第四十九話:星の守護者と次元の境界
エメロードの故郷である星の上空に、闇の次元からの侵略者たちの艦隊が姿を現した。禍々しい破壊の魔力を放つ無数の宇宙船が、この生命豊かな星を獲物と見定め、静かに、しかし確実に迫ってくる。龍馬は、魂の樹から流れ込む膨大な生命の魔力を全身に宿し、金色に輝く存在として、彼らの前に立ちはだかった。
「俺は、この星の『剣』だ! お前たちに、この星は渡さない!」
龍馬の咆哮が、星の生命の響きと一体となり、宇宙空間へと木霊する。彼の両手から、魂の樹の生命の魔力を凝縮した巨大な光の剣が生成された。それは、純粋な生命の輝きを放ち、闇を切り裂くかのように閃く。
『マスター! 侵略者たちの艦隊が、攻撃を開始します! シールド展開!』
ルミリアが、緊迫した声で警告する。無数の光線が艦隊から放たれ、龍馬へと集中砲火を浴びせる。
龍馬は、光の剣を構え、迫り来る光線を打ち払った。彼の体から放たれる生命の魔力が、光線を吸収し、その破壊のエネルギーを無力化していく。しかし、光線の数は増え続け、龍馬は次第に防戦一方になる。
「くそっ、数が多すぎる!」
龍馬は、歯を食いしばった。侵略者たちは、物理的な力だけでなく、次元の境界を歪ませることで、この星の生命の魔力を吸収しようとしているのが分かる。
その時、エメロードの声が、龍馬の心の中に直接響いた。
「……リュウマさん……私と……この星の……生命の……全てを……あなたに……。」
エメロードの言葉と共に、魂の樹から、さらに強力な生命の魔力の奔流が、龍馬の体へと流れ込んできた。それは、この星の全ての生命が、自らの存在を龍馬に託し、彼と共に戦うことを選んだ証だった。
龍馬の全身が、まばゆいばかりの金色に輝き、その体が、巨大な光の存在へと変貌していく。それは、この星の生命の意志そのものが具現化した、まさに「星の守護者」の姿だった。
『マスター! この星の生命の魔力と、マスターの『調律の魔法』が完全に融合しました! 無限の創造の力が、マスターに宿っています!』
ルミリアが、興奮と感動の声で叫んだ。
龍馬は、巨大な光の剣を天高く掲げた。剣からは、無数の生命の光が放たれ、宇宙空間へと拡散していく。その光は、侵略者たちの艦隊へと向かい、彼らが展開していたシールドを容易く貫いていく。
「お前たちに、この星の生命は奪わせない!」
龍馬の言葉は、雷鳴のように響き渡り、侵略者たちの艦隊に大きな衝撃を与えた。光は、艦隊の内部へと浸透し、その破壊の魔力を浄化していく。
侵略者たちの宇宙船は、その破壊の魔力を失い、まるで朽ちた木の葉のように、次々と機能停止していく。中には、光に包まれ、本来の姿であるであろう、宇宙の生命へと調律されていく船もあった。
しかし、その中で、一際巨大な旗艦だけは、龍馬の光を弾き返していた。旗艦からは、これまでで最も強い、純粋な『闇』の魔力が放たれている。
『マスター! あの旗艦から放たれる魔力は、以前遭遇した次元侵食者の魔力と酷似しています! あれこそが、侵略者たちの真の元凶です!』
ルミリアが、警告する。
旗艦の甲板に、一人の人影が姿を現した。彼は、全身を黒いローブで覆っており、その顔はフードで隠されている。しかし、その体からは、圧倒的な『闇』の魔力が放たれ、周囲の空間を歪ませている。
「……まさか……この次元に……これほどの『守護者』が……いたとはな……。」
フードの男の声は、宇宙空間に響き渡り、龍馬の心に直接語りかけてくる。その声には、驚きと、しかし、どこか楽しげな響きがあった。
「お前が、この侵略の元凶か! お前たちに、この星の生命は渡さない!」
龍馬は、光の剣を構え、フードの男に睨みつけた。
「……フフ……そうか……。では……我の力……試してみるがいい……。」
フードの男は、ゆっくりと腕を上げた。すると、彼の周囲の空間が、大きく歪み始める。それは、次元の境界を自在に操る力だった。
男の背後に、漆黒の巨大な次元の裂け目が開いた。その裂け目から、無数の黒い触手が伸び、この星の生命の魔力を吸収しようと蠢き始める。それは、かつて龍馬が戦った次元侵食者を彷彿とさせる、おぞましい光景だった。
『マスター! 次元を喰らう力です! このままでは、この星の生命の魔力が、根こそぎ奪われてしまいます!』
ルミリアが、危機を訴える。
龍馬は、この星の生命を奪わせるわけにはいかない。彼は、光の剣を手に、次元の裂け目へと向かって突進した。彼の体から放たれる金色の光が、裂け目から伸びる触手を焼き払い、その闇を浄化していく。
龍馬は、この星の生命をかけた、最後の戦いへと足を踏み出す。それは、次元の境界を越え、星の未来をかけた壮大な戦いとなるだろう。




