世界が変わった
世界も他人も変えることは難しい
でも変えることを辞めたら、もう変わることはない
※※※
それは奇跡の出会いであった。
人はギルド設立のきっかけとなった事件を語り続ける。
子爵の娘は自分でなく使役するモンスターを強化し戦う女性であった。
その日は雨が降っており、黒の空岩石を求めダンジョンに入ったエスカには夢があった。
※※※
「やっぱりストレートゴーレムやナイトアントの攻撃が当たらない!私には無理なのでしょうか」
エスカは焦っていた。ただし魔力は残っている。でも深層のスライムには効果が薄い。ストレートゴーレムの魔力を込めた属性攻撃が当たればと祈りながら、30分戦いを続けていた。
「あ、そこのお方。禁を破ることは不本意なれど、私には使命があります」
男はその言葉を聞き、耳を疑った。
「ご令嬢と見受けるが、神の教えや名誉は良いのか!?」
「死んでしまえば終わりです。私にはかなえたい夢があります!」
「ご令嬢、気持ちはわかるがそれは無理というもの!死して、その浅はかさを償え!」
こうして近くの冒険者は去り、エスカは果てのない戦いに身を興じるのであった。
※※※
それからさらに時がたち、エスカを取り巻く環境は悪化していった。
「あの子は獣人系か!見たところ、ゴーレムとスライムじゃ相性が悪いな。やはりこの世界は理不尽だ。俺の持つオレンジベリーがあれば戦況は良くなるのに」
俺はしばらく戦況を見ていた。残念ながらあの子は残酷な現実の前に屈するだろう。
「とはいえ、逃げることは出来るだろう。
おい!こちらで光筍を爆発させる!お節介などそのうちに逃げよ!」
「ありがとう。でも私にとって最後の機会。ここで引くわけにはいかぬのです。」
光筍の閃光を逃げるのではなく、ストレートゴーレムの魔力ののった攻撃のサポートとする。
「引くわけにはいかぬ。これで決める!!」
願いも虚しく攻撃は空を切る。
「不本意なれどもさらに尽力いただくことは可能か?」
「出来る!だが良いのか!?」
俺は衝撃を受ける。ずっとあきらめていた願い。誰かとともに戦うこと。これまでは見殺すことしか出来なかった。この理不尽な世界を変えたいと願っていた。
「戦い方を見るにまずはオレンジベリーでスライムを固める。その上でストレートゴーレムの攻撃でさらに炎のエンチャントを俺にかけれるか?」
「なぜにエンチャントが私が使えることを知ったのかわからないが、夢のためならば、悪魔に心を売ろう!」
こうして俺はオレンジベリーの硬化から魔力を込めた一撃によるコアの剥き出し状態から、炎のエンチャントによる袈裟斬りで勝負を決めた!
俺はあきらめないことで世界を変えることが出来た。そして格上のボスを掃討したことでレベルアップを果たした。
※※※
「これで黒の空岩石を手に入れることが出来る。ありがとう。だが、やはり噂通りにこうなるのか」
「思ったよりも経験値の増加が低いが、これならこいつらには勝てるとき今一度、風のエンチャントを頼む!」
「何を??何を言っている!?しかし、この状況では仕方ない」
いつの間にかサンドスネークが数十匹、二人の近くを囲んでいた。しかし弱点である風のエンチャントによる剣戟であっという間にその数を減らす!
「やはり鑑定の結果通りだな!ソロでサンドスネークを討伐したことがないが、これならそこまで悪くない」
鑑定は人もモンスターも状態も鑑定できる。どうやら二人でモンスターを討伐すると、その経験値が分配されるが、それでもファイヤーポークよりもわずかに大きい。俺は漠然としていた法則を確かめるように自分の状態を鑑定し続ける。