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007 稼ぐ稼ぎたい稼ぐ稼ぎたい

 「……何でも屋って……何すんの」


 「色々よ!依頼を受けて、人手派遣浮気調査ベビーシッター家事代行浮気調査モンスター討伐浮気調査、何でもよ!」


 こいつ浮気調査したいだけなんじゃね?……マジで何でも屋だなおい……。


 まあでも、今はとにかく何でもやって後々やりたい事を見つけてそれに従事すりゃいいか。


 「まあとりあえずそれでいいや、書類書けよ」


 「分かったわ!」


 その後パトリシアはおばちゃんから受け取った書類に氏名族名なんやかんやを書き、晴れて午前中に借家に入る事が出来たとさ。


 敷金礼金無し、水道電気完備、畳とフローリングの床、風呂トイレ別、収納豊富、何ともまあ一文無しが借りられる借家としては条件が良すぎるのであった。


 この住居兼仕事場で俺とパトリシアの2人での生活、そして何でも屋としての日々が始まるのであった───




 「あ、言い忘れてたけど、家賃払えなかったら家賃分下の店で働けってよ」


 「あら、意外と優しいわね」


 「そうそう、もしもの時はお前のその自慢の胸を駆使して旅で疲れたおっさん達を癒やしてやれよ」


 「はあ!?嫌に決まってるでしょ!?」


 「しかも店のサービスにはぱふぱふタイムってのがあって、任意なんだけど家賃払えなかったら強制だからよろしくってさ」


 「血眼になるくらい宣伝して全部の依頼受けまくるわよ!!!!!」




   ※ ※ ※ ※ ※




 それから俺達は家賃を払うために奔走した。


 とにかく宣伝だ、何でもやるという事を強調した張り紙をヒブキの街にある全ての掲示板に貼り、おばちゃんの宿の部屋ごとの机にチラシとして置いてもらったり、下のバーのオーナーにも店に貼ってもらえるように頼んだ。


 この時パトリシアが頼むと全部断られたのに、俺が頼むとあっさりと承諾してもらえた。


 頼むときのセリフや態度はほとんど同じなのに俺だけ優遇されてこいつがされないのがさすがに悪く思え……ない!


 今はとにかく金金金!ロクに戦力になんねぇこいつがチョロチョロ動き回ってても邪魔なだけだ!


 王都へ向かう人や王都から来た人などにも配りまくり、夜に街にくしゃくしゃにされてポイ捨てされてるチラシを見てがっかりする日々。


 そしてとうとう客が1人も来ないまま、1ヶ月が過ぎるのだった───




   ※ ※ ※ ※ ※




 「っくくくく……ぶふっ……」


 「何笑ってんのよ!!」


 一月の家賃が払えなかったので、早速ペナルティとして下のバーでキャバ嬢的な仕事をやることとなったパトリシア。


 大人しくしてればものすごい美貌なのだから愛想笑いして酒注いでりゃ即戦力だろうと思っている次第だ。


 そしてオーナーから渡された今日の衣装が、サイズ合ってなくてパツンパツンなのだ。


 「そんなにしたら……くく……お客我慢出来なくなって……ぶふっ……お触りして出禁になるな……くふっ……貧乏神」


 「うるさいわね殴るわよ!!!」


 毎日殴ると言われているが今のところ殴られた事は一度も無い。


 「というかサトルは何もしないわけ!?」


 「いやね、オーナーには俺も何かやるって言ったよ?けどね───」




 (いやいや悪いよ、それに男手も足りてるし)


 (しかし俺達は2人で住んでますし)


 (いやいや、お願いだから大丈夫だよ!)




 「お願いされたら仕方ないよな」


 「仕事出来ないって思われてるやつよねこれ……虚しくならないの?」


 「え!?そういう意味なの!?」


 「そうとしか聞こえないわよ」


 「とにかく!時間だからさっさと行け!」


 「えもう!?嘘……こんな格好で……はしたないわね……」


 「今さら何言ってんだぶふっ……ビッチエルフ」


 「殴るわよ!!!!」




   ※ ※ ※ ※ ※




 パトリシアは控え室にて指名が来るのを1人待っていた。


 「何なのよもう……そもそも男に興味ないし、純潔を守ってきた体を触られるなんて……もう……何で客来ないのよ……」


 「指名来たよ、ほら行って」


 「は、は~い……」


 オーナーに呼ばれしぶしぶ向かうと、そこにいたのは如何にも金持ちって感じのでっぷり肥えた中年の男だった。


 「うちのお得意様だから、くれぐれもよろしく」


 「は、は~い……」


 これからサービスタイムでこいつに胸を揉まれると考えると吐き気がするパトリシアは、本音を押し殺してニコニコしながら男の隣に座る。


 「へぇ~エルフかぁ~、珍しいねぇ~」


 「あ、ありがとうございますぅ~」


 (目ぇ見て話せよクソ親父!!視線でバレバレなんだよ!!)


 一方俺はやはりどうしても心配なのでホールの仕事をするフリをしてパトリシアを見守る。


 すぐに気付いて助けを乞う視線を送ってくるが巻き込まれるのが嫌なので拒むと「殴るわよ!」という声が聞こえる眼差しを向けてくる。


 話の受け答えは適当な二つ返事だがちゃんと酒注げてるし愛想笑いも崩していない。


 ちょっと触られそうになるとすごい速さで避けたりいなしたりするのがアレだが、初日としては及第点とも言える。




 そんな中いよいよやって来た、パトリシアは強制のぱふぱふタイム。




   ※ ※ ※ ※ ※




 「これより有料サービス!ぱふぱふタイムを始めまーす!!払われた皆様!女の子達!準備はいいですかー!!」


 照明も魔法か何かで色を変え、鼻息荒いおっさんの皆がオーナーの「スタート」の合図と共にお姉さん達の胸を揉み出す。


 さすがプロの皆さん、声とか完璧すぎてこっちまで欲情しそうになる……オーナーはその光景を見て開いた口が塞がらない……オーナーの趣味かよ!!


 「ははは……俺さぁ……エルフちゃんの触るの……初めてなんだよぉ……はぁ……はぁ……」


 「へ、へぇ~……」


 指の動きとかの気持ち悪さに声を押し殺して、ついにパトリシアの胸が……胸が……胸が……。



 「やっぱり嫌に決まってんでしょうがあああああああああああ!!!!!」




 はい、お得意様1人消えたー。


 パトリシアは伸ばした男の腕を掴み、あろう事か店の中で男を投げ飛ばしたのだ。


 ここさえ乗り切れば家賃チャラだったのに……やってくれたなあいつ……。


 「ってぇ!!……痛ぇなちくしょう……」


 「おい、誰だこのデブ投げたのは」


 投げ飛ばされた男は頭頂部が店内の奥にいたぱふぱふタイムに参加しないという変な客の後頭部と激突した。


 その後頭部は銀髪がクールに似合い、目つきの鋭い男がパトリシアの方を見て剣を抜く構えに入る。


 「誰だ?……」


 「よりにもよって何故この2人を怒らせるんだ……」


 「な……な……な……何であんたがここにいんのよ……




 ───フィルシアス・グリーズマン!!!」


 オーナー曰く、王都の聖騎士様らしい……うへぇ。

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