32. I choose you!
嵐のように狐の親子が去った後、広間は再び人々の柔らかなざわめきと談笑に満たされ始め、なんだか騒動前よりも緊張感が抜けてリラックスした雰囲気すら漂わせ始めていた。
人々の距離が近くなり、なんとなくファミリア候補と保護者単位で固まっていたのが垣根を越えて手近な人と今あったことについて話している、という感じだ。
フーリー前、フーリー後でここまで雰囲気が変わるのであれば、悪役っていうのも案外悪いばかりじゃないのかもしれないわね。
証拠に、なんとなく距離か壁があった私と候補者たちの間からそれらが取っ払われたようで、皆が親しげに私に笑顔を向けてくれる。
あんなに貴族令嬢にあるまじき切れ方をしたのに、ここにいる人々の心はがっつり掴めたようだ。
貴族としては失格でも納税者としては合格、ってとこかしらね。
大変なのは父さん母さんで、なんだか大人たちに囲まれてこどもの教育方針のような話題でしきりと話しかけられているようだ。
・・・大変よね、まるで心当たりのない”教育”の事を聞かれたり褒められたりするっていうのも。
さぞや居心地が悪いでしょう。
母さんの引きつり笑顔が痛々しいわ。・・・まぁ、今夜のお休みのアレについては徹底抗戦の方針に変更はないけれど。
「ね、さっき言いかけていたことの続きを教えてくれる?」
わさわさと周りに集まってきた私のお友達候補に囲まれつつも、まずは、ということで腕の中の鴉に尋ねる。
鴉は周りの視線を気にしつつ、あまり自分に注目が集まっていない事もきちんと理解しているようで、ちょっとだけ首をもたげて私の質問に答えてくれた。
「ええと、その、あいつを何度かこちらのお庭で見かけたんですが」
「ええ。お兄ちゃんに何かしたのよね?」
どこまで話したか、と小首をかしげる鴉に水を向けると、鴉はこくっと頷くように頭を上下させ、光沢のある黒い瞳で私を見上げて知りたかったことを教えてくれる。
「ああ、そうだった。―――ある日、次期公爵様が裏庭にみえたんです。俺はその、裏庭に住まわせてもらっているもので、その時たまたま近くにいたんですが、時期公爵様が木陰でお休みになったのでしばらく離れていようと思ったんです。時々裏庭にみえるのは知ってたので、いらっしゃったら邪魔にならないようにできるだけ離れるようにしていたんで、その時も同じようにするつもりでした」
鴉の話し始めた内容に、すぐそばにいたお兄ちゃんと視線を交わす。
どうやら、例のあの日の事かはまだ分からないけれど、裏庭のあの大木でお兄ちゃんがお昼寝した時の事らしい。
「果樹園のほうへ行こうと飛んでいると、あいつが次期公爵様のいる木のほうへ行くのが見えたんです。不審に思ったので引き返して木の上から見ていると、あいつ、お休みになっている次期公爵様へ近づいて行って、何かしているみたいだった。その後さっと離れたと思ったら、口に何か咥えてたんです」
「―――うん?フーリー君が口に何か咥えてたの?」
想像するとなんか変よね。
寝てるお兄ちゃんに近づいたフーリー君が、お兄ちゃんに何かして口に何か咥えて持ってく・・・?
「ああ、もちろん人の姿じゃないですよ。狐の姿をしてました」
鴉が補足してくれて、納得できたようなできないような微妙な表情をしていたのだろう、お兄ちゃんがさらに情報をくれる。
「獣人は獣の姿をとることもできる。・・・確かに、狐がうろついていたような臭跡はあったな。動物だと思って気にもしなかったが」
「つまり・・・ええと、狐になったフーリー君が訓練疲れで寝てるお兄ちゃんに近づいて、狐のまま何かをとって持って行った、って事ね」
まとめてみるとそういうことらしい。
私の想像の中のフーリー君はうまく狐になってくれず、少年に獣の耳としっぽが付いた状態で嬉しそうにお兄ちゃんから何かとって、スキップで去っていく姿しか思い浮かばない。
しかも、今日見た貴族の礼装姿なのでかなり珍妙な想像だろう。
勿論、私もお兄ちゃんも彼が『何』を持って行ったのか、もう確信がある。
そこから何がどうなってああなったのか分からないが、例のあの日のことだろう。
傍らのお兄ちゃんの表情がぐっと険しくなる。
「それで俺はあの狐野郎の後を追ったんです。公爵様の庭を抜ける前に追い付いて、声をかけるとあいつはひどく驚いて、咥えていたものを落としました。それは銀でできた上等な懐中時計で、てっきり俺はあの狐野郎がコソ泥の類だと思ったので取り戻してお返ししようとしたんです。
今日と違ってあいつは狐の姿だったので、今日みたいに無様にやられることはなくて、無事に懐中時計は取り戻せました。
けど―――俺がバカだったんです。見栄えになんて構ってないですぐにお届けに上がればよかったのに・・・。
お休みになっていた次期公爵様にそっとお返ししようにも戻った時にはもういらっしゃらなかったし、あの狐野郎との乱闘で羽がボロボロになっちまったもので、さすがにそのまま御前に上がるのは、なんて考えて、一旦安全な場所に懐中時計を置いて、羽繕いしに水のある場所になんかのんきに行っちまって・・・」
鴉の声に強い後悔が滲む。
どうやらお兄ちゃんの懐中時計が鳥の巣にあった、という単純な事実の裏には、予想以上に込み入った事情があったようだ。
「戻ったら、懐中時計は消えてました。だからきっと俺のいないうちにあいつが戻ってきて持って行ったんだろうと考えて、慌ててあいつを探しに行ったんですが、その日は見つけられなかった。
それからあちこち飛び回って、他の鴉から話を聞いて、あいつが子爵家の息子だってことを突き止めました。子爵なら金に困ってやったとは考えられない。金に困ってたとしても、公爵家に手を出すほど馬鹿だとは思えない。だからきっと、公爵様に恩を売るつもりだと思ったんです。落し物を見つけたとか何とか言って―――。
今日、お嬢さんのお誕生日を祝う会があると聞いて、奴が来るには絶好の機会だったから俺も窓の外で待っていることにしたんです。あいつが、懐中時計を次期公爵様へ返そうとするのを」
けれど結局強引に私に迫るあの子を見ていて我慢ができなくなり、割って入ってしまったらしい。
懐中時計を取り戻せたかもしれないのに、俺のせいですみません、と鴉が消え入りそうな声で続けて、しょんぼりと視線を下げる。
私たちにしたところで、あの巣の主が懐中時計の盗難を阻止してくれた上、まさかフーリー君に取り戻されたと思ってずっと探してくれていたなんて思いもしなかった。
悪いことしたわね・・・でも多分、待ってたら返って来るって知ってたとしても大切なお母さんの形見を一刻も早く取り戻してあげたかったから、探しはしたでしょうけど。
「そうだったの・・・。私たちのせいで大変な目に遭わせちゃったわね。ごめんなさいね」
「あれはお前の巣だったのか。その、すまない。懐中時計は俺が持って行ったんだ」
私と兄がそれぞれ声をかけると、鴉は驚いたように伏せていた顔を上げ、私と兄を交互に見る。
兄が今日もちゃんと首から下げていた懐中時計を見せると、不在のうちに巣で何が起こったのかようやく理解した鴉の体から力が抜け、くたり、と私の腕にもたれかかる。
ずいぶんと長い間、未遂に終わった盗難事件のために労力を掛け、心を痛めてくれていたであろう鴉を、私はそっと撫でてやる。
多分、懐中時計をめぐる最初の乱闘で彼の身体的特徴をフーリー君に知られていたのだろう。
あの時のフーリー君は、完全なる勝算があって後ろから鴉を強襲し、わざとらしくみんなの注目を集めた上でそれを暴露した。
異形、とやらが先天性奇形を指し、一般的に嫌悪対象である、ということは先ほどの一幕で十分理解ができた。
フーリー君に秘密を暴かれるまで真ん中の足を隠していたことから考えて、その秘密をむやみに人には知られたくなかったはずだ。
そして、自分の秘密を知っている相手に、それを喧伝されるかもしれないのに正面から向かって行くというのは、どれほど勇気がいる事だろう。
しかも自分のためですらない。よく知りもしない誰かのために。
よかった、と小さくつぶやいた鴉は、心配事から解放されて唐突に自分がいる場所を思い出したらしく、ぐったりしていた体に急に緊張感がみなぎるのが分かる。
それまで私に完全に身を任せていたのに腕の中で突然居心地悪そうに身じろぎし、そわそわとし始めた鴉の背を、私はもう一度撫でてやる。
最初の時と違ってびくり、と体を震わせた鴉に、勝手に撫でたことをちょっとだけ後悔したけれど。
「お、お嬢さん、あの、とにかく懐中時計が持ち主に戻って、狐野郎がいなくなったのなら俺はそれでいいんです。だからその、そろそろお暇しますね。せっかくのパーティを騒いで台無しにしてすみませんでした」
小さくなって謝りつつもちらちらと入ってきたテラスの方へ視線をやって、解放されたいのがありありと分かる鴉のその態度に、私はまた兄と視線を交わす。
このまま返すのは公爵家の名折れ、と兄の視線が言っていて、私は同意の笑みを返す。
そうよね。
お兄ちゃんのために狐と戦って懐中時計を取り返してくれて、私のためにみんなの前で絶対に知られたくない秘密を暴露されるリスクを冒してくれた。
このまま帰すのは名誉日本人としてもいただけない。
「―――“君に決めた”、わ。ねぇあなた、魔女の使い魔になってみる気はないかしら?」
私が与えられた選択肢を躊躇なく選ぶと、そわそわしていた鴉は私を見上げてきょとんとした表情になり、ことりと首をかしげる。
まるで突然言葉が通じなくなったようだ。
私の周りに集まった私のお友達候補たちも、近くの子たちと話していたのをぴたりとやめて、私たちをぽかんと見てくる。
やがてその後ろにいる保護者達にも状況が伝わったようで、今度は波紋のように静寂が広がっていく。
あ、あらやだ。
やらかしたのかしら、私また。
あれだけ心地よい人々のざわめきと談笑に満たされていた広間は、今や水を打ったように静まり返っていた。
父さんや母さんを含めてみんなの目が私に向いている。
う、うわ。やらかしたのね?野性の鴉は勧誘しちゃダメだったのかしら?
「・・・お!嬢さん!!俺はこんな・・・だから、本来ならここに居るのもまずいんです。それを・・・俺なんかを使い魔に、だなんて・・・駄目、ですよ」
静まり返った広間の中で、鴉が私のやらかしを庇うようにその提案を否定する。
真っ黒で光沢のあるその目が、なんだか少し潤んでいるような気がするのは気のせいかしら。
けれども鴉が否定したことで、私たちを取り巻く空気がなんとなくほっとしたようなものに変わる。
彼が『異形』とやらだから、使い魔にはなれないという事か。
・・・けど、良く考えたら彼は私にとってはものすごく都合がよくないかしら。
まず鳥というのがいい。
危なくなったらすぐに逃げられるから。
鳥であれば簡単に手の届かない場所まで逃げられるので、追跡に猛禽類でも使われない限り私に巻き込まれて死ぬ確率は他より低いはずだ。
先ほどの雰囲気から考えると、『異形』はあまり関わり合いになりたくない手合い、という感じだった。
ということは逃げても必死で探されたりしないかもしれない。これは希望的観測だけれど。
それに、彼はうちの裏庭の木に住んでいると言っていた。
あの巣はそんなに大きくなかったし、多分一羽で暮らしているのだろう。
確認は必要だけれど、推定巻き添えになる家族もいない。
もし家族がいたとしても、ただの鴉をわざわざ捕まえて閉じ込めたり殺したりするとは考えにくい。
フットワークが軽い。
私のやらかしで連座する家族がいてもいなくても探すのも捕まえるのも困難。
彼自身もうまく逃げれば捕まえるのが難しい。
・・・いいじゃない。
私に巻き込まれ死しにくい理想の使い魔じゃない。
良し。彼に決めたわ。
「あら、何がダメなの?私の使い魔になってくれたら、衣食住は一生保障するわ。口約束ではなくてきちんと契約書を作るから、安心してくれていいわ。不明点はなんでも聞いてちょうだい。あなたの希望もきちんと聞くし、お互いの妥協点をすり合わせましょう。大きな契約だから当然よね。勿論解約に関してもちゃんと事前相談して取り決めるから、心配無用よ」
本格的に鴉を口説くことに決めて、まずは不安を取り除くためにちゃんと契約を結ぶと言うと、広間がまたざわめき始める。
なんか、私の言葉のせいで集まってくれた皆さんが不安になってるみたいだけど、いいのよ、これで大丈夫なはず。
鴉を安心させるのが目的なんだから。
「・・・お言葉は、嬉しいです。俺なんかをお嬢さんの使い魔に、だなんて・・・これまで生きてきて、こんな嬉しい言葉をもらった事はなかった・・・。でも、駄目です。ここに、こんなにたくさん立派な方々がいるのに、俺の出番はありませんよ」
鴉が私の視線を誘導しようと私を囲む人々の輪を指すけれど、私は彼から視線を外すつもりはない。
ここに居る他の人々はお祈りが決定しているのだから、これを逃したら多分次の機会もないだろう。
つまり、鴉の勧誘に失敗したら魔法が使えない落ちこぼれの上、使い魔もいないゲームのミザリーそのものになる。
魔法の事は秘匿する方向だけど、もうちょっとゲームとの相違点を作っておきたい。
安心材料、ってわけではないけれど、運命は変えられるのだと目で見てわかる相違点があれば精神衛生上いいものね。
「あなたは、自分が先天性・・・ええと、異形だから私にふさわしくない、って思ってるのかしら?」
直球で問い返すと、鴉が言葉を詰まらせる。
私を見上げてくる目は困り果てており、やっぱり少し潤んでいるように見える。
・・・動物虐待で愛護団体から訴えられそうな気がする目だわ。
「そう。でも私はあなたを気に入ってるのよ?――――特にその、三本の足が」
割と本気でそう思っているのでそのまま告げると、鴉は返事の代わりにかー、と弱々しく鳴いて視線を下げる。
まるで、三本足を恥じ入るように。
正直この怪物ランドで今更足の1本や2本多かったところでなんだっていうのよ、というのが掛け値ない本音だけれど、さすがにそれをそのまま言うのは憚られるわね。
でも何とかして自分に自信を持ってもらわないと・・・少なくとも、自分の存在をある程度肯定してもらわないと、私の提案を受け入れてはくれなさそうだ。
「知ってる?三本足の鴉って、神が遣わした道案内なのよ?私はこれからたくさん道に迷う予定だから、道しるべの鳥が傍についていてくれるなら心強いわ。どうかしら。嫌かしら?」
私の言葉に、しょんぼりしていた鴉がゆっくりと顔を上げ、私を見上げる。
その目は“何を言っているのか分からない”と言っていたけれど、名誉日本人としては三本足の鴉と言うと、そりゃもうアレよね。
八咫烏。
サッカーワールドカップ日本代表の旗印としてもおなじみの、神様の使い。
太陽を象徴する存在でもあるし、鴉に足が三本あることに対してはマイナスイメージどころかプラスの方向に振り切ってるんだけど、ここじゃかなり特殊な感性でしょうから黙っておくわ。
・・・そういえば怪物ランドに神っているのかしらね。
あんまり宗教っぽい話は誰からも聞いたことがないから、またお嬢様が変なこと言ってるって思われてないといいけど。
「神が遣わした道案内・・・俺みたいな異形が・・・?」
腕の中で、鴉が自分に問いかけるようにぽつりとつぶやく。
よかった、言葉は通じてたみたいね。
「そうよ。古い古い文献に、そういう記述があったの。道に迷った王様を助けるために神様が遣わしたのよ。三本足の鴉の導きで、王様は目的地にたどり着くことができたの。
―――そうだ。もし不安だったら、試用期間を設けましょう。そうね、三か月でどうかしら」
「しよう、きかん?」
当たり前のことを言ったつもりだったけど、例によってまた世間一般からちょっとばかり浮いていたようで、私はほんの少し苦く笑う。
そうよね、ここはもう日本じゃないし、就職にあたってとりあえずお互いお試しでやってみる試用期間とかないのかもしれないわね。
「ええとね、本格的に仕事を受けるかどうか検討するために、試しに期間を決めて働いてみるの。そうすればその仕事が自分に合ってるかどうか、自分にとって労働環境がいいか悪いか、雇用主との相性も含めて確認できる、というわけよ。もし仕事が自分に合わなかったら試用期間の間に辞めてもいいし、たとえばこの仕事に対してこの報酬だと不足だ、とか思うようであれば、試用が終わって本雇用になる時に契約をきっちり詰めるから、言ってくれれば見直せるわ。―――どうかしら?やってみる気はある?」
まぁ、「やる」って言うまで離さないんだけどね。
腕にきゅっと力を入れて問いかけると、なんとなく己の置かれた状況を察したらしい鴉が一瞬助けを求めるように傍らのお兄ちゃんや、その向こうの両親へと視線を滑らせる。
うんうん、ちゃんと危険を察知する能力も持ってるし、増々いいわね。好ましいわ。
けれども鴉の望みも虚しく、父さんは黙って私たちを見守り、隣の母さんは少し心配そうな表情のまま無言。
お兄ちゃんは引き留めろとは言ったけど、使い魔にまでは、という微妙な表情で、何か言いたそうにしつつも私のしたいようにさせてくれるらしく、特に口は挟んでこない。
誰も鴉に助け船を出してくれる様子はなく、孤立無援を悟った鴉がかくんとうなだれる。
・・・うん、今何か頷いたっぽく見えたわね。
よし。オッケーってことだわね。
「やってみてくれるのね?ありがとう!!じゃあとりあえず3か月、よろしくね!」
にっこり笑って追い込み漁の仕上げにかかると、慌てた鴉が羽をわたわたと動かしながら、かーかーと鳴いて反論だか抗議だかしてくるけれど、慌てるあまり人語を忘れているようだ。
これじゃ何言ってるかは誰にも分からないし、よし、私の勝ちね。
こうして、私は無事に使い魔を手に入れることができた。
ゲームのミザリーにはいなかったはずの存在だ。
その後のパーティはなんだか炭酸の抜けた炭酸水みたいな、何とも言えない感じだったけれど、それでもお客様たちの誰もが帰る頃には来た時よりもリラックスしており、ほんのひと時の貴族の生活を垣間見る体験を存分に楽しんでもらえたようだった。
お見送り際、ウォルター君が「じゃあ次は三か月後にまた会いましょう!」なんて不吉な挨拶を寄越してくれて、以降の方たちもなんだか三か月後にまた、を合言葉みたいに繰り返して行ったのが気になるけれど。
そんな中でもアシュリーちゃんはすっかり定型句と化した「三か月後に」ではなくて、逃げられないように抱いたままだった鴉にびしりと指を突き付け、「あなたに譲ったわけじゃない。ミザリーちゃんはとり返す」と高らかに宣戦布告をしていった。
そして彼女が去った後で、なぜか私たちと同じ側に居てお客様をお見送りしていた猫兄弟のうちのノアールが、「鴉にも梟にもやらねぇ。ミザリーは俺の主人だ」とか言っていて、鴉を睨みつけていた。
―――ため息をつく鴉って、見たことあるかしら。
私は見たわ。
ヤタガラス、ゲットだぜ!
評価、ブックマークありがとうございます。大変嬉しいです。
数字で出てくると少なくともこれだけの方たちに楽しみにして頂けてるのかな、と思って、更新せねば!となります。単純です。
と、言ったそばからアレですが、来週はお休みします。
再来週以降またのお越しを!




