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1、婚約破棄と追放

「アリス、貴方は木々と話をし、操作できるのですか?」

「え?」

 アリス・スミスは庭の手入れをしている所に、急に現れた婚約者のクリフォード・マーティンに話しかけられ、固まった。


「……噂には聞いていたが、気持ちの悪い能力ですね。私たちの噂話も植物から聞いていたのではないですか?」

「私たち?」

 アリスがクリフォードの方を向くと、その後ろに美人で有名なヘレン・サーバーが立っていた。


「ヘレン様? クリフォード様、噂話とは何ですか?」

「結論から言おう。君との婚約は解消する。私はヘレンと新しい道を歩むことにした」

「そんなこと、急に言われましても……」

 アリスは泥のついた作業着のまま、立ち尽くしていた。


「汚い格好で近づかないで下さいますか? 肥料のにおいで鼻が曲がりそうですわ」

「ヘレン様……」

 アリスは力なく俯いて、家の中へと歩いて行った。家に入りシャワーを浴びて着替えを済ませると、両親に呼ばれた。


「アリス、話があります」

「なんですか? お父様」

 アリスの父親は深いため息をついた後、はっきりと言った。


「アリス、貴方は心を病んでいるに違いない。植物と話が出来るなんて、ただの思い込みです。療養をかねて、レイク地方にあるこの家の別荘に引っ越して休養しなさい」

「お父様?」

「クリフォード様から婚約破棄を申し渡されただろう? しばらく田舎で噂話が消えるまで静かにしていなさい」


「お父様……わかりました」

「アリス、貴方のためです。少しの間、我慢して下さいね」

「お母様」


 アリスは翌日、馬車でレイク地方の別荘と言うにはあまりに寂れた屋敷に連れて行かれた。

「ここで生活するのですか? 召使いは?」

 両親は顔を見合わせた。そして、母親が口を開いた。


「貴方は一人でここで暮らすのです。緑の魔法使いが家に居るなんて恐ろしいことには、耐えられません」

「……私、捨てられたんですね」

「アリス、恨むならその能力を恨みなさい」

 両親はアリスを残して、馬車で家へと帰っていった。


 アリスは一人取り残され、呆然と立ち尽くした。

「ここには小さな林があるだけ。……しかたないわ。あなたたち、力を貸してね」

 アリスが小さな林に話しかけると、木々がざわめいた。

 そして、緑が深まり花が咲き、果物がなった。


「ありがとう、みんな。私はアリス。これからよろしくね」

 小さな林はみるみる間に大きな森へと姿を変えていった。


 アリスがこの屋敷に来たのは十年ぶりだった。

 確か、屋敷から二時間ほど歩いたところに町があったはずだ。

 アリスは森から、売れそうなきのこや果物を収穫して袋に入れた。

「町で売って、お金を稼がなきゃ」


 アリスは一人、町に向かって歩き出した。


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