囚人
掲載日:2021/07/31
「俺たち、いつ死ぬのかな」
隣の牢屋から聞きなれた声が聞こえた。551番だ。
「どうした、藪から棒に」
「いや、いつ死ねるのかなって」
「そりゃいつかは死ぬだろうけど」
「そうかもしれないけど刑期も教えられてない俺たちって何のために居るんだよ」
「何も知らされてないで過ごすのは辛いよな」
「俺たち以外の囚人も刑期は知らないもんな」
「人生80年っていうしそれより長い事は無いだろうけどな」
「もはや、終わりの見えないマラソンだよな」
「シャトルランの方が近い気がするな」
「でも最近、一人居なくなってたな」
「891番だっけ?出所か?」
「いや、死刑だろ」
「そっか、まぁこんなところじゃ人が死ぬなんて珍しくもないよな」
「でも羨ましいよな。結果はどうであれ、こんなクソみたいなところから出られるんだから」
「そうだよな。人間、遅かれ早かれ死ぬんだから、他に摩耗するだけの人生なんて馬鹿らしいよな」
そう告げた、というより自分に言い聞かせた私は網目状に走った格子に足をかけ、着ていた服を括り付けた。そしてそこに首を通すと全体重を服に預けた。
最期の短い悲鳴を聞いた551番は小さくつぶやいた。
「お前も出所か」




