりゃそうだろ、わたしがリハに行って、まあやが本番だけってやれるわけないし、だいいち声出したらバレバレだし。


「だから、一日署長の方をね……にこやかに手を振ってりゃ済む話だからさ……」


「ウウ……事務所の方には話しといてくださいね」


「もちろん! 任しといて!」


 いっしゅんでマネージャーさんは元気になって、スマホを持って廊下に出て行った。





☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母

百地三太夫        百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔

服部課長代理       服部半三

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