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10 取り残される私

 12月がやってきた。

 私はまだ職が決まらなかった。


 なんだかすべてにやる気がなかった。


 そんな私に追い討ちをかけるように両親はお見合いの話を持ってきた。


 どうしていいのかわからなかった。

 でも惰性で結婚するのは嫌だった。


「ユキコ~」


 喫茶店に入るとノリちゃんが手を振って私を呼んだ。

 私は微笑むと向かいの席に座った。


「どうしたの?急に」


 私がそう聞くとノリちゃんは左手を見せた。その薬指にはきらきら光るダイヤモンドの指輪が輝いていた。


「婚約したんだ!おめでとう!」


 私がそう言うとノリちゃんは少し申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。


「言うかどうか迷ったんだけど、会社にいたころ仲良くしてもらってたし」

「会社は辞めるの?」

「うん」


 ノリちゃんは幸せそうにうなずいた。


「結婚式はいつなの?」

「来年の予定。早くしたかったけどもう12月だし、年を越してからするつもり」

「そう。よかったわね」


 私がそう言って笑うとノリちゃんは下を向いた。


「ユキコは最近どう?元気にしてる?」

「うん、まあ。ずっとのんびりしてたつけが回ってきたって感じ」

「あの、シンスケさんと何かあったの?」


 ノリちゃんは言いづらそうに私に聞いた。


「どうして?」

「なんかマユミ、何かがあったんじゃないかって勘ぐってるの。何もないわよね?」

「当然よ。もうずっと会ってもない」


 嘘だった。

 私が松山さんに告白したなんて知られたくなかった。


「そう、あ!ごめん」


 ノリちゃんは急に時計を見ると慌ただしく立ち上がった。


「彼と約束してるの。ごめん。なんか」

「いいよ。私は暇だし」


 私はノリちゃんが机の上に置こうとする千円を返した。


「少ないけど。お祝い。おめでとう。結婚式には呼んでね」


 私は作り笑いを浮かべてそう言った。


「うん、もちろん。今日は本当ごめん、自分から呼び出しといて。ありがとう!またね」


 ノリちゃんは慌ててそう言うと店を出て行った。

 私はテーブルに肘をついた。

 そして頭を抱える。


「結婚式に呼んでねか……」


 そんなこと思ってもなかった。


 もう嫌になった。

 就職活動はうまくいかず、周りだけが動いていく。

 私だけが取り残されているみたいだった。


「ユキコちゃん、クリスマスディナーパーティがあるみたいなの?参加してみないかしら?」


 クリスマスの1週間前のある日、母がそう言った。

 どうやら母の友人がホテルで盛大に行うパーティらしい。


「ユキコちゃんと同年代の方々も来られるらしいわよ。どうかしら?」


 ああ、一種のお見合いパーティみたいなもの……。

 普段は母がこのようなパーティに参加させようとすることはなかった。

 こんなに薦めるということはそういう意味合いがあるのは確実だった。


「……いいわ。参加する」


 私は半ばどうでもいいと思ってそう返事をした。

 何もかもうまくいっていない。

 もしいい人がいれば結婚してもいいかなと思った。


 惰性の結婚、したくなかったけど、もうどうしていいかわからなかった。


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