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11 クリスマスパーティ

 そしてクリスマスディナーパーティの日がやってきた。

 私は必要ないと思ったのに、母に言われしょうがなくヘアサロンに行き、去年買ったパーティドレスを着た。


「いってらっしゃい。楽しんでね」


 母は嬉しそうに見送った。


 気が重かった。

 会場のホテルにいくと更に気が重くなった。

 着飾った男女がたくさんいた。

 みんな結婚したい人たちなんだ……

 唖然としながら私もそのうちの一人なんだと皮肉な笑みを浮かべた。


 司会の人がゲームを進行し、玄人顔負けのトークを展開した。

 私は壁際にいて、目立たないようにしていた。

 いくつになってもやっぱりこういう集まりは苦手だった。

 適当に逃げようと思っていると一人の男の人が歩いてきた。

 見覚えのある人だった。


「あ、ユキコだ。覚えてる?俺だよ。山田リュウタロウ」


 言われてみて思い出した。

 大学時代に入っていたテニスサークルの合同練習の時に、何度か話したことがある人だった。なぜかやたらともてていたのを覚えてる。


「山田くん、久しぶり」


 とりあえず私はそう言って、すこし後ずさった。その笑顔がなんだか薄気味悪かった。


「ねぇ。クリスマス一人なんだろう?俺と過ごさない?」

「いやです」


 私は思わずそう答えていた。こんな人と過ごすくらいなら、家族と一緒に過ごしてるほうがよかった。


「そんなこと言わずさ。一人なんだろう?だからこんなパーティに参加してる」


 山田くんは気持ち悪い笑みを浮かべながら近づいた。


「よらないで。大声だすわ。恥をかくのは山田くんよ」

「出せば?音楽で多分聞こえないから」


 ゲームの最中で音楽ががんがんと鳴って、照明が落とされていた。

 山田くんが私の両手を掴んだ。


「離して!!」


 私の声が音楽にかき消された。山田くんは私を引きずるようにして部屋の外に連れ出した。

 そして口を押さえられる。


「こういうことやる奴多いんだよ。ほら、誰もいない」


 山田くんはそう言うとにやけた笑いを私に見せて奥の部屋に連れ込んだ。

 鳥肌が全身にたった。

 信じられなかった。


「すごいな。防音とかもされているみたいだ。金持ちが開くパーティっていうのは裏がありそうだよな」


 山田くんはそう言いながらタキシードを脱いだ。私は後ろにあとずさった。後ろが壁でそれ以上逃げれなかった。山田くんの薄気味悪い笑顔が近づく。


「ユキコ、楽しもうぜ」 

「うせろ!」


 山田くんの手が私に触れたとき、そんな声がして照明がついた。

 現れた人を見て私は信じられなかった。


「松山さん……」

「この野郎、ホテルの従業員か!」


 山田くんは松山さんに殴りかかった。松山さんは拳をかわすと、逆にそのお腹に拳を叩き込んだ。


「そのへんにしておいたほうがいいぜ。女を無理やり連れ込んだっていう噂を立てられたら嫌だろう?」


 松山さんの言葉に山田くんは殴られたお腹を擦りながら舌打ちすると、部屋を出て行った。


「松山さん、なんでここに……。でもありがとう」


 私は目の前にいるのが松山さんであることがまだ信じられなかった。


「本当。あんたって隙がありすぎだよな」


 松山さんはいつもと違う口調でそう言った。


「会社がイベント会社なんだ。今日はイブで人手がたりないって借り出された。俺がこなきゃ危なかったよな」


 なんだかいつもと雰囲気も違っていた。

 でもこっちのほうが、なんだか距離が近くなった気がして嬉しかった。


「宮園さん。俺達は武田とカナエの元カノ、元カレだった。でももう一度関係を始めないか?それぞれの元カレ、カノじゃなくてさ」


 松山さんは壁際にしゃがみこむ私に手を差し出しながらそう言った。


「あんたに告白されて色々悩んだ。でもあんたがいつの間にか、俺にとって特別な存在になっていたことに気がついたんだ。最初は単なる同じ傷を持つ同士だからだと思ってた。でも会うたびに違うことが思い知らされた。だから」

「松山さん!」


 私は差し出された手を掴み松山さんの胸に飛び込んだ。

 その言葉が嬉しかった。

 松山さんは優しく笑うと私の背中に手を回した。


「俺と付き合ってください。宮園さん」

「喜んで」


 私が見上げてそう答えると松山さんの手が私の頬を包んだ。


「キスしていい?」


 私がうなずくと松山さんはそっと私の唇に口づけた。


 新しい恋が昔の恋を塗り替えていく。


「ごめん。俺って全然紳士じゃないけど、いい?」


 松山さんが黒い瞳をきらきら輝かせてそう言った。


「うん。気取らないほうが好き」


 私がそう答えると松山さんは再度私の唇に唇を重ねた。

 それは息が止まるかと思うほどの深い口づけだった。


 この日から私達は付き合い始めた。


 そしてそれは私達にとって新しい始まりだった。


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