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灰かぶりの魔法令嬢は、王子よりもオネェを信じている  作者: SoL


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2/10

卒業まで、あと一年

 暖かい春の光が差し込む図書室。

 そこに私、ティターニアと親友のミハイルは居た。

 毎日、お昼休みには図書室で勉強をするのが日課です。父様、母様、ーー私は元気です。


「って、こんな事してる場合じゃないわ!」


「びっくりしたー、突然どうしたのよニア。突然立ち上がらないの。せっかくの可愛いニアが台無しよ?」


 そう言って、隣でプリプリ怒るミハイルを一瞥して、私はもう一度椅子に座る。

 とてつもなく長いため息を吐いて、机に顔を伏せる。


「だって、卒業まであと1年もないのよ?それなのに私、まだ結婚相手を見つけれていないの」


「あら、そんな事?結婚相手なら目の前にいるじゃない。このア・タ・シ」


 ミハイルはそう言って、桁外れに美しい顔を魅せ、片目を閉じる。

 美人は何をしても美人だ。

 私はそんなミハイルを見て、なんとも言えない、複雑な顔をする。


「ミハイルは、親友よ。結婚相手とはまた違うわ」


「あら、失礼ね。アタシもれっきとしたオトコのコよ?」


 そう言ってさっき以上にプリプリと怒る彼。

 ミハイルは、親友だし、オネェだ。恋愛対象には見れない。

 それに、公爵子息だし、私なんかじゃ釣り合わない。




「はぁ。私の運命の王子様はいつ現れるのかしら」


 そう呟くと、ミハイルは私の髪を撫でながら、案外近くに居るものよ。と優しく声をかけてくれる。



「もう今日はお勉強を終わりにして、気分転換に中庭をお散歩しましょ?」


 ミハイルはそう言って手を叩く。そしてその動作が魔法発動の合図となり、机の上に乱雑に置かれていたテキスト達がそれぞれ元いた棚へと帰って行く。



 ーーあの本まだ読んでる途中だったのに……



 ミハイルは微笑み、私に手を差し伸べる。

 私はそれに応えるように手を出す。ミハイルはすかさず私の手を握り、引っ張りあげてくれる。



 ーーあぁ。きっと、女神様がいるとするならば、彼のように美しいのだわ。後光が見える…



 なんて思いながら、私たちは図書館を出ようとした時だった。目の前に金色の鱗粉を撒いた蝶が現れる。

 これは、先生たちがよく使っている連絡魔法だ。

 金色の鱗粉は文字を綴り、連絡事項を伝えてくれる仕様になっている。


 “ローリングス男爵令嬢並びにアルバート公爵子息

 至急、学園長室へ来るように”


 文字が並び、しばらくして蝶と共に消えた。

 何度みても、この魔法は綺麗だ。


「アナタ、また何かやらかしたんじゃないでしょうね?」


「何もやっていないわよ!……まだ…」


「まだって何よ!何する気よ!」


 何だか、毎日ミハイルに怒られているような気がする……

 とにかく行きましょ。と、ミハイルは学園長室へ歩き始めた。




 今思い返せば、ミハイルは出会った時から変わらず優しかった。


 あれは、入学して間も無い頃。友達も知り合いもいなかった私は、次の教室の場所が分からなくて迷子になっていた。


『あら?アナタ、そこで一体何をしてるの?』


 その声に振り返ると、そこには長い銀髪に、青い瞳の私より少し背の高い少年――いや、女の子にしか見えない――が立っていた。


『あの、次の教室が分からなくて…』


『あら、魔法薬学?アタシと一緒じゃない。って、アナタ!よく見たらすごく可愛いわね!!』


『ありがとう…でもあなたの方が何倍も可愛いし、美しいわ』


『あら、そう?ありがとう。そう言って貰えて嬉しいわ。そういえば、アナタ名前は?アタシはミハイル・アルバート。あ、こう見えても男の子なのよ?』


 ーー男の子!?完全に女の子に見えた……


 彼は頬に手を当てて嬉しそうに微笑む。仕草まで完璧に女の子だった。



『って!そんなことより早く行きましょう!授業に遅れちゃうわ!』


 ミハイルは私の手を取り、走り出した。その時、私はまるでお姉ちゃんにお世話されているような気持ちになった。



 入学当初の彼は、私より少し背が高い程度で、声も少し高かったため初見で女の子と間違えるくらい可愛かったのを覚えている。


 そこから同じクラスだと知り、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。




 「ニア、着いたわよ。シャキッとして」


 ミハイルの呼び掛けで現実へと戻される。



 「ミハイル・アルバートとティターニア・ローリングスです」


 ミハイルがドアをノックして名前を告げる。

 中からは入室を促す返事が返ってくる。


 「失礼します」


 私たちは声を合わせて入室した。

 学園長室は学園長が座る執務机があり、その前にローテーブルとソファが向かい合った形で置かれている。


 学園長はソファの傍らにたっており、私たちを迎え入れてくれた。

 ソファには見知らぬ青年。学園長の態度からも明らかにやんごとなき身分の方のオーラを感じる。


 「2人とも、よく来てくれた。紹介しよう、この国の第三王子、セドリック殿下だ。ミハイルくんは交流があったよね?」


 「えぇ。お久しぶりです。殿下」


 「久しぶりだね。ミハイル。それと、初めまして。セドリック・ウィリアムズだ。君はローリングス男爵令嬢だね?」


 私は突然の王族に、固まってしまった。

 下級貴族すぎて今まで高位貴族、ましてや王族なんて高い身分、関わったことが無い存在に、脳の処理速度は完璧に遅れていた。


 ーー挨拶を、とにかく挨拶を。


 「お初にお目にかかります。ティターニア・ローリングスです。よろしくお願い致します」


 王族専用の挨拶があったような気もするが、いざ目の前にするとそんな知識吹っ飛んでしまう。

 働かない頭を使い、ひとまず最低限の挨拶はできた。


 「2人に来てもらったのは、学園での殿下の補佐を頼みたくてね」


 殿下は、これまで外国に留学して他国の魔法を学んでいたんだそう。

 そしてその留学が想定よりも早く終わったことで、今回最終学年として編入されたと。




 そこから、学園長室を出るまで記憶はあまりない。

 気付いたら殿下とミハイルと、3人で廊下を歩いていた。


 「それにしても、アナタねぇ、帰ってくるなら連絡くらいしなさいよ!ほんとにいつも突然なんだから!」


 「すまない。君を驚かせたくて」


 ミハイルの砕けた口調でようやく私の意識ははっきりした。




 「ミ、ミハイル!?殿下になんて物言いを!」


 「あぁ。いいんだ。ミハイルと僕は幼馴染みでね。本当はミハイルも留学へ来る予定だったんだ」


 「そうなのですね…」


 「それなのに、ミハはこっちで1年学んでから行くわ。って行って結局来なかったんだ。酷いだろう?ティターニア嬢」


 殿下は学園長室での恭しい態度から一転、少し砕けた口調で、ミハイルの真似をして同情を誘うように眉尻を下げた。


 私はなんと答えれば良いか分からず、口ごもる。


 「ニア、こいつの相手なんてしなくていいのよ。ほら、殿下なんてほっといて行きましょ?」


 「それは酷いじゃないかミハエル。いつものように呼んでくれよ。それにしても、ティターニア嬢は僕が見てきたどの女性よりも美しい。僕もニアと呼んでも?僕のことはリックと。」


 「え、あ、はい」


 私の手を取り、口付ける振りをしてイタズラっぽく微笑む。

 王子様のような行動を本当の王子様が…私に…!

 顔に熱が集中しているのがわかる。


 そんな私たちのやり取りを見て、ミハイルはんきー!!!と高い声を出しながら私の手を奪い取りハンカチで拭く。


 「アタシのニアに唾かけないでくれるかしら?王子サマ?」


 「なんだよ。ヤキモチ?」



 私はミハイルと殿下のやり取りが可笑しくて、ずっと笑っていた。



 そしてチャイムが鳴り、私たちは教室へ急いだ。


 午後の授業前に、先生が殿下をみんなへ紹介した。


 「第三王子のーーーー卒業までよろしくな。席はあそこでお願いします。殿下」



 先生が指したのは、私の隣。朝机が増えていて不思議に思っていたが、そういう事だったのか。


 殿下は私の存在を確認すると、とんでもないロイヤルスマイルを放ち、教室の空気をごっそり持って行き、隣の席へ座った。


 「改めてよろしく。ニア」


 「は、はい。お願いします」


 そんな2人の光景を、反対隣のミハイルが面白くなさそうに見つめて居た。



 「さて、それじゃあ授業の前にもうひとつ、来週から始まる騎士学園との合同実習について話しておく」


 合同実習……という事は岸学園に通っているラルフも来るということだ。

 できるだけ関わりたくないが……どうなるんだろう。


 でも合同実習は今までにない経験が出来る絶好の機会。楽しみだ!

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