021 深夜のテンション
「で、いい感じにスタート切ったけどさ」
俺達はお雹さんの謀略(仮)からパトリシアを救うために、〝獣山界〟に向かおうとしたのだが……。
「どうやって行くの?」
樂ちゃんが言う方向へただただ歩いているが、山道をひたすら歩くばかりで入り口らしき所は見えてこない。
「ミラは知らねぇの?」
「分からん」
「フィルは?」
「残念ながら……」
「はぁ……てか、あのデカい鳥はどうやって来たんだよ」
「ゴーベロスはここと〝獣山界〟との間にある次元の狭間をこじ開けられる唯一の生物なんだ」
樂ちゃんがデカい鳥ってキーワードだけでゴーベロス言い当てた。
待て、次元の狭間? 超えるあの鳥もすごいけど次元の狭間?
別次元なのかよ!! マジでどうやって行くんだよ!!
「樂君、手がかりは無いのか?」
「……ごめん……」
「おいおいこんな真夜中に危険な山道歩いて目的地分かんねぇって軽く遭難だぞー」
「問題ない、俺の魔法ならいつでも帰宅出来る……次元が同じならば」
「さっすが有能聖騎士様~! 役に立つ~!」
「だが帰るつもりは毛頭無い、パティを取り戻すまでは」
「ヒュ~ヒュ~! さすが騎士の鑑~! 惚れた女に尽くす~!」
「どうしちゃったんだこいつ?」
「深夜だから気にするな」
深夜なのに冷静さを保つ樂ちゃん、ミラに白い目を向けられている気がするが、多分どうって事は無い。
その後急いだ方が良いのに休息が必要だとミラが薄汚い山小屋を発見し、そこで1泊することとなった。
※ ※ ※ ※ ※
「寝た?」
「ああ……1分と待たずに夢の中だ……相当疲れていたんだろう」
さて、俺を差し置いて始まった3人の作戦会議。
何故俺を抜きにしたのかは分からないけど、まあ大事な時には俺みたいな運が良いだけの普通男児は確かに邪魔だよな。
……べ、別に、拗ねてる訳じゃ無いんだからねっ!
にしても運が良いだけって自称出来る俺……夢みたぁい……寝よ。
「あのテンションはこの先危険だ、今日はここまでという事で」
「大丈夫じゃないの?」
「ミラどのは賢明だ、これは旅行ではない、人命救助だ」
「よほど前世が平和だったのだろう……さて樂、ここから〝獣山界〟へのルート、願わくば最短ルートはどこか、分からないのだな?」
「……うん……〝獣山界〟の地図は頭にあるけど……入り口は分からない」
「困ったな……何も無ければ手詰まりだぞ」
「ぐっ……何か……何か手がかりは……っ!」
フィルは何かを思い出したかのように立ち上がる。
「どうしたフィルシアス」
「……パティが言っていた……彼女の故郷にはかなりの頻度でゴーベロスがやって来ると……」
「ほう……エルフの村か……そこにならヒントはあるはずだ」
「しかしゴーベロスは次元の狭間の行き交いが自在……偶然そこにのみ現れているだけという可能性も」
「悲観的になっても始まらない、可能性があるなら迷う意味は無い」
「けどここからエルフの村の最短ルートは1週間はかかるよ?」
「そうね……だからこそ私の魔法だ」
そう言いホットパンツのポケットから手鏡を取り出すミラ。
「ここからエルフの村にある鏡まで移動すれば訳ない」
「……とんでもない魔法だな」
「何を言うかフィルシアス、お前の魔法も異常だろう……触れたものは有機物無機物問わず空間での操作が可能というモノだろう」
「えっと……どういうこと?」
「……触れたものの位置を持って運ぶようにしたり、浮遊させる事も、浮遊させたまま静止させたりも出来る」
「それってすごいの?」
「自分も浮遊出来るし、あらゆる事態においては他より優勢に立てる」
「あ、そうか……強いなぁ……ミラの吸収と弾き飛ばすのとで〝獣山界〟でも敵無しかもよ」
「……そうだといいな」
(……サトルの魔法も恐らくとてつもないもののはず……既に手にしているはずなのだが……)
そうして俺の断りも無いまま、鏡の世界を通過して俺が眠っている間にエルフの村に辿り着いた。
優秀すぎる周りのおかげでものすごく速いペースで事が進んでるけど……
……俺も混ぜてよ。




