表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

4 見上げる空 上

「ユキコちゃん、昨日家まで送ってくれた方はどなたなの?」


 朝、朝食を取るためにテーブルに着いた私に母がそう尋ねてきた。

 心なしかその顔は楽しそうだった。


「…上野さんの元彼氏よ」


 嘘をつけばいいのに私がそう答えると母の顔は曇り、側に座っていた父は乱暴に新聞をめくった。


 そう、彼は上野さんの元彼氏。

 私とはたまたま会っただけ。



「ねぇ。ユキコ。今日暇?」


 会社に着くとノリちゃんがそう聞いてきた。


「暇だけど……何?」

「ごめん!今日飲み会に付き合って!来る予定だった子が来れなくなったのよ。友達に女の子連れてくるように言われてて……」


 ノリちゃんの言葉に私は顔を曇らせた。


「ね。少しだけでいいから。顔を出したら帰ってもいいし。お願い!」


 ノリちゃんは拝むように私の目の前で手を合わせた。

 周りの人が私たちを見るのがわかった。


「わかったわ。少しだけでいいなら顔を出すわ」

「ありがとう!」


 ノリちゃんはほっとした顔を見せた。そして携帯電話を出して電話をし始める。


 飲み会……

 きっと合コンなんだろうなあ……

 いい気晴らしになるかな。


 私はそう考えることにして電話を掛けるノリちゃんに手を振ると総務部に戻った。



「ユキコ、ごめん!ちょっとコンビニに行って来る。ここで待ってて」


 夕方、ノリちゃんは急に思い出したようにそう言って、いそいそと駅構内へ戻っていった。

 待ち合わせは駅前だった。

 どうやら合コン……じゃなかった、飲み会の主催者が車で連れて行ってくれるらしかった。


 私たちだけかしら?


 私は他にも飲み会に参加しそうな人を探すために周りを見渡しが、皆そう見えてきて判別がつかなかった。


 松山さん?


 ふと前から松山さんらしい男の人ときれいな女性が歩いてくるのが見えた。女性は楽しそうに話をしている。


「あれ?宮園さん?」


 松山さんは私に気付くと少し驚いたような顔をした。


「シンスケ、知り合いなの?」

「ああ、取引先の子」


 取引先?

 松山さんの答えに私は眉をひそめた。

 すると松山さんは私だけに分かるように一瞬、片目をつぶった。


 ああ、そうか。

 この女性は武田くんや上野さんの知り合いなんだ。


 私は松山さんのふとした心遣いが嬉しかった。


「ふうん。あ!ノリ!ここよ。ここ!」


 その女性が突然声を張り上げて手を振った。


 ノリ??


「マユミ。ごめん、コンビ二行ってたら時間とっちゃったわ。え、その人はだれ?」

「ああ、私の運転手の松山シンスケ。同じ高校だったの。今日はたまたま東京に来てたから誘ってみたのよ」

「そう。こんばんは。松山さん。私は木下ノリ。こっちが宮園ユキコ。私の同僚なの」

「こんにちは」


 松山さんは笑顔を浮かべるとノリちゃんに笑いかけた。



 車の中ではマユミさんとノリちゃんがひっきりなしに話していた。どうやらマユミさんはノリちゃんの前の職場の同僚らしかった。


「ねぇ。マユミ。松山さんとは付き合ってるの?」

「ま、まっさかあ!私はそうなりたいけど、こっちがね。大失恋した後でそういう気分じゃないんだって」


 助手席に座るマユミさんはいたずらな笑みを浮かべて松山さんの髪をくしゃくしゃにした。


「マユミ、運転中に邪魔するなよな。事故ったらどうするんだよ。だから、俺はお前みたいなのはお断りなんだよ」


 松山さんは笑いながらそう答えた。


 3人のやり取りを聞いて、私はなんだか一人だけ取り残されてる気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ