表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/190

水源確保

 第五階層まで降りてくると、岩畳の作りが荒くなっていることに気が付く。

 ちょうど、この辺から俺がサブナク領を侵攻し始めたのかもしれない。


「そういえば御主人様が鮮やかに魔王サブナクから素材を奪い去り、勢力を弱めたのでした」


 懐かしいことを口にするイヴ。


「あのときは必死だった。恥も外聞もなく、謀略を使っていたな」


「その言い方だと今はまっとうな魔王に聞こえるぜよ」


 と冗談を入れてくるリョウマ。場が和む。


「たしかにそうだな。この世界に誕生した当初の自分が可愛らしく見えるくらい俺もあくどくなった」


「まあ、商人も似たようなもんじゃ。人様が作ったものを右から左に流すだけの商売だ。魔王も同じようなもんだろう? 税金の配分、敵対勢力の指定、物事を右から左に決めるだけぜよ」


「だな。しかし、常に公平ではありたいと思っている」


「それは商人も同じぜよ。顧客第一じゃ。良質な商品を適正価格で売る。王は良質な政治を適正価格で提供する。どっちも『あきんど』ぜよ」


 面白い考えであるが、物事の一端を突いている。


 もしかしたらリョウマという娘は街の執政官や太守にぴったりなのかもしれない。


 彼女にならばどこか重要な街の太守を任せられる、そう思ったが、それを口にする前に第六階層の入り口が見えてきた。


 もはや辺りに石畳や照明などなく、自然の洞窟になっていた。


「もうじき、坂本龍馬がいるはずの階層だな」


 そう漏らすとリョウマは首を縦に振る。

 俺は仲間の姿を確認すると彼らに配慮する。


「ここまで強行軍できた。守護者を何人も倒した。第六階層にはどんな化け物がいるか分からない。ここでじっくり休んで体力を回復させたい」


 その提案は一同が賛同してくれた。




 

 野外でキャンプをすることには慣れているが、洞窟ではめったにしない。


 前回、洞窟で野営をしたのは、風魔小太郎の漂流物を探しに行ったとき以来だろうか。


 あの洞窟は地下に湖があるくらい水が豊富な洞窟で、飲み水の確保に困らなかったが、この洞窟は人の手が入っている分、逆に困った。


 道中もあまり湧き水がなかった。


 野営を張るにはまず飲み水の確保が必要だろう、と二組に分かれ、水を探すことにする。


 そうなってくると我が儘を言うのが聖女様である。


「私は魔王と同じ班がいい。これは神の思し召しなの」


 と譲らない。

 いい加減、ジャンヌの我が儘に辟易しているイヴも苦情を述べてくる。


「聖女様のお勤めは御主人様を困らせることなのでしょうか。あなたの信仰する神は我々にとって邪神のように思えてきました」


 その言葉は神がすべてであるジャンヌにとって看過できないものであったようだ。


「メイド、聞き捨てならないの!」


 と睨み付けた。

 イヴも負けじと睨み返す。

 これはこのふたりを同じ班にしたら、血の雨を見るな、と思った。

 


 血まみれのエプロンドレス、手には短剣を握りしめるメイドの姿。

 返り血で金髪が真っ赤に染まる聖女の姿。



 どちらもしなを作り、「水と薪を探しているとモンスターに襲われた」と主張するに違いない。


 彼女たちの言を信じて現場に向かえば、そこには滅多刺しのうら若き女性の死体が。


「………………」


 最悪の未来を想像してしまった俺は、悪夢を振り払うかのように首を振るうと、独断で班分けをする。


 俺とイヴ、

 ジャンヌとリョウマ、


 そのようなチーム体制を発表したが、それに異を唱えるものがいる。

 そのものとは意外にもリョウマだった。


「おまんさんは心配性じゃのう。このふたりも大人ぜよ。そんなこんまいことで刀傷沙汰などおこさん。ここはふたりを信じて送り出してみてはどうじゃろか」


 たしかに筋が通った提案である。

 このふたりの不仲は今に始まったことではない。


 今後もことあるごとにこのように配慮していたら、ふたりの不仲は恒常的になってしまうかもしれない。


 ここはあえて冒険というか、心を鬼にしてふたりを一緒にするのも悪くない。

 そう思った俺はその提案を受け入れる。


 当然のようにふたりからは抗議の声が上がった。



「この能面女と一緒は厭なの!」


「御主人様、わたくしのIQが低くなってご奉仕のレベルが下がるかもしれませんよ」



 と皮肉に満ちた抗議をもらうが、黙殺。

 ふたりで共同してことに当たるように伝える。


 俺の命令は絶対なので、最終的にはふたりとも受け入れるが、ふたりは、

「こうなったら速攻で水を確保する」

 と競い合うように駆け出した。


 その勢いと形相はすさまじい。


 あるいはもしかしたら、競い合うことで互いを高め合う最高のチームを作り上げてしまったのかもしれない。


 そんな感想すら持った。


 さて、魔王と商人チームはというと、こちらはのんびりとしたもんだった。


 リョウマは邪魔なふたりがいなくなった、と不穏なことを言うと、腕を組んでくる。


「こっちはゆっくり探すぜよ」


 と、にんまりとしている。

 もしかしたらこの場で一番の策士は彼女なのかもしれない。


 そんな感想を抱きながら、彼女と散策すると、10分後、ジャンヌに渡した通信用の護符が光る。


 どうやら彼女たちは水場を発見したらしい。

 そのことをリョウマに伝えると、彼女は満面の笑みで舌打ちをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ