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003 無双のエルフさん

 エルフの彼女は戦闘開始の合図みたく挨拶代わりの一発をライフルで撃とうと引き金を引くが……。


 「あ……あれ……また出ない……」


 何度カチャカチャ引いても弾は出そうに無い……安全装置などは無く、普通に故障かと思われる。


 「嘘でしょ……こんな時にまで!!」


 ライフルの故障に手こずる中でも、巨躯の男は容赦なく大鉈を振り下ろす。


 「うおらああっ!!!」


 かなり鈍いかと思いきや中々速い攻撃に思わず息を飲む俺、彼女は素早くかわして諦めたのかライフルを後方に投げ捨て、俺の前に飛んできた。


 「嘘だろ……」


 俺は試しにライフルを持ってみたが全く持ち上がらなかった。


 これだけの重量のライフルを担いであの速度で走り、軽々と肩に担ぐとは……本当にスゴい人なんだな……。


 少し身軽になった彼女は背中から付け根の無いようにも見える透明で美しく羽を広げ、男よりも高い位置でピタリと止まる。


 「逃げるなエルフの女ぁ!!!」


 両膝を曲げて体勢に入り、思い切り跳び上がった男は宙に浮いている彼女の足元から大鉈を振り上げる。


 「うっさいわね、ちょっと黙りなさい」


 両腰に携えた二振りの内左側に携える剣を抜き、やや緑みを帯びる銀色の刀身で振り上げる男の大鉈を受け、片腕だけで振り下ろしあろう事か男を地面に叩き付けたのだ。


 「ちぃ……ならこれだ!!!」


 男はいちいち大声で叫ぶと、彼女に向けた左手のひらの中心から蜘蛛の糸のような真白く太い糸を噴き出す。


 その糸は彼女の目の前までくると突然大きな捕縛網のように広がり、彼女を覆って逃げ場を無くす。


 「ちょ、何よこれ!」


 抵抗するが解けない様子だ……見るからに糸には粘着性と弾力まであるように見える。


 「ふんっ!!!」


 そして男が左手を握り締め糸を引っ張り網となっている部分の付け根がプツンと切れ、直後彼女を覆った糸は大爆発を起こした。


 「……あ……」


 これは絶対に死んだ……爆弾の中に閉じ込められて爆発したようなものだ……そう思ったのも束の間。


 「ひひっ……ぬおっ!?」


 「この程度かしら?……全く、獣人も落ちたわね」


 爆発による煙の中から地面に着地した彼女はなんと、服も肉体も武器も何もかもが無傷だった。


 確か今の爆発はさっき聞こえた時と同じほどの威力はあったように思えた……だとすると、建物の外壁を広範囲に渡って破壊する爆破をもろにくらって無傷ということだ。


 あり得ない……エルフって皆こんな感じなのだろうか……というか、かなりバイオレンスな別世界に飛ばしたなお雹さん!!


 「どうしたの?かかってきなさいよ」


 「ちぃ……っひひひ」


 やることなすこと全てが彼女に通用しないと悟ったのか次の動きに入らない男が何ということでしょう、俺の存在に気付きこちらを見て笑ったのです。


 俺は逃げようと振り向くが足がすくんで思うように動けない俺はあっさりと捕まり、首元に大鉈の刃を突きつけられる。


 「あ、あんたさっきの……なんでこんなところにいるのよ!!?」


 「い、いや……えっと……」


 「知り合いか?なら話が早い……こいつを殺されたくないなら今この場で武器を捨てろ」


 「……そしたら人質は解放してくれるのかしら?」


 「ああ、約束しよう」


 いやいや俺どう考えても解放する訳無いだろ!お前を無力化してから攻撃するつもりに決まってる!


 しかし彼女は男の要求通りに剣を鞘に収め、両方共に地面に置き3歩下がる。


 「ひっ、バカめ」


 確かに男は人質を解放した、地面に叩き付けるというおまけ付きでだが……そして武器の無い彼女の首へと大鉈を振るう。


 「……な……んだ……と……」


 「まあそう来るとは思っていたわ……当然意味ないけどね」


 驚きの連続で大して驚かなくなってきているが、こればかりは驚かずにはいられない……大鉈の刃は彼女の首を確かに当てている、が、彼女の首には傷一つ付いておらず、彼女自身も痛みを感じるような素振りは見せていない。


 何という硬さ……そ、そうだ……速く逃げないと……。


 「これで終わりよ」


 自信満々にそう口にすると、彼女の背後からひとつひとつがこの男の顔ほどに大きな火の球を繰り出す。


 「はあっ!!」


 大きく叫びトドメと言わんばかりに放たれる数十の火の球!これだけの数ならばこの男は絶対に倒せる!……そう思った時でした。


 何と彼女の放った火の球は見事に男には一発もかすりもしなかった!


 もちろん避けたりしていない、避けることが出来ないほどに数多く放たれたのだから……しかし結果ひとつも当たらなかった。


 そして俺にも当たることなく、その火の球は俺の背後の建物に全て直撃した。


 「……え……」


 男が跳んで後方に下がるから何なのかと思うと、真上から火の球により破壊された建物の瓦礫が降ってきた。


 もう間に合わない、疫病 理第二の人生は5分で幕を下ろす……そう思った瞬間───。


 「危ない!!!」


 俺の頭上に屋根のように覆い被さってきた彼女により助かったと思われたが、後方の建物の上半分が完全に崩壊し、大量の瓦礫が降ってくる。


 ───第二の人生開始5分後、俺はめちゃ強エルフの彼女と生き埋めになる。

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