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016 樂

 「だ、誰って……俺ですよ」


 「いや誰だよ!?俺さんなんて名前の人知らないぞ!!」


 困ったな……どういうことだ?どこからどう見てもお雹さんなのに……。


 「あの、名前聞いてもいいですか?」


 「だったらまずお前から名乗れよ不審者!!」


 ええ……俺不審者なのか……しかし過去2回は向こうが俺を勝手に……いや条件が違うか?


 1度目は死んだ時、2回目は眠っていた時、今回は俺から……この違いか?干渉するのが俺かお雹さんかの違い?


 にしても不審者は酷くないか?それにあのアニメのおばあさんみたいな口調も無い……。


 「サトル……です……」


 「お、おう……名乗るのか……」


 包み込まれるあの雰囲気は無い……というか……子供っぽい……。


 「ぼ、僕は……うぅ……(らく)だ……」


 ……え、別人?


 「……な、何しに来たんだお前!」


 別人?しかも僕っ子?しかし見た目は完全にあの幼女だ……どうなってんだ?……。


 「なあ……樂ちゃんは……お雹さんの事は知ってるか?」


 「ふえっ!?お前!お姉ちゃんの事知ってんのか!?」


 繋がった……幸運にも容易く繋がりを発見出来たが、まだまだ疑問はある。


 「それで」


 「お姉ちゃんは!!今どこにいるのか知ってんのか!?」


 おっと先超されたか……まあいいや、とことん話す。


 「正確にどこと言われても分からない……けど会った、2回も……」


 「……そっか……じゃあお前も死んだんだな」


 「……え、今何て」


 「僕もなんだ……いや、元は僕のせいなんだ」


 「ちょっと待て、何の事だ!お前は何の話をしてるんだ!」


 「……サトルだっけ……僕をここから連れ出してくれないか───お姉ちゃんを、止めるために」




   ※ ※ ※ ※ ※




 「はぁ……はぁ……はぁ……ああ~~……何で最初から飛ばなかったのかしら私……」


 時速90キロ近くの速度を数十分は維持出来るモンちゃんのとの鬼ごっこを互角に渡り合ったパトリシアは、ようやく飛翔して難を逃れる。


 「しかしどうしようかしら……サトルは網持ったまま帰ってこないし、皮膚硬いから峰打ち効かないし、かといって殺したら殺されるし……八方ふさがりじゃない……」


 モンちゃんは森を破壊しながらどうにか上空のパトリシアをこちらに引きずり下ろせないか爆走しながら模索している。


 「しっかしよく走るわねモンちゃん……時間は無制限とか言ってたけど、眠らせでもしないと無理じゃない……


 ……フィルも王妃も来ないし、他に助けは来ないわよね……ん?」


 パトリシアが腕を組んで悩んでいると、突然背後から一本の矢が自らに向かって放たれた。


 「はっ!?」


 反射的に剣を抜いたパトリシアは矢を叩き落としたが、飛んできた方角からは人の気配を全く感じない。


 「……何なの……今の……まさか、あの国王(ジジイ)の策略!?ふざけんじゃないわよ!かすり傷程度であのクソジジイ!!」


 しかし数秒後にまた矢が、今度は数十本ものの矢が明らかにパトリシアを狙って放たれた。


 「もう!何でこんなのが!!」


 原因を探るべく、数多の矢を容易く叩き落としながら矢が発射されていると思われる場所に飛んで向かう。


 数十キロ近い道のりを1分程で飛んだパトリシアが目の当たりにしたのは、弓やバリスタなどではなく、オレンジ色に輝く魔法陣だった。


 パトリシアのあまりの速度にさすがのモンちゃんも追いつけていない。


 周囲に危険が無いことを確認し、パトリシアは魔法陣のそばに降り立つ。


 「にしてもデカい魔法陣ね……このレベルの魔法陣を放置したままって、発動者どんだけ魔力高いのよ……」


 「すみませーん!」


 すると魔法陣の近くの樹に寄りかかるように廃材にしか見えない置かれ方をされた扉から1人の女が現れた。


 「あれ、あんた……確か……ソフィア?」


 彼女はパーティーにて不器用なパトリシアのためにドレスの着付けをした、王妃様の側近の方だ。


 「申し訳ありません、王妃様から仰せつかりまして、対モンちゃん用の罠を止めに来ましたー!」


 「あらそう……え?」


 「あ、あの……モンちゃんあまり見せない野ですが、実は跳躍力もものすごくその際に察知して矢を放つ仕組みなのですが……パトリシア様が飛ばれると察知するのではないかと思って……」


 「あ……そう……なの……」


 どう足掻いても危険が纏わり付く自身の不運体質に苦笑いするパトリシア、今さらだぞ。


 「実はこちらエリー王妃の魔法陣でして……いつ見てもものすごいですよね~」


 「そうね……」


 「……そんな偉大な方の糧となられるのですから、光栄ですね」


 「……は?」


 意味深な発言をした微笑むソフィアを怪しく思い目を見ると、突然視界が何重にも重なって見え、目まいを起こしたパトリシア。


 「え……な……に……」


 「あなたにも招待しますよ、我らがエリー様のパーティーに」


 意識が朦朧とし、何も見えず何も聞こえなくなったパトリシアはついに気絶した。


 「っふふふふ……おやすみなさいませ」


 何かを企てているとすぐに分かるくらいに不気味に微笑むソフィアはパトリシアを担ぎ、どこに繋がっているか分からない扉を開き入っていった。




   ※ ※ ※ ※ ※




 「よし樂ちゃん!どうやったら出れるんだ!?」


 案の定出入り口となる扉の類はこの部屋に無い。


 「……お前がどうやって入ったか知らないけど、出る方法はたった1つだ」


 樂ちゃんはそう言って床の間に飾られている何の絵かよく分からない水墨画を外す。


 するとその裏には和室に似つかわしくない長い鏡が現れ、その中には俺が映るのではなく謎の白装束の女が暗い顔で座っていた。


 「……なんだこれ……」


 「この子を笑わせたら扉は開かれる!にらめっこだ!」




 ……ん?

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