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異世界部屋から始まる自由生活! ~仕事疲れの社畜リーマン、チート魔法で人生逆転~  作者: ねこあし


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第六十二話:記憶の残響と真の知識

灼熱の砂漠の星で、龍馬は「最後の知識人」が閉じこもる巨大な塔の扉の前に立っていた。扉は彼の『絶望』と『不信』によって固く閉ざされ、龍馬の『調律の魔法』も弾き返されてしまう。


「……無駄なこと……。この封印は……我自身の……『絶望』と『不信』で……築き上げられたもの……。お前のような……希望の光では……開くことは……できぬ……。」


最後の知識人の声は、諦めと、自らの孤独を受け入れたかのように響いていた。


『マスター。彼の『絶望』と『不信』を調律しなければ、この封印は解除できません。そして、彼の『知識への渇望』の歪みも、完全に解消されません。』


ルミリアが、困難な調律の課題を提示した。


龍馬は、扉に手を置いたまま、目を閉じた。彼の『調律の魔法』が、扉を通して、最後の知識人の心へと深く浸透していく。そこには、膨大な知識の奔流と共に、過去の「裏切り」と「失望」の記憶が渦巻いていた。


『マスター! 彼の記憶を解析します!』


ルミリアが、解析を開始した。龍馬の意識の中に、かつてこの星で栄えていた文明の光景が流れ込んできた。そこには、知識を共有し、互いに協力し合う人々がいた。最後の知識人も、その一員として、自身の知識を惜しみなく分かち合っていたのだ。しかし、ある時、彼の知識が悪用され、争いが起きた。多くの人々が傷つき、世界は荒廃した。彼は、その責任を強く感じ、知識が悪用されることを恐れ、全てを秘匿し、自らを閉じ込めてしまったのだ。


「これほどの……悲しい過去が……。」


龍馬は、その記憶の残響に、胸が締め付けられる思いだった。彼は、最後の知識人が、平和を願っていたが故に、このような道を選んだことを理解した。


「分かっている……お前は、争いを恐れて、知識を閉じ込めたんだな。だが、知識は、使い方を間違えれば毒になる。しかし、使い方を正せば、無限の光になるんだ!」


龍馬は、その閉じられた扉に向かって、自身の『理解』と『赦し』の感情を込めて語りかけた。彼の言葉は、金色の光となって扉に吸収され、その封印をわずかに揺るがす。


「……しかし……我は……裏切られた……。再び……同じ過ちを……繰り返すのか……。」


最後の知識人の声は、苦悶に満ちていた。彼の心の中の傷は深く、癒えることなく残っていたのだ。


龍馬は、さらに深く、自身の『調律の魔法』を扉へと流し込んだ。金色の光が、扉全体を包み込み、その闇を浄化していく。


「お前の知っている知識は、この星にとって宝だ。それは、誰かを傷つけるためじゃなく、この星の未来を創るためにあるんだ! もう一度、信じてみろ。俺が、お前と共に、その知識を正しい未来へと導いてやる!」


龍馬の言葉は、最後の知識人の心の奥底へと響き渡る。彼の『絶望』と『不信』が、龍馬の『希望』と『信頼』によって、少しずつ溶かされていく。


扉から放たれていた黒い魔力は、次第に弱まり、その闇が、完全に消え去った。そして、扉の封印が、ゆっくりと解除されていく。重々しい音を立てて、巨大な扉が開いた。


扉の奥には、広大な空間が広がっていた。そこは、無数の書物や巻物、そして奇妙な装置で埋め尽くされており、まるで巨大な図書館のようだった。その空間の中心に、一人の老人が、書物に囲まれて座っていた。彼の目は、疲労困憊しているが、その瞳の奥には、知識への尽きぬ探求心が宿っていた。


彼こそが、最後の知識人だった。


『マスター! 調律完了です! 最後の知識人の『絶望』と『不信』の歪みは、完全に浄化されました!』


ルミリアの声が、喜びと安堵に満ちて響いた。


老人は、ゆっくりと顔を上げた。彼の目には、かつての『絶望』の光はなく、代わりに、微かな『好奇心』と、『安堵』の光が宿っていた。


「……お前は……。我の……心の奥底に……届いた……。」


老人の声は、震えていた。それは、何十年、何百年ぶりかに、他者と心を通わせることができた喜びの震えだった。


龍馬は、老人の傍に歩み寄った。


「俺は、神城龍馬だ。お前の知識を、この星の未来のために使ってほしい。」


龍馬の言葉に、老人はゆっくりと立ち上がった。彼の体からは、以前のような陰鬱な魔力は感じられず、代わりに、澄み切った『知識』の魔力が放たれていた。


「……我は……『アルカナ』……。お前のおかげで……再び……『光』を……見ることができた……。」


アルカナと名乗った老人は、龍馬に深々と頭を下げた。


そして、アルカナは、この星に隠された、もう一つの『歪み』について語り始めた。それは、この星の地中深くで眠っている、巨大な『過去の遺産』。かつて、この星の文明を滅ぼしかけた、恐るべき兵器の存在だった。アルカナは、その知識を封印するために、自らをこの塔に閉じ込めていたのだ。


『マスター! アルカナの記憶から、新たな歪み、強力な『破壊』の魔力を感知します! これは、この星の真の危機です!』


ルミリアが、緊急の警告を発した。


龍馬は、アルカナの言葉に、新たな決意を固めた。彼の『調律者』としての真の力は、心の歪みを癒すだけでなく、過去の過ちを正し、未来を創造することにあるだろう。彼は、アルカナと共に、この星の真の危機に立ち向かう。

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