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029 信じるのは簡単、信じ切るのは難しい

 一方そのころおっさん2人はというと。


 「……あ、いた!!」


 別の入り口から別の部屋に入り、暗闇を進んでいった先にようやく、連れ去られた家族や村の人々を見つけた。


 「よかったじゃないか!」


 「ああ……ホントに……よか」


 しかし喜んだのは束の間、よく見えないせいで絶望は希望に見えてしまったようだ。


 「……死んでる……おい……誰か……誰か!! おい!! ……っく……嘘だろ……そんな……」


 「マジかよ……うわ、マジだ……」


 積み上げられた死体を前に泣き崩れるおっさんと、腰が抜けて立てないエルフのおっさん。


 さらにその背後から突然カツンカツンと足音が聞こえ、心拍数は急激に上がっていき、暗闇に慣れてきた目で足音の方を振り向く。


 「……あ、あんたは……何でここに……ぎゃあああああああ!!!」


 「ど、どうし……うわあああああ!!!」


 残響が失せた頃、ピチョンピチョンと水滴が滴り落ちる音が聞こえる。


 何の水滴かは分からないが、その部屋にはもう誰もおらず、鉄の臭いが強くなっただけだった。




   ※ ※ ※ ※ ※




 「おお起きたか」


 全然数えてなかったから何分経ったか分かんないけど、多分30分は経った。


 ミラはなんとか目を覚ましたけど、体はだらんとしたままだ。


 「……悪いな……手こずって……」


 「んな事はいいんだよ、動けるか?」


 「無理」


 「わーお即答」


 この先何人いるか分かんない強敵を想定したら、ミラを欠くのは結構キツい。


 まあこのパーティーにはフィル、もといフィルシアス・グリーズマンという最高の矛がいるから、何とかなりそうっちゃなりそう。


 まあ応急手当程度で刺された傷が治る訳でも無し、回復系の魔法を誰か使えたらよかったんだけど。


 「しゃーねぇ、俺がおぶるしか」


 「いやいい……ここで置いていけ」


 は? ……え、は?


 どういうことだよ、どうなったらそういう思考に至るんだよ。


 「置いていける訳ないだろ、いいから黙っておぶられろ」


 「負担になりたくない」


 「そういう優しさは求めてねぇし、お前軽そうだからそこまで負担にはならな重おおおおおおおお!!!?」


 いや華奢じゃん、体重50キロも無さそうじゃん、普通におぶれそうじゃん、何だ今の、全っ然持ち上がんなかったんだけど……。


 「私の体重は374キロある」


 質量保存の法則は!? 相対性理論は!? さすが別世界アインシュタインさんを否定していくスタイルヤベぇ!!


 まあ俺物理激苦手だったから今の言葉が合ってるかどうか知らないけど。


 「魔力が空になったからな……」


 減ったら軽くなれよ!! あらゆる法則ガン無視していくなこの世界ホントに!!


 「……でも、もし敵とか来たら」


 「来ないよ……出入り口はそこだけ、あんたたちが全部倒せば……誰も来ないよ……」


 信じ切っていやがるこの女……いや格好つけんな俺、一大事だぞ。


 しかし不可能ではない、フィルがめった斬りにすれば問題ないな。


 「……必ず迎えに来る」


 「ああ、待ってる」


 体重で諦めた感あるけど、仕方ないでしょウンともスンとも言うっちゃ言うけどさ、さすがに374キロはヤバすぎるもの。


 俺はミラから離れ、フィルと樂ちゃんの3人で先へ進んだ。


 さっきまで道無かったのに、エリー倒したら出て来たって、ゲームみたいだなぁ……ゲームあんまりやってこなかったからよく分かんないけど。


 とにかく速く行かないと、こっちは時間が過ぎる度に不利になってくし。




   ※ ※ ※ ※ ※




 奥へと続く道のりをかなり進んだ頃、限界を迎えた俺の体力にペースを合わせてくれる2人に申し訳なくなり、一旦休憩する。


 それこそミラを残してきた場所と同じような広い場所で、だ。


 「いやごめん、ホントにすみませんでした」


 「気にすんなよ! ちょうど僕も疲れてたし!」


 と、元気いっぱいに返答してくれるその姿は少年ではない、ボーイッシュな幼女に見える、少年なんだけど。


 「いや、ここで止まって正解だサトル……来る」


 何が、と聞く前に向こうからお出ましだ。


 バスケやバレーのプロ選手くらいの巨漢で、なおかつ筋肉もゴリゴリある。


 金髪と翡翠の緑色の瞳、どことなくどこかの誰かさんに面影が重なる男の目は死んだ魚ようだった。


 「……3人……全員殺す」


 樂ちゃんと同じくらいの身長の大鉈を担ぎ、わざわざ殺害宣言をしてから立ち止まってくれた。


 影でよく見えなかったが、耳は長い……間違いなくエルフだ。


 「我が名フィルシアス・グリーズマン、其方の名を聞こう」


 剣を抜いたフィルが男の目を見て名乗る、騎士の礼儀的な何かなのだろうか、その後ろ姿は様になっている。


 「……名はグランブ・セルフォーズ」


 あ、ちゃんと答えるんだ、意外。


 ただの筋肉ゴリラじゃないんだなー、こりゃフィルでも一筋縄では行かなそ──ん?


 あれ? なんか聞いたことある苗字だけど……セルフォーズ……エルフ……ゴリラ……あ!!


 「……パティと血縁という事か」


 そうだよ!! だってゴリラだもん!! 今凄まじい寒気がしたのは洞窟がちょっと冷えてるからだと信じたい。


 苗字同じだからといって決め付けるのは良くないけど、俺は疫病って苗字だしなぁ……一発で分かるもんなぁ……せめて佐藤か田中がよかった。


 じゃねぇよ、今そんなくだらない事考えてる場合じゃねぇよ、血縁(あくまで推測)って……マジかよ……。


 「如何にも、パトリシアは我が娘」


 確定した。


 「ならば何故パティを救わず貶める側に着いている!! 父親なのだろう!!」


 そうだそうだ、歪んだ親子愛でもこれはちょっと非道すぎんぞ。


 「全てはハク様の御心のままに……生贄に選ばれた娘は光栄だ……そんな晴れ舞台を邪魔するお前達は、殺す」


 ……もしかして、目が死んでるのって、操られてるからとかじゃないよな?

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