新しい世界
豊かな実りがここにあった。
健康的な小麦色の肌の
けもの耳の美女が俺の下で笑う。
戦いの暑さを冷ますように
俺の顔から汗が胸に垂れ、
俺は今日も祈りを捧げる!
※※※
「ありがとうございました~」
一週間の稼ぎのほとんどを使い、
残りの日々の過ごし方を考えながら、
俺はバルに向かう。
「あんたも好きだね。で、いつもので良いんだね?」
女将から安くて量があるだけの野菜炒めと酒精の味しかしないエールを受け取り、いつもの隅の席に座る。
ここはダンジョンの南に位置する冒険者が集まる小さな街。ダンジョンから得られる資源を目当てに老若男女が地獄へ潜る。
誰もが一攫千金を狙い、理不尽に命を散らしていく。
「おっ、あんたも生きてたのか?」
馴染みのある女エルフの冒険者に声をかけられる。
「いつものようにオレンジ草を売ってくれ。今日はシェルスライムの大群にあっちまって、魔力がカラカラでさ」
俺はバックパックの中から草の束を取り出すと、女エルフに手渡す。そして、女エルフは目の前で草を小さくちぎり、紙に包んで、火をつける。
「あ~、うめえ。しかしお前は鉱物とか肉とかは相変わらず狙わないのか?三年も潜っている銅級なんて聞いたことないぜ。」
この世界は理不尽であり、そして俺にいわせれば謎のルールに満ちている。
俺も転生後はチートのように活躍する夢を持っていた。しかし、俺に与えられたものはチートではなく、鑑定スキルとエンサイクロペディアというデバイスのみである。確かに情報は役に立つ。だが、それを活かせなければ意味がない。
恐ろしいモンスターに勝てない俺は結局草花果実といった資源を求め明日も地獄に向かう。