王子様
これは私が高校生の時の話です。当時演劇部だった私は、文化祭の準備で一人居残っていました。戸締りをして教室を出ると、机の上に人が立っているのが見えました。まさか閉じ込めてしまったのかと思い、慌てて扉を開けようとしましたが、どこか妙なのです。その人物は何かの仮装をしているようでした。白いブーツに、滑らかな紫色のズボン。上半身には細やかな装飾があります。首から上は、黒くぼやけて不思議と見えません。王子様のようでした。でも、そんな衣装はうちの部になかったのです。彼は背伸びすると、そのままぴょんと飛び跳ねました。
白いブーツがぶらぶらと宙に揺れます。彼は首を吊ったかのように、動かなくなりました。
私が三年生になった時、同じような体験をした後輩がいたようです。過去に部室で自殺があったとかは聞いていません。でも、あの人は演劇部の人だったんじゃないかと、今でも思っています。