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異世界部屋から始まる自由生活! ~仕事疲れの社畜リーマン、チート魔法で人生逆転~  作者: ねこあし


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第六十話:記憶の欠片と森の囁き

セレネとの出会いにより、この次元の「ズレ」が、世界が自身の「記憶」を失い、全てが「幻」と化していることに起因していると知った龍馬。彼は、セレネと共に、森に散らばる記憶の欠片を探し出すことを決意した。


「大丈夫だ、セレネ。俺が、お前の歌を取り戻してやる。この森の、忘れられた記憶を、お前と一緒に探してやる。」


龍馬の言葉に、セレネの瞳に希望の光が宿る。彼女の手は、以前よりもしっかりと龍馬の手を握り返した。


『マスター。セレネの歌声は、この森の『記憶』の波動に共鳴します。彼女の歌を頼りに、記憶の欠片を探しましょう。』


ルミリアが、具体的な方法を提示した。


龍馬は、セレネと共に、霧深い森の奥へと足を踏み入れた。セレネは、悲しげな、しかしどこか力強い歌声を口ずさむ。その歌声は、龍馬の耳には微かにしか聞こえないが、森の幻影に触れると、微かに揺らめく光の粒となって、龍馬を導く。


彼らがしばらく進むと、セレネの歌声が、ある場所でわずかに強くなった。そこには、他の幻影とは異なる、淡い輝きを放つ、小さな木彫りの人形が落ちていた。人形は、龍馬が触れようとすると、まるで実体があるかのように、しっかりと手に収まった。


『マスター! これが、この森の『記憶の欠片』です! この人形には、かつてこの森で暮らしていた子供の『遊び』の記憶が宿っています!』


ルミリアが、興奮した声で報告した。


龍馬が人形を手に取ると、彼の意識の中に、子供たちの楽しそうな笑い声や、森の中を駆け回る姿が流れ込んできた。それは、この森が、かつては活気に満ちた場所だったことを示唆していた。


「この森は、かつては子供たちの笑い声で溢れていたのか……。」


龍馬は、その温かい記憶に、胸が締め付けられる思いだった。


セレネは、人形を見て、微かに微笑んだ。その表情は、彼女が初めて見せる、純粋な喜びの表情だった。


「……温かい……。この記憶は……温かい……。」


セレネの声は、歌声のように響き、彼女の周囲の霧が、わずかに薄れた。


龍馬は、セレネと共に、森の中を歩き続けた。彼らは、セレネの歌声が導くままに、次々と記憶の欠片を見つけていった。朽ちた古いブランコ、忘れ去られた絵筆、そして、家族の温かい食卓の光景が宿る小さな皿。それぞれの欠片には、この森で生きた人々の、様々な感情が宿っていた。


しかし、記憶の欠片の中には、悲しみや苦しみの記憶も存在した。ある欠片からは、森を襲った災害の記憶が流れ込み、龍馬の心は、その悲痛な叫びに、深く揺さぶられた。


『マスター! この次元の『幻影』は、良い記憶も悪い記憶も全て混じり合っています! その全てを調律し、この森の『記憶』を完全に回復させる必要があります!』


ルミリアが、次の課題を提示した。


龍馬は、負の感情を宿した記憶の欠片に、自身の『調律の魔法』を流し込んだ。金色の光が欠片を包み込み、その悲しみや苦しみを、自身の『癒し』と『受容』の感情で包み込んだ。すると、負の記憶は、静かに、しかし確かな『教訓』へと変化していった。


セレネは、龍馬が記憶の欠片を調律するたびに、その歌声が力強くなり、森の霧がさらに薄れていくのを感じていた。そして、森の木々や草花が、まるで実体を取り戻すかのように、鮮やかな色を帯びていく。


何日もの間、龍馬とセレネは森の中を歩き続けた。そして、ついに、セレネの歌声が、これまでにないほど強く響き渡る場所へと辿り着いた。そこは、森の中心に位置する、巨大なクリスタルでできた湖だった。湖の水は、澄み渡り、湖底からは、まばゆい光が放たれている。


そして、湖の中央には、これまでに見つけた全ての記憶の欠片が、磁石に引き寄せられるかのように集まり、一つの巨大な光の塊となって浮上していた。それが、この森の「魂のソウル・ソング」と呼ばれる、全ての記憶の集合体だった。


『マスター! あれこそが、この次元の『ズレ』の根源です! 全ての記憶が、あの光の塊に集約されています!』


ルミリアが、興奮した声で叫んだ。


龍馬は、光の塊に手を触れた。すると、彼の意識の中に、この森の全ての歴史が、まるで一つの壮大な物語のように流れ込んできた。始まりから終わりまで、喜びも悲しみも、全てが詰まっている。そして、その物語の最後に、一つの『真実』が隠されていた。


「……私を……忘れないで……。」


その声は、森全体に響き渡るような、深く、そして悲痛な『願い』だった。それは、この森が、自身を忘れ去られることを恐れていた、最後の叫びだったのだ。


龍馬は、その願いを、自身の『調律の魔法』で包み込んだ。金色の光が、魂の歌を完全に包み込み、その『忘れられた』という悲しみを、自身の『記憶』と『存在』の感情で満たしていく。


「大丈夫だ。お前は、決して忘れられない。お前の歌は、永遠に、この森に響き渡る。」


龍馬の言葉は、金色の光となって魂の歌へと深く浸透していく。光の塊は、さらに強く輝き、森全体を包み込んだ。


そして、光の塊は、セレネの体へと吸い込まれていった。セレネの体は、まばゆい光に包まれ、その姿は、以前よりも遥かに明確な実体を帯びていく。彼女の瞳は、輝きを増し、その表情は、満ち足りた喜びで満たされていた。


『マスター! 調律完了です! この次元の『忘れられた記憶』の歪みは、完全に浄化されました!』


ルミリアの声が、感動に満ちて響いた。


森の霧は完全に晴れ、太陽の光が森の奥深くまで差し込んでいる。木々は鮮やかな緑を取り戻し、花々は色とりどりに咲き誇っていた。鳥たちがさえずり、小動物たちが駆け回り、森全体に活気が戻った。


セレネは、泉のほとりで、優しい微笑みを浮かべていた。彼女は、もう悲しげな歌を歌っていない。代わりに、この森の全ての生命が、喜びに満ちた「歌声」を響かせているのが、龍馬の耳にはっきりと聞こえていた。


「……リュウマさん……ありがとう……。もう……何も……忘れません……。」


セレネの声は、澄み渡り、その瞳は、未来への希望に輝いていた。


龍馬は、セレネの頭を優しく撫でた。彼の『調律者』としての旅は、常に、新たな挑戦と、そして、感動的な出会いに満ちている。彼は、この森の未来をセレネに託し、次の次元へと、その足を踏み出すのだった。

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