はたらくしゃかいじん!
嫌いだ。
本当に嫌いだ。
昨日、部長に呼び出された。所謂『説教部屋』だ。
始業45分前に出社し、説教部屋に呼び出され、30分はそこに拘束される。
「最近の若いモンは・・・」、「どうせ先生に怒られた事もないんだろ?」、「俺の時代はな・・・」
丸々と太り、髪は失われ、まるで化石のような思考回路を持つ時代遅れのオッサンに社会常識だのなんだと説かれ続ける。それが終われば、ようやく仕事の準備に取り掛かる。
大嫌いだった。
クソみたいな上司も、クソみたいな上司にへこへこしなくてはならない自分も、大嫌いだった。
そんなある日だった。
いつものように部長に呼び出され、有難いお話を聞かせていただいている時の事。
ふと、ふと思ったのだ。『部長の耳爆発しないかな』――――と。
何の事はない、ただストレスが溜まりすぎて他事を考えていただけだ。想像の中でせめて部長に傷を与えた方が、自分が楽になるかなとか、そんな理由だったハズだ。
ただ、それだけ。ただ思っただけ―――それだけだったのに。
部長の耳は爆発した。
自分が思った直後の出来事だった。
その光景に呆然としつつ、どこか自分は笑っていることに気が付いた。
忌々しい部長がのたうち回っていること、自分の思い通りになったこと、そして何より
自分の可能性に気付いた事――それがうれしくて、血を垂れ流す部長の前で笑っていたのだ
笑いが止まらなかった。
クソムカつく部長が目の前でのたうち回っている。血をだらだらと流しながら、無様な声をあげながら。
楽しかった、面白かった、日頃のストレスが洗われていくようだった。
『ざまあみろ、僕に逆らうからだ———』そんな言葉が思い浮かび僕は思わず苦笑した。
子供のような発言だ。いじめられっ子の、心の内の悲鳴、それを大の大人が叫んでいる、その事実がたまらなくおかしかった。
程なくして他の職員が騒ぎを聞きつけて『説教部屋』にやってきた。ざわついている。部長を心配する目がある。僕を疑う目がある。そりゃそうか。血まみれで耳を抑える部長を僕は笑ってみているのだから。
「僕がやったよ」
僕は呟く。皆が目を丸くする。距離を取る人もいた。
「でもね」
僕は馬鹿じゃなかった。先程起こった事がなぜ起こったか、何がトリガーだったのか。
僕は、分かっていた。
「お願い、部長のことは忘れてね、みんな」
”想像”した。”願”った。それがトリガーだった。
皆何事もなく去っていく。のたうち回る部長を無視して。まるで最初からいなかったかのように。
これが僕のチカラ。
何で突然使えるようになったか分からない。僕の身に何が起こっているのかも、このチカラのルールも全てわかっているわけではない。
だけど、手に入れた。
今のこの、クソみたいな僕が手に入れた、たった一つの転換点。
何とか有効に使っていこう。




