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くノ一その一今のうち  作者: 大橋むつお
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16『丸の内 徳川物産』

くノ一その一今のうち


16『丸の内 徳川物産』 





 けっきょく学校の制服にした。



 丸の内の狸オヤジの会社に行くのに、困った。何を着て行けばいいのかなって。


 アルバイトとは云え、百地事務所を代表……なんかしてないんだけど、一員として行くわけだから、それなりのナリでなくっちゃと考えた。


 だけど、百地の制服めいたものは、あのヨレヨレで石鹸くさいジャージしかない(;'∀')


 だから、学校の制服。


 女子高生の制服って、一種の迷彩服……て云うのは『リコリスリコイル』の中の台詞だけど、ほんとにそうだよね。


 髪は自然なブラックで、スカートの丈が五センチくらい膝上で、それ以外はちゃんとしていたら、人畜無害の女子高生で、それだけで風景に溶け込める。


  ところが、丸の内っていうのは、この女子高生迷彩がかえって目立っているような気がしないでもない。


 今は、四時過ぎなんだけど、この時間て、日本中どこでも下校時間のピーク。


 たいていの日本の街で高校生が歩いてる。帰宅組だったりバイトに向かうのだったり、仲間同士でブラブラだったり。


 それが、この丸の内では見かけない。


 ひょっとして、丸の内辺に高校って無いのか?


 スマホを出してググってみる。


 あ…………無いよ。


 丸の内が頭に付く学校は、一つあるけど高知県。東京には一つもない。


 千代田区には六つほど高校があるんだけども、丸の内には一つもない。


 チ


 思わず舌打ちしてしまう。


 !!?


 とたんに真後ろで人の気配がして、跳躍しながら振り返って、五メートルほども飛んでしまう。


「君は、どこの高校なのかなあ」


 目だけ笑わない笑顔で警察官が、わたしを見てる。


「あ、え、バイトの面接に行くところ……です」


「そうか、お巡りさんは『どこの学校』かって聞いたんだけどね」


 こいつ、あたりは柔らかいけど、疑りの眼差しだ。


 それに……こいつ、すごくデキる。


 わたしに気取られないで真後ろに立つなんて、並みの警察官にできる技じゃない。


「アハハ、ビビらせたのなら、ごめんなさいね。ここ、丸の内でしょ、皇居と東京駅の間だし、国会議事堂とかお役所も多いしね。ついね。警視庁は奈良県警みたいな失敗はできないしね」


「そ、そうですよね(^_^;)、いきなり声かけられちゃって、ビックリしちゃって。あ、生徒手帳見せますね」


 背中のカバンを下ろして、胸元で開けようとしたら、すごい殺気!!


 セイ!


 今度は10メートルもジャンプ!


 ニャンパラリンをきめて、着地すると、もう殺気はおろか、警察官の姿も無い。


 チ…………なんなんだ、あいつは?


 すると、幾人もの視線が足もとから突き刺さって来る。


 しまった、わたしってば、信号機のポールの上までジャンプしてしまっていたんだ(;'∀')。




 徳川物産




 八階建て……そんなには高くないんだけど、戦前からあったんじゃないかと思われるビルは、ちょっとした神殿みたい。


 で、まさか、その八階建てがまるまる徳川物産だとは思わなかった。


 だって、わたしの生活圏にあるビルって、みんな雑居ビル。


 区役所や図書館とか郵便局とかも合同ビルで、ビル一個まるまるっていうのは警察と消防署ぐらいのものだから、会社一個で一つのビルっていうのは見たことない。


 それに『徳川物産』って看板が、真鍮製とはいえ、学校の看板よりも小さい。


 普通は、入ったとこにテナントの看板が並んでて、共同の郵便受けとかがズラッと設置されてるって感じでしょ。


 受付で挨拶すると、IDをくれて、四階の総務部に言ってくれと言われる。


 たかがバイトだから、受付のうしろの1~5まである出入り業者用の、あるいは玄関払い用の応接の一つだと思ったから、なんというか、お城で云ったら本丸って感じ?


 恐るおそる総務部のドアをノックして来意を伝えると、「あ、これは総務二課ですので、八階の総務二課の部屋になります。ご案内しますので、こちらにどうぞ」


 ちょっとレトロな事務服のおねえさんが案内してくれる。


 終始穏やかに微笑んでるんだけど、余計な話はしませんというオーラ出まくりで、八階の総務二課へ。


 チーン


 事務服オネエサンとエレベーター。


 コーン コーン コーン


 天井の高い廊下に事務服おねえさんのパンプスが響く。


 仰いだ部屋の表示は……社長室!?




 なんと、総務二課は社長室の隣だ。




「はい、総務二課は社長室直属の配置になっています。少々お待ちください」


 そう言って、総務二課に入って行って二十秒ほどだれかと話して出てきた。


「どうぞ、ここからは総務二課の者がお相手いたします」


「は、はひ」


 なんか緊張して間抜けた応えをしてしまう。


「失礼します、百地芸能事務所から参りました、風魔そのと申します」


「ご苦労で御座った、暫時、それにてお待ちくだされ」


 まるで『吠えよ剣!』の台詞みたいな返事。



 顔を上げると……そいつはロボットだった!


 


☆彡 主な登場人物


風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち

風間 その子       風間そのの祖母

百地三太夫        百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち

鈴木 まあや       アイドル女優

忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん


 


 


 

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