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ドレイクの群れ

 最下層には墓場と水堀があった。

 その上の階層は湖があった。

 さらに上の階層にはなにがあるだろうか。

 歳三が尋ねてくるので、俺が解説する。


「この造りだとこの上の階層が最後だろう。伯爵に落とされたとき、どれくらい落ちたか計算していた」


「あの状況下で冷静だな、旦那は」


「どんな状況下でも生き残らないといけないからな」


「違いない。今日を生きないものには明日は訪れないからな」

 

 たしかにその通りだ、と主張すると、階層を上がる。

 おそらく第一階層と思われる場所は、先ほどとは打って変わって森だった。


「やや、これは面妖な。地下に森があるぞ」


 見上げるとたしかにそこは地下だった。空は見えない。


「この世界にはこのような場所が多い。ダンジョンなのに森があったり、山があったり、生態系があったり、不思議なダンジョンばかりだ」


「まったくだ。どのようなからくりになっているか、調べたいな」


「それには同感だ。いつか天下太平の世になったら、じっくり調べるか」


「そのときは助手を買って出よう」


「それはありがたいが、天下が定まっても土方歳三は忙しいだろう」


「たしかに昼のいくさがなくなっても夜のいくさがあるからな」


「ああ、そちらのほうも百戦錬磨だからな。勝ち続ける限り、次の戦いがある」


「どっちの戦いも終止符が打たれることを望むよ」


 俺は戯けるが、そのようなやりとりをしていると、周囲に不穏な空気が漂っていることに気がつく。


 いち早くそれに気がついた歳三は言う。


「――どうやら敵襲のようだぞ」


「みたいだな」


 俺も確認する。見ればそこには中型の竜がいた。


「あれは中型竜(ドレイク)だな」


「そのようだ。しかし、尋常じゃないな」


 歳三は苦虫を噛み潰したかのような顔をする。


「ああ、数匹ならともかく、10匹はいるんじゃないか。あ、増えた」


 11匹になった。


「いくら本物の竜ではないといえ、限度がある。それにこいつら、統率が取れているのが気になる」


 それに対して老人は説明する。


「このドレイクたちは主人に操られている。この階層にはやつを操る二つ名ドレイクがいる。そいつを倒さなければいくらでもこいつらは襲いかかってくるだろう」


「なんで知っているんだよ」


「そりゃ、すでに調べてあるからな。というか、その二つ名ドレイクを倒させるためにお前たちを助けた」


「なんてこった、糞じじい、そんな魂胆があったのか」


「当然だろう。美姫でもないお前らを理由もなく助けるわけがない」


 なかなかの食わせものであるが、怒ったところでなにも始まらない。

 ここは協力して二つ名ドレイクを探すべきだった。

 いや、探すべきか。

 俺はふたり間に割るように総括する。


「さて、どのみちこいつらを倒さなければ地上には出られないのだろう。ならば我らは共闘すべきだ」


「さすがは魔王、分かっているじゃないか」


「分かった」


 歳三も素直になると、襲いかかってきたドレイクの一匹を斬る。

 赤いドレイクは一刀で真っ二つになる。


「お見事。だが、この中には二つ名ドレイクはいないようだ。問題はどうやって探すかだが」


 俺はあごに手を当て考える。

 その間、歳三と老人は襲いかかるドレイクを次々斬り捨てていく。

 見事な連携で思わず見とれてしまうが、ドレイクの増援が現れた方向に注目する。


 その先に親玉がいると思ったのだ。俺は空を飛んでいる鳥を見つけるとそいつの視界を借りる。


 《鷹見》の魔法を発動させると、鳥に意識をやる。


 鳥の視点を得た俺は、眼前の森を確認する。すると森の奥に一際大きなドレイクがいることに気がつく。


「なるほど、やつが二つ名のようだな」


 名前はなんというのだろうか、気にしていると、老人が教えてくれる。


「そのドレイクの名は明けの明星。夜空に輝く金星のような色をしているだろう」


「たしかにそうだ」


 老人の言葉によって自分が鳥でないことを思い出すと、憑依を止め、魔王に戻る。

「さて、このまま明けの明星を狩りたいが」


 しかし、歳三と老人はドレイクに手一杯のようだ。さすがに数で押されるとつらいらしい。


「貴殿らも精一杯のようだな。ならば俺ひとりで狩るか」


 その言葉に歳三は反応する。


「大丈夫か、護衛もなしにつっこんで」


「一騎駆けは俺の主義に反するが、そうするしかないのならば仕方ない。なるべく早めに狩るから、それまで追っ手がこないようにしてくれ」


 承知! と歳三はドレイクに刀を突き立てる。


 それを見た俺は、行きがけの駄賃代わりにドレイクの集団に《爆裂》魔法をぶち込む。爆発音が森にこだますると、それを合図に森の中を走る。


 当然、ドレイクどもは俺を追うが、それを歳三と老人が切り捨てる。


「旦那の背中を追いたければ俺を殺してからにしろ」


 無論、ドレイクに言葉は通じないが、それでも気迫は通じる。こいつを無視したら背中を斬られる。そう思ったドレイクたちはきびすを返し、歳三を襲う。


 このようにドレイク数十匹を引きつけることに成功した歳三。

 さすがは魔王軍一の剣士。新撰組で一番強かった男だけはある。

 改めて歳三の武勇に感心しながら俺は明けの明星のところまで走った。

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