表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の娘は生きている  作者: 囘囘靑
第二章:泰日楼少女行
8/104

008_嵐の前の静けさ

「着いた! ――ああ、これは……酷い」


 寺院の門をくぐったエバが、入るなり顔をそむけた。敷地のあちこちに、羽の生えた異形と、僧兵とが入り乱れて死んでいた。


「……大丈夫、エバ? ムリしないで」

「気にしないで、ヒスイ。あたしは大丈夫」


 エバはかぶりを振ると、砂利に刺さっていた自分の箒を抜いた。


「箒は無事?」

「うーん。折れちゃいないけど、ちょっと曲がってる、かな? これだと、あんまり高くは飛べないかも……」

「そう……」

「――とにかく、寺院の中に行こう、セフがいるとしたら、そこしかいないから」

「待って、エバ。もしかして、しらみつぶしに探すつもり?」

「それは――」


 エバは肩を落とした。


「ゴメン、そこまで考えてなかった。でも、セフがそうカンタンに逃げるとは思えないんだよね。あの子、正義感強いから」


 そこまで言われて、ヒスイはふとさっき見たイメージを思い出した。


「ねえ、そのセフって子、私より背が低いわよね?」

「ええ。小柄かな?」

「……黒いおかっぱ髪に、黒い瞳の子でしょ?」

「うん。――って、ヒスイ、もしかして記憶が戻ってきた?」

「いや、そうじゃないんだけど……。この銃、」


 ヒスイは、エバに銃を掲げてみせた。


「握っていると、イメージが湧くのよ。たぶん未来を予知している……みたいな」

「ホント? へー。そんなこと初めて聞いたかも」

「そうなんだ……ゴメン」

「いや、いや、いいって。んで、セフは何処にいたの?」

「薄暗い部屋よ。天井は高くて……丸い形をしていたわ」

「天井が高い……丸い形……。――あっ、分かった!」


 エバが目を輝かせ、寺院の後部にある建物を指差した。


「あそこよ! きっとあそこのお堂の中だわ! 行きましょ、ヒスイ!」

「分かった」


 砂利を踏み抜きながら、二人は堂を目指して駆け出した。


――……


「ここだよ!」


 堂を目の前にして、エバが叫んだ。堂の鉄扉は固く閉ざされ、不気味なまでに沈黙していた。

 ヒスイは嫌な予感がした。


「入ろう、ヒスイ! ――ヒスイ?」

「エバ、いつでも飛べるように準備しといて」

「飛ぶ? お堂の中で」

「そう、」


 銃を引き抜くと、ヒスイは堂の扉までにじり寄る。


「すごい嫌な予感がする。――何かあったら、上から援護して欲しい」

「分かったわ。――でもさ、ヒスイ」

「何?」

「どうせやるんだったら、一気に決めましょう」

「一気に?」

「そ。扉をぶち抜くのよ」

「『ぶち抜く』って、どうやって――?」

「あたしに任せて!」


 言うなり、エバは扉に迫ると、チョークで扉に図形を描き始めた。宮殿で見た図形とは違う、これまた複雑な魔法陣だった。


「よし、完成!」


 両手を突き出して、エバが気合を込める。


「いくよ、ヒスイ! すぐ中に入って」

「分かった!」

「――はあっ!」


 エバが両手で鉄扉を叩いた。鉄扉に描かれた魔法陣が発光するのを、一瞬だけヒスイの目も捉えた。次の瞬間には、鉄扉は粉々に吹き飛び、堂内の中空を舞っていた。


セフ――!」


 ヒスイの後ろから、エバの声が響いてきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ