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008 聖騎士現る

 前回のあらすじ、うへぇ。




 「そこのエルフ、動くな」


 ぱふぱふタイムで店内の盛り上がりは最高潮に達した中、家賃回収のために奮闘するパトリシアは店のお得意様からのぱふぱふを拒み投げ飛ばす。


 そして投げ飛ばしたお得意様の男の頭頂部が店にいた男の後頭部と激突した。


 その後頭部が振り向くと店中が恐怖に包まれ、ピンと来ていない俺だけが浮いた感じになった。


 その男の名はフィルシアス・グリーズマン……王都騎士団で最高位にある地位、聖騎士の称号を持つ男だ。


 「お……オーナー……聖騎士さんってそんなにヤバいの?……」


 「ああああ当たり前だろ!この国で最も強く最も誇り高く王族を除けば最も高い地位だ……ああ……店終わった……」


 発動するパトリシアの不運は下心丸出しのおっさんから胸揉まれる事では無く、より悪い方へと俺達を巻き込んで導いたのだった。


 聖騎士ってのはホントにハンパないらしく、店内のピンと来ていない俺とパトリシア以外は全員硬直して開いた口が閉じていない。


 でも何でそんな人が王都じゃなくてこのヒブキの街にいるんだ?


 「っ……へ、へぇ!ああんたがふフィルシアス・グリーズマンね!い一度会ってみみたかったわ!」


 強がってる……一歩一歩歩み寄るこの男を前にソファの上に立って指をさして強がってる……。


 冷や汗すごいしみたかったわ!のわ!で声裏返ったし足すんごい震えてるけど強がってる……。


 「ちょうど良い……」


 「な!何がちょうど良いのよ!まさか!……


 ……仕事のストレスを発散しようと気分を変えて王都を出たわいいものの知らない人だらけでオススメスポットを聞き出したくても人見知りだなら話しかけられずたまたまこの店に辿り着いたけど酒は飲めないし女共は接客下手くそで鬱憤はより溜まった中たまたま変態野郎を投げ飛ばした私のこのパツンパツンな衣装を見て欲情して襲おうって算段なのね!!いいえそうに違いないわ!!」


 「長ぇよ!!」


 思わず突っ込んでしまうが、俺など眼中になくついにパトリシアとの距離僅か!


 ソファの上で立ち止まった聖騎士さんはパトリシアと目を合わし……ん?目逸らしてる?


 「あ……その……あ……えっと……あ……あれだ……あ……」


 「な……何よ……はっきり言いなさいよ!」


 「あ~……え……俺めっちゃ注目されてる……あ……あえ~っと……うん……あ……」


 キョドってる……この聖騎士さんさっきまですごいそれっぽかったのに急にキョドりだした……。


 「く……ここではなんだ……から……その……えっと……2人で……話せる場所は無いか」


 「……やっぱりあんた……私を」


 「ちち違う!!……だから……」




   ※ ※ ※ ※ ※




 見てられなくなった俺は結局アガってる聖騎士さんと困惑するパトリシアを上の階の自宅のオフィスとして使う予定の部屋に誘導した。


 「どうぞ……」


 「すまない」


 とりあえずコップ一杯の水を差し出すとさっきのそれっぽい態度に戻っていた。


 聖騎士さんとパトリシアはソファとソファで対面して座り、俺はパトリシアの横に座る。


 「ちょっと私の水は無いの!」


 「自分で入れて来いよ……」


 「……エルフの女」


 「パトリシアよ!いくら聖騎士だろうがエルフの女って呼ばれるのは癪に障るわ!」


 「……分かった……パトリシアどの、先ほどは取り乱してすまなかった……あと、さっきの発言……半分当たっていた」


 「はあ!?」


 いやいやお前がクソ長く喋っといてお前が驚くなよ。


 「半分当たってるってことは……やっぱり私を襲おうって事なのね!!」


 「いや違」


 「そうに決まってるわ今の私見て違うなんて方が頭おかしいわよ!サトルも唆して2人で私を襲おうって事なのね!!」


 「安心しろ、俺は今のお前を見ても襲おうって思わない頭のおかしい奴だ」


 「頭おかしいって言われた頭おかしいって言われた頭おかしいって言われた頭おかしいって言われた頭おかしいって言わ」


 何故か俯いて落胆する聖騎士さんの姿に威厳も何もなかった。


 「……ホントに違うの?……じゃあ何が当たってたの?さっき言った事忘れたから教えてちょうだい」


 「いや忘れたんかい!」


 「……俺は人見知りで、ここへは個人的な事情で来たのだが誰にも話せず……人の多いあの店に入れば何とか話すきっかけが作れると思って……」


 さっきの「ちょうど良い……」は鬱憤晴らすためのいい的を見つけたからじゃなくて誰かと話すきっかけが作れたって意味なのね。


 「そんなこと言ったかしら私?」


 「本気で忘れてんのかよお前……それで、何のためにここへ」


 「ああ……しかも俺は異性に対して1対1だと頭が真っ白になって言葉が出なくなる」


 話聞けよ!!もうその話終わってんだよ!!


 「……王都で発生した、爆発魔を捕縛したことは知っているか?」


 「え?ああ……はい……」


 ヤバい……これあれだ、誰があいつを斬ったか調査するために来たヤツだ……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……逮捕される……。


 パトリシアが俺の袖を指でつまんで引っ張るから振り向くと目を見開いて両頬を膨らませて無言で高速で首を横に振る。


 気持ちは分かるが、とりあえずそれ怪しいからやめて。


 (言い逃れどうしよう……しかし聖騎士さんが直々にしかも個人的な理由で来るって事はかなり深い事情が……だとしてもパトリシアは関係ないって言おう、捕まるなら俺だけでいい)


 (私何にも関係ないからね!捕まるならあんただけにされなさいよ!)


 (何で急に黙るのこの人達……怖っ)


 こうして謎の沈黙の時間が数十秒続く。




   ※ ※ ※ ※ ※




 どうにかしようと俺が沈黙を破る。


 「はい、知ってます……それが何か?」


 よし!怪しまれない完璧な模範解答だ!


 「はい、これは口外して欲しくないのですが……実は我々が来る前に誰かが奴を倒したみたいなんです」


 「は、はあ……」


 「その斬り傷は……この世で俺しか扱えない剣術で付く傷だったんです……心当たりは無いでしょうか」


 いや俺の事やないかーい!!!!!

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