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異世界ギルド設立記  作者: ゆう
プロローグ
3/12

世界を変える

地獄のダンジョンはここにあった。


大きなハルバートを持った緑の肌の

勇敢な女騎士が俺の前で倒れる。


胸部を守る金属の防具を黒き狼が切り裂き、

気高き勇者が叫びを上げ、

俺は世界を変えるために動く!


※※※

「これはパープルベリーか、痛み入るが、なぜに助力した!」


俺は女の口に貴重な木の実をねじ込むと、黒き狼を睨みつける。

女は怒りに満ちた表情で颯爽と立ち上がると、ブラックタイガーに突っ込んでいく。


「ブラックタイガーごときに遅れを取ったことは不覚であるが、もう終わりだ。」


リザードマンの女騎士がハルバートの斧を狼に振り下ろし、その前脚を切断する。

さらに一度ハルバートをひくと反対側のピックを狼の心臓に突き刺す。


「不意を突かれたが、相対すれば、所詮は獣。磨かれた武の前にはよい的でしかないわ」


俺はパープルベリーを女の口に入れた後、狼に注意を払いながらすでに後退していた。


「改めて、問う。なぜに貴様は私を助けた?」


黒き獣の首を刈りとった女騎士が俺に問う。


「お前はあのままでは死んでいたかもしれん。だから」

「待て!神の教えは知っているな?ダンジョンは一人で潜らねばならない!確かに不意を食らったが、むっ」


黒き獣の血の匂いに大きな猿たちが集まってくる。


「アイアンモンキーか。しかしこの数はおかしい!いくら血の臭いがあっても、貴様に助けられたせいなのか!?」


普通、ダンジョンは多くて三匹程度とかしか一度に遭遇しない。まるでゲームであるが、神の教えとやらに忠実なこの世界の冒険者は律儀にそれを守り命を簡単に散らしていく。

冒険王がソロプレーヤーであり、爵位を与えられる冒険者はみなソロプレーヤーであったため、ダンジョン協会の少ないルールの1つもソロであることであった。


「ハハハ、これは血が滾る。もう二度と貴様の力は借りぬ。」


勇敢な勇者はアイアンモンキーの群れに突っ込み、ハルバートを振り回した。


「またなのか、なぜなのか」


転生後にダンジョンに入り、理不尽な暴力に屈することとなった。そのため、仲間を募ったが、誰の協力も得ることが出来なかった。俺は何度も何度も助けに入ったが、常に勇者達はそれを拒む。


俺は結局また引くことしか出来なかった。


※※※

目の前に骸がある。たぶん屈強なオーガの戦士だ。俺は朽ちたハルバートを拾い、それを地面に指すと、骸から認識票を回収する。これは協会に持っていくと、一食分くらいになる。


骸拾い・草食系、協会の酒場で俺はいつもの蔑みを受ける。

鑑定スキルとデバイスの力で有益な草花果実を見極め、モンスターの中で最弱のファイヤーポークだけを狩り、生きていくための最低限の生活費を稼ぎ、武具でなく花街で使うために貴重なアイテムを売って生きている。


※※※

1つ前の春の季節にハイポーションの材料となる白い月花を運良く採取し、一週間分の稼ぎを得た後、良い収穫には巡り合えていない。


「いつも思うが、武具を買うべきか?」


転生直後に買った革の鎧の整備をしながら考える。


「しかしあの化け物どもには効果はないしな」


この世界の人間種は魔力を有し、身体強化を行う。しかし、転生した俺にはスキルというユニーク能力はあるが、魔力をうまく扱うことが出来なかった。


鑑定スキルで鑑定スキルの有益さはわかったが、信頼される冒険者しか、商いは営めず、人を助けてしまった俺には何も出来ない状況だった。


「せめて転送直後か、レベルアップに期待するしか、しかし独り言が我ながら多いな」


最初の助けは花街の黒服であったため、店に入ることは出来たが、黒服のおっさんは汚名を注ぎに香の血の花を取りに行く再度のアタックであっけなく死んだ。

銀級の優れた冒険者であっても死は容赦なく等しく降り注ぐ。その娘の豊かな実りを持つけもの耳が店に入ることで家族は生きているようであるが、三人の弟は既に一人となっている。


※※※

「ここを出て、俺と行こう」

「ごめんなさい。もう時間だし、また来てね!」


春先に交わした言葉を思い出しながら、今日も俺はファイヤーポークを狩る。こいつは骸が残らないから炭だけのため、冒険者にも補足者にも興味を持たれない。


「レベル九でやはり頭打ちか」


鑑定スキルの結果を確認し、俺は大きくため息をつく。やはりこれ以上はさらなる格上と戦うしか道がないのだろう。


※※※

こうして秋が深まり、花街に行くチャンスもなく、潜ったダンジョンで俺は出会った。


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