第二十五話:新たな旅路と再会への予感
地球の世界樹の調律を終えた龍馬は、伊達宗一郎率いる自衛隊の面々と合流していた。皇居の地下から出てきた彼の姿に、伊達は驚きと安堵の入り混じった表情を浮かべた。
「龍馬殿! ご無事でしたか! そして、この空気は……!」
伊達は、周囲の空気が、まるで以前のような清らかなものに戻っていることに気づいた。彼の顔には、希望の光が満ち溢れている。
「はい、伊達さん。世界樹の調律は完了しました。これで、植物暴走は収束するはずです。」
龍馬がそう告げると、伊達は目頭を熱くし、深々と頭を下げた。
「感謝いたします、龍馬殿! あなたは、我々人類の救世主だ!」
周囲の自衛隊員たちも、涙ぐみながら龍馬に感謝の言葉を述べた。彼らの顔には、長きにわたる絶望から解放された安堵と喜びが満ちていた。
『マスター。世界樹の調律が完了したことで、地球の魔力バランスが正常に戻り始めています。異常繁茂した植物も、徐々にその成長を止め、時間をかけて元の状態に戻っていくでしょう。』
ルミリアの声が、龍馬の心の中で温かく響いた。
数日後、龍馬は、伊達宗一郎と共に、この地球の現状について話し合っていた。植物暴走は収束に向かっているものの、文明の回復には、まだまだ多くの時間と労力が必要だ。
「龍馬殿。君の力があれば、きっとこの地球を、元の姿に戻すことができるだろう。どうか、我々に力を貸してほしい。」
伊達は、龍馬に頭を下げた。
しかし、龍馬は、首を横に振った。
「申し訳ありません、伊達さん。俺は、この地球に留まることはできません。俺には、異世界で果たすべき使命がまだ残っているんです。」
龍馬の言葉に、伊達は驚いた表情を見せた。
「まだ、使命が……? それは、一体……?」
「俺は、管理者によって、異世界に呼び出された『調律者』です。異世界の、そして、他の次元の魔力バランスを正常に戻すことが、俺の使命なんです。」
龍馬は、伊達に、自身が異世界から来た調律者であること、そして管理者との対話、ルミリアとの絆について、話せる範囲で説明した。伊達は、彼の話に、目を丸くして耳を傾けた。
「異世界……調律者……。信じがたい話だが、君の力を見れば、納得せざるを得ない。しかし、君が行ってしまうと、我々は……。」
伊達の顔に、再び不安の影がよぎる。
「大丈夫です、伊達さん。俺がいなくても、地球は必ず復興します。そして、ルミリアが俺の中にいる限り、地球の魔力バランスに異常があれば、俺に伝わってきます。その時は、必ず戻ってきます。」
龍馬は、伊達を安心させるように言った。彼の言葉には、確かな信頼と、未来への希望が込められていた。
伊達は、龍馬の言葉に、ゆっくりと頷いた。
「分かった。君の使命を尊重しよう。しかし、もし、また会うことがあれば、その時は、君の故郷の酒を、共に酌み交わしたいものだ。」
伊達は、龍馬に右手を差し出した。龍馬は、その手を強く握り返した。
「ええ、必ず。」
龍馬は、避難所に集まっていた人々にも別れを告げた。彼らは、龍馬に感謝の言葉を述べ、彼の新たな旅路を祝福した。
そして、龍馬は、拠点である部屋に戻り、ルミリアと共に、次の目的地へと向かう準備を始めた。
『マスター。管理者との対話、そして地球の調律を経て、私のシステムは、さらに安定化しました。そして、マスターの次の目的地として、最も強く魔力の歪みを感じる場所は、東方の大陸にある『天空の都アヴァロン』です。』
ルミリアの声が、龍馬の心の中で、明確に、そして力強く響いた。
「天空の都アヴァロンか……。どんな場所なんだ?」
龍馬は、新たな冒険への期待に胸を膨らませた。
『アヴァロンは、かつて高度な魔法文明を誇ったとされる、空中都市の遺跡です。現在は、そのほとんどが廃墟と化していますが、強力な魔力的な歪みが観測されています。その歪みは、過去の文明の『過ち』と関連している可能性が高いです。』
ルミリアの言葉に、龍馬は興味を引かれた。過去の文明の過ちが、魔力の歪みを引き起こしている。それは、管理者たちの歪みとも、地球の世界樹の暴走とも異なる、新たな種類の調律になるかもしれない。
「よし、ルミリア。アヴァロンへ行くぞ。どんな困難が待っていようと、俺たちは乗り越えてみせる。」
龍馬の言葉に、ルミリアは力強く応えた。
『はい、マスター。次元転移、開始します。』
青白い光が部屋を包み込み、龍馬の体は宙に浮き上がった。次の瞬間、彼の視界に飛び込んできたのは、雄大な雲海の上に浮かぶ、巨大な都市のシルエットだった。しかし、その都市は、既に崩壊の危機に瀕しており、廃墟と化した建造物が、痛々しい姿を晒している。
「ここが……アヴァロン……。」
龍馬は、新たな旅路の始まりを前に、静かに決意を固めた。彼の『調律者』としての真の旅は、今、ここから始まる。ルミリアと共に、彼は異世界の歪みを正し、新たな未来を切り拓いていくのだ。
そして、彼の心の中で、遠い故郷の誰かの笑顔が、温かく、そしてはっきりと、浮かび上がっていた。それは、彼がいつか、再会を果たすべき、大切な人への予感だった。
第二十五話では、地球の調律を終えた龍馬が、伊達宗一郎や自衛隊員たちとの別れを通じて、彼らの感謝と期待を受け止めます。龍馬は地球に留まらず、自身の『調律者』としての使命を果たすべく、次の目的地『天空の都アヴァロン』へと向かいます。アヴァロンが過去の文明の「過ち」による魔力の歪みを抱えていることが示唆され、龍馬の新たな調律の旅が始まります。そして、物語の最後に、遠い故郷の「大切な人」との再会への予感を匂わせ、今後の展開への期待感を高めます。




