天災は突然に
主人公 柳賢太郎
ヒロイン 本井恋華
「けーんちゃーん!」
そう声がしたのでカーテンを開けると家の前には一人の女性が立っていた。なんで制服着てんだ?………………あぁ、今日から学校だった。危ない、忘れるところだった。
この春、俺、柳賢太郎は高校生になった。
地元を離れ東京の高校に進学した俺は新たな生活に胸を膨らませていた。知り合いが一人もいないこの地でうまくやっていけるのかと最初は不安だったが、いざ来てみると見たことのない大きな建物、電車に詰め込まれるサラリーマン、全てが新鮮でそんな気持ちは一瞬で吹っ飛んだ。
「今日から俺も高校生か!」そんなことを思いながら朝ごはんをコーヒー一杯で済ませ、急いで制服に着替えて玄関から出るとそこにはさっきの制服を着た女性が微笑みながら立っていた。
こいつ誰だよ……
しかも俺のことけんちゃんって言ってたよな……
「……あの、」
「あぁ!また朝ごはん食べてないでしょ!いつも言ってるじゃん朝は食べなきゃダメって!」
「ちょっ、いやちょっと待って。」
「?」
「君、誰?」
「………覚えて……ない…?」
「どこかで会ったっけ。」
「入学説明会のとき君の隣に座ってた本井恋華だよ!」
「………いや知らないけど。」
「あなたは柳賢太郎君だよね?」
「え、あ、はい。」
「やっぱり!」
「てか、なんで俺の家知ってんだよ。」
「学校から帰るとき付けて来ちゃった☆」
「…………もしもしポリスメン?」
「ちょっ、それは勘弁!」
「冗談だよ。まあ半分本気だったけど」
これは通報して良い気がする。そしてこの訳の分からない状況に冷静を保っていられる俺ってすごい、ほんとすごい。
「ところでさ、急にで悪いんだけど…」
「何ですか?」
「私の学園ラブコメの主人公になって!」
「………はい?」
何言ってるのこの子。これが都会なのか?俺が読んだ都会人マニュアルにはこんな状況の対処の仕方なんて書いてなかったぞ。
「私ね、学園ラブコメってずっと憧れだったの!実は私、入学説明会のときあなたを一目で好きになって…………だから私と一緒に学園ラブコメしましょ!」
「……………」
「あ、そうだ!私、幼馴染と一緒に登校するシチュエーションも好きなの!だから、まずは幼馴染としてよろしくね!」
幼馴染って何だっけ……少なくとも俺が知っている幼馴染みは「学園ラブコメしよう!」なんて言わないぞ。
「あ!もうこんな時間!急ごう、けんちゃん!」
「……………ちょっと忘れ物あるから先行ってて。」
とてつもない情報量を前に俺は心が折れ、この日学校を休んだ。地元に帰りたいなぁ……