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異世界部屋から始まる自由生活! ~仕事疲れの社畜リーマン、チート魔法で人生逆転~  作者: ねこあし


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第三十六話:炎の荒野と襲い来る魔物

古の魔法使いの塔を後にし、次元侵食者ディメンション・イーターの活動が最も活発な次元へと転移した龍馬は、その光景に愕然とした。目の前に広がるのは、燃え盛る炎に包まれた荒野だった。大地はひび割れ、溶岩が川のように流れ、空は赤黒い煙に覆われ、太陽の光は届かない。熱風が吹き荒れ、焦げ付くような硫黄の匂いが鼻をついた。


『マスター。ここが、次の次元です。この次元の魔力は、完全に歪んでいます。生命エネルギーの魔力が極端に少なく、代わりに、破壊と混沌の魔力が異常に増大しています。』


ルミリアの声が、龍馬の心の中で響いた。その声には、彼女もこの世界の異様な状況に驚いているのが感じられた。


「これは……ひどいな。まるで、世界の終わりみたいだ。」


龍馬は、その荒廃した光景に、胸が締め付けられる思いだった。これまで調律してきた世界もそれぞれに歪みを抱えていたが、これほどまでに生命の気配が失われ、破壊が蔓延している場所は初めてだった。


『マスター。この次元の魔力反応は、これまでで最も不安定です。次元侵食者による影響が、ここまで進行していると推測されます。』


ルミリアが、さらに警告した。


その時、地面のひび割れから、巨大な魔物たちが姿を現した。それは、炎の鱗を持つ竜のような姿をした獣や、全身が岩石でできたゴーレムのような存在で、その目からは、破壊衝動に満ちた光が放たれている。彼らは、龍馬たちを異物と見なし、咆哮を上げながら襲いかかってきた。


「くそっ、いきなりか!」


龍馬は、自身の『調律の魔法』を解き放ち、炎の竜に向かって放った。金色の光が竜の体を包み込み、その破壊の魔力を鎮めようとする。しかし、竜の魔力は、龍馬の想像以上に強大だった。


炎の竜は、龍馬の調律の光をものともせず、口から灼熱の炎を吐き出した。龍馬は、辛うじて炎をかわしたが、熱波が彼の肌を焦がす。


『マスター! 彼らは、この次元の破壊の魔力を吸収し、自身の力としています! 通常の調律では、完全に無力化することは困難です!』


ルミリアが、緊迫した声で告げた。


「そうか……こいつらは、この世界の歪みそのものなんだな……。」


龍馬は、自身の調律の魔法を応用し、破壊の魔力を逆手に取ることを試みた。彼は、炎の竜の魔力を吸収し、それを自身の魔力へと変換していく。破壊のエネルギーを、創造のエネルギーへと変えるのだ。


変換された魔力が、龍馬の体内で渦巻く。その力は、これまでにないほど強大で、彼の全身を熱く脈打たせた。


「くらえ! 『創生の咆哮クリエイション・ロア』!」


龍馬は、変換した魔力を込めて、金色の光を放った。それは、破壊の炎を逆流させるかのように、竜の口へと吸い込まれていく。炎の竜は、苦悶の声を上げ、その巨大な体が、徐々に光の粒となって消滅していった。


龍馬は、続けて襲い来る岩石のゴーレムたちにも、同じように変換した魔力で攻撃した。ゴーレムたちは、一撃で崩れ去り、その岩石は、清らかな土へと変わっていった。


『マスター! 素晴らしいです! 破壊の魔力を創造へと変換する能力……まさに『神威の調律』の真髄です!』


ルミリアが、喜びの声を上げた。


しかし、龍馬の表情は晴れなかった。倒しても倒しても、地中から新たな魔物たちが湧き出てくる。まるで、この世界の破壊の魔力が、彼らを生み出し続けているかのようだった。


「これじゃあ、キリがないな。根本を止めないと……。」


龍馬は、周囲を見渡した。この世界の『歪み』の核は、一体どこにあるのだろうか。


『マスター。最も強い魔力反応を感知できるのは、この荒野のさらに奥深く、この次元の中心部です。そこに、次元侵食者の活動の痕跡が集中しています。』


ルミリアが、次に進むべき方向を示す。


龍馬は、湧き出る魔物たちをかわしながら、荒野の奥へと進んだ。地鳴りが響き、溶岩が噴き出す中を、彼はひたすら走った。


やがて、彼の目の前に、巨大なクレーターのような場所が現れた。その中心には、暗く、底の見えない穴が口を開けている。穴の周囲からは、これまで感じたことのない、強烈な破壊の魔力が吹き上がっていた。


『マスター! あれが、この次元の『歪み』の核です! そして、その奥に、次元侵食者が潜んでいる可能性が高いです!』


ルミリアが、緊張した声で告げた。


龍馬は、その穴の奥から、何か巨大なものが蠢いているのを感じ取った。それは、生きた悪意そのもののような、不気味な存在だった。


「ここか……。いよいよ、本体とご対面ってわけか。」


龍馬は、覚悟を決めた。これまでの調律の旅で培ってきた全ての力を、この戦いにぶつける時が来たのだ。彼の『調律者』としての真の戦いが、今、まさに始まろうとしていた。

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