表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界部屋から始まる自由生活! ~仕事疲れの社畜リーマン、チート魔法で人生逆転~  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/77

第六十七話:記憶の波紋と孤独の淵

イリスとの出会いにより、この宇宙の「ズレ」が、無数の存在が忘れ去られたことによる「忘却」と、その全てを一人で背負うイリスの「孤独」にあると知った龍馬。彼は、イリスと共に、この宇宙に散らばる記憶の波紋を辿ることを決意した。


「大丈夫だ、イリス。もう一人で歌わなくてもいい。俺が、お前の歌を聞いてやる。そして、お前が背負っている『忘却』を、俺が一緒に背負ってやる。」


龍馬の言葉は、イリスの心に温かい光を灯した。彼女の手は、以前よりも確かに龍馬の手を握り返し、その表情に微かな安堵が浮かぶ。


『マスター。イリスの歌声は、この宇宙の『忘却』の波動に共鳴します。彼女の歌を頼りに、失われた記憶の欠片を探しましょう。』


ルミリアが、具体的な方法を提示した。


龍馬は、イリスと共に、星屑の海の中を進んでいく。イリスは、悲しげな、しかしどこか力強い歌声を口ずさむ。その歌声は、宇宙空間に広がり、周囲を漂う星屑の残骸に触れると、微かに揺らめく光の粒となって、龍馬を導く。


彼らがしばらく進むと、イリスの歌声が、ある場所でわずかに強くなった。そこには、他の星屑とは異なる、淡い輝きを放つ、錆びた金属片が浮かんでいた。金属片は、龍馬が触れようとすると、まるで実体があるかのように、しっかりと手に収まった。


『マスター! これが、この宇宙の『記憶の欠片』です! この金属片には、かつてこの宇宙を旅した宇宙船の『冒険』の記憶が宿っています!』


ルミリアが、興奮した声で報告した。


龍馬が金属片を手に取ると、彼の意識の中に、広大な宇宙を旅する宇宙船の姿や、未知の惑星を発見する歓声が流れ込んできた。それは、この宇宙が、かつては活気に満ちた冒険の舞台だったことを示唆していた。


「この宇宙は、たくさんの冒険者で溢れていたのか……。」


龍馬は、その壮大な記憶に、心を奪われた。


イリスは、金属片を見て、微かに微笑んだ。その表情は、彼女が初めて見せる、純粋な喜びの表情だった。


「……輝かしい……。この記憶は……輝かしい……。」


イリスの声は、宇宙空間に響き、彼女の周囲の星屑が、わずかに輝きを増した。


龍馬は、イリスと共に、星屑の海の中を旅し続けた。彼らは、イリスの歌声が導くままに、次々と記憶の欠片を見つけていった。朽ちた人工衛星の残骸、遥か彼方から飛来した彗星の一部、そして、失われた文明の遺跡を思わせる構造物の破片。それぞれの欠片には、この宇宙で生きた、あるいは存在したものの、様々な感情が宿っていた。


しかし、記憶の欠片の中には、悲しみや苦しみの記憶も存在した。ある欠片からは、巨大な天体衝突の記憶が流れ込み、龍馬の心は、その悲痛な叫びに、深く揺さぶられた。


『マスター! この次元の『幻影』は、良い記憶も悪い記憶も全て混じり合っています! その全てを調律し、この宇宙の『記憶』を完全に回復させる必要があります!』


ルミリアが、次の課題を提示した。


龍馬は、負の感情を宿した記憶の欠片に、自身の『調律の魔法』を流し込んだ。金色の光が欠片を包み込み、その悲しみや苦しみを、自身の『癒し』と『受容』の感情で包み込んだ。すると、負の記憶は、静かに、しかし確かな『教訓』へと変化していった。


イリスは、龍馬が記憶の欠片を調律するたびに、その歌声が力強くなり、周囲の星屑がさらに強く輝いていくのを感じていた。そして、宇宙空間全体が、まるで実体を取り戻すかのように、鮮やかな色を帯びていく。


何日もの間、龍馬とイリスは宇宙を旅し続けた。そして、ついに、イリスの歌声が、これまでにないほど強く響き渡る場所へと辿り着いた。そこは、星屑の海の中心に位置する、巨大な光の渦だった。渦の中心からは、まばゆい光が放たれており、その光は、この宇宙に散らばる全ての記憶を吸い込んでいるかのようだった。


そして、渦の中央には、これまでに見つけた全ての記憶の欠片が、磁石に引き寄せられるかのように集まり、一つの巨大な光の塊となって浮上していた。それが、この宇宙の「魂の星図ソウル・アトラス」と呼ばれる、全ての記憶の集合体だった。


『マスター! あれこそが、この次元の『ズレ』の根源です! 全ての記憶が、あの光の塊に集約されています!』


ルミリアが、興奮した声で叫んだ。


龍馬は、光の塊に手を触れた。すると、彼の意識の中に、この宇宙の全ての歴史が、まるで一つの壮大な叙事詩のように流れ込んできた。始まりから終わりまで、喜びも悲しみも、全てが詰まっている。そして、その叙事詩の最後に、一つの『真実』が隠されていた。


「……私を……覚えていて……。」


その声は、宇宙全体に響き渡るような、深く、そして悲痛な『願い』だった。それは、この宇宙が、自身を忘れ去られることを恐れていた、最後の叫びだったのだ。


龍馬は、その願いを、自身の『調律の魔法』で包み込んだ。金色の光が、魂の星図を完全に包み込み、その『忘れられた』という悲しみを、自身の『記憶』と『存在』の感情で満たしていく。


「大丈夫だ。お前は、決して忘れられない。お前の歌は、永遠に、この宇宙に響き渡る。」


龍馬の言葉は、金色の光となって魂の星図へと深く浸透していく。光の塊は、さらに強く輝き、宇宙全体を包み込んだ。


そして、光の塊は、イリスの体へと吸い込まれていった。イリスの体は、まばゆい光に包まれ、その姿は、以前よりも遥かに明確な実体を帯びていく。彼女の瞳は、輝きを増し、その表情は、満ち足りた喜びで満たされていた。


『マスター! 調律完了です! この宇宙の『忘れられた記憶』の歪みは、完全に浄化されました!』


ルミリアの声が、感動に満ちて響いた。


星屑の海は完全に晴れ、無数の星々が鮮やかに輝いている。かつての残骸は、美しい星屑となって宇宙に散らばり、新たな生命の息吹を感じさせる。宇宙全体に、活気が戻った。


イリスは、光の渦の中心で、優しい微笑みを浮かべていた。彼女は、もう悲しげな歌を歌っていない。代わりに、この宇宙の全ての星々が、喜びに満ちた「歌声」を響かせているのが、龍馬の耳にはっきりと聞こえていた。


「……リュウマさん……ありがとう……。もう……何も……忘れません……。」


イリスの声は、澄み渡り、その瞳は、未来への希望に輝いていた。


龍馬は、イリスの頭を優しく撫でた。彼の『調律者』としての旅は、常に、新たな挑戦と、そして、感動的な出会いに満ちている。彼は、この宇宙の未来をイリスに託し、次の次元へと、その足を踏み出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ