HRから始まる非日常
「…というわけでしっかり監視役を務めてくださいね?24時間体制で。」
「何が悲しくておはようからおやすみまでお前と一緒にいなきゃいけないんだよ…」
「まぁそれはさておき、早く行かないと先生来ちゃいますよ。ほーむるーむというのがあるんでしょう?」
「2組の担任山村だからちょっとでも遅れたらアウトだしな。急がないと。」
龍一達のクラス、2-2は四階建て校舎の二階にある。二階に上がると、1人の金髪の男が近づいて来る。
「よお龍一、京一郎。おはよっす。おっと、珍しいな、今日は妹ちゃんも一緒か。いつもはあんなに毛嫌いしあってるのにな。」
「おはよう加藤。今日はちょっとあってな… ところでお前も2組か?」
「いや、俺は3組だ。今年は離れちまったな。」
「え、加藤君別クラなの!それは残念だね!」
何故か嬉しそうな京一郎である。
「お前なんでそんな嬉しそうなんだよ… 俺は悲しいよ… お前がそんなやつだったなんて…」
こちらもこちらで嘘泣きまでしている。
「加藤くん… でしたか。2人と仲が良いんですね。それに見た目と違って面白い人ですね。」
「あぁ、妹ちゃんは去年俺らとは別クラだったから俺のこともあんまし知らないのね。俺は加藤 信也、よろしくな!」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。龍一くんの妹の志乃です。」
加藤は少し訝しげな顔をして龍一の耳元に顔を寄せる。
(お前妹に君付けで呼ばせてるのかよ。あれか、シスコンなのか。)
「ばっ、ばか!そんなんじゃねーよ!ただ…その… 母さんのしつけだ!」
「まぁいいや。じゃあ俺指導室に呼び出されてっから。もう行くわ。」
そう言うと加藤は廊下の向こうへ歩いていった。
「なんだかすごい人でしたね。」
「あれはまだおとなしい方なんだよね。僕達なんか去年からの付き合いだからもっと激しいよ。」
「ってかお前、人前で君付けで呼んでんじゃねぇよ。めっちゃ怪しまれてたじゃねぇか。」
「じゃあなんて呼べばいいんですか。お兄ちゃん?兄貴?兄様なんてのもいいですね。」
「頼むからそれだけはやめてくれ。普通に 龍一 でいいだろ。」
「じゃあ僕達も教室に行こうか。あと10分でチャイムなるしね。」
教室に入るとよく見知った顔から初めて会う顔まで、たくさんの生徒がそこにいた。
「ほら、お前らが最後だぞ。さっさと席着け。」
担任 山村 惇斗 の声に3人は声を揃えて応じる。
「「「はーい。」」」
これで全員揃ったようで、山村がホームルームを始めるため教卓の後ろまで移動してくる。
「えー、今年からお前らの担任を受け持つことになった山村だ。今年一年2-2として仲良くやっていきたいと思ってる。よろしく。」
山村は軽く挨拶すると生徒たちに順番に自己紹介するよう促した。
名簿は前半が女子、後半が男子のため女子の1番から自己紹介が始まる。みんな名前や昨年のクラス、部活など無難な自己紹介を終わらせていく。後半に進むに連れて明らかに焦っているのが1人。シノだ。
(やべぇ… あいつ去年のクラスもわかってないし、そもそもこっちの世界のことほとんど知らないのになんて言うつもりだ…?)
そうこうしてる間にシノの順番になった。
「え、えーっと… 柊 志乃です。 えー… あっ、あそこにいる柊 龍一の妹です。あんまり似てないですけどよろしくお願いします。」
《妹》という言葉にみんなざわめきだす。特に京一郎は龍一の方を見ながらニヤニヤしていた。
(あいつ… 俺の平穏な高校生活をぶち壊しやがって… まぁいずれバレることだしいいか…)
「あ、それと女子のみなさん。龍一はめちゃくちゃ変態なんでうかつに近づいちゃだめですよ?」
「お前ーーーーー!!」
怒りをあらわにしている龍一に対して、男子からは好奇の目が、女子からは軽蔑の眼差しが向けられていた。