━序━ 新たな始まり
━━━◀■▶━━━
ここは隔絶された世界。
数多の世界を創り出し、その全てを管理、監視している存在が住む空間。
何かの映像の流れる画面がいくつも並べられ、その目の前に1つの存在が居座っている。
その脇で、そそくさと仕事をこなす、小さな存在も1つ。
その2つだけでこの数の世界を見ているのだ。
「創造主、こちらをご覧ください。」
2つのうちの1人。
否、人としては数えられないその存在━━創造主により創られた初めての理である彼女━━が、創造主へと興味深い情報を提示してきた。
何やら長々とした文章が続き、途中に幾度となく現れている数字や記号の羅列。
創造主はそれらを一瞬にして読み終え、結論である最後の一文へと目を向けた。
そこには、
《━━報告、転生可能な魂の確認。》
と、簡潔にその情報を説明できる分が添えてあった。
内容を理解した創造主が面倒臭そうにして溜め息をした所で、目の前の画面のうちの一つに、その様子が映し出された。
━━━◀■▶━━━
こんな時間に珍しい出来事が起こるものだ。
それが僕の第1感想であった。
次に、文章が長い。
目の前の複雑な文章の最後に、僕が読みたかった一文が書いてあった。
そう、転生可能な存在が現れたのだ。
(久々の楽しみができたね。)
心の中、まぁ僕の中に心なんてないのだけれど、そっと感想を漏らして、僕は様子の変わった1つの画面へと目を向けた。
その画面に移るのは、僕が確か73番目に創り出した世界。
ありとあらゆる事象が、人々の頭によって理解できる世界を創りたいと思って、試験的に創ったんだったかな?
特に頂上的な存在が現れるようにした訳でもなく、虚空の中に後の全てを無理やり詰め込んで送り出したんだけど。
それが爆発を起こしてから、147億年の時が経過した今現在、この世界はそれまでに創って観察していた世界と何ら変わりない、普通に機能した世界となっている。
そんなまともな世界の中、ある一つの存在の魂がここまで辿り着けることとなった。
「んで、この画面に写ってる人が転生可能な魂を保有してるんだよね?」
《はい。
この人間とされる生物が、創造主の定めた適正項目を全て突破しております。》
それは興味深い。
何個目かの世界で確信したことなのだが、創り出した世界の中で必ず何かしら一つの種がその世界の中で作られる星という場所で栄えるのだけれど、この世界の地球という星では、この画面に写っている雄の生物━━人間と呼ばれる生物が繁栄している。
そのうちの一人である画面の彼、それが次の転生者に選ばれたというわけだ。
「それにしても、この73番目の世界のこの星、地球と言うんだっけ?
ここから転生してくる存在って多いよね。
たしか数年前に転生させたのもここの世界のこの星の存在だった気がする。」
《はい。
正確には4年前、適正項目を緩めた結果選ばれた7人も、この男と同じようにこの星から選ばれた人間でした。
それが何か問題でも?》
と答えてくれた。
流石は僕のシステム。
創り出したのが僕なのだから当然だ。
完璧な受け答えができる。
システムは完璧に補助してくれている。
がしかし、こう何度も同じ場所から転生させてるのでは僕の楽しみが無くなってしまうのだ。
なので、
「いや、問題はないのだけれど。
ここからだけ転生させるのも面白くないのかなって思っててさ。
だってそうだろう?
ひとつの場所から転生者を出していたら、他の世界で経過を観察していた存在が無意味になってしまう。
僕が始めたこの楽しみ、それが無くなってしまうよ。
だからね、この男を転生させるはさせるけど、少しばかりイレギュラーな扱いにしてみようかなって。
どうかな?
それで今までの偏りに対するバランスを取ろうかなと。」
と、システムに提案をしてみた。
いつもは僕に提案してくる立場のシステムへと、僕が逆に提案した。
これまでにないパターンだが、ちゃんと機能してくれるかな?
《創造主による提案を確認。
判断中……思考完了。
創造主の提案を肯定致します。
では、早速この男を転生させますか?》
こちらも問題なく機能した様子。
不備が見られたらそれを直すのは僕になる。
ここには僕とシステムしかいないからね。
何でもかんでも創れるわけじゃないから、ある種の退屈は覚えるし、時間が無限にあることも事実だ。
そんな時、このシステムが機能してくれないとなれば、それはそれは僕はまた楽しみがなくなって嫌気がしてしまう。
「よろしく頼むよ。」
《了解。
転生に際しまして、対象の━━》
こちらの思考を読み取らないで、返答から全てを思考するシステムへと転生の実行を許可した。
いつからか、こちらの思考を読み取って自動で動いてくれるように改造した事があったが、僕は生憎様思考するのが好きな為にとても大変なことになってしまったのは言うまでもない。
それっきり、僕とシステムとはちゃんとした対話をしないと機能しないようにしてある。
(さて、今回はどんな転生にしようか。)
色々と作業があるので少しばかりの暇ができてしまった。
退屈になるので他の世界を眺めることに。
1番目から今創った最新の89番目のまでの世界。
数ある画面の左上から右下までの各様子を確認した。
創られてから既に滅んだ世界や、これから発展していくであろう世界、幾度の破滅と再生を繰り返している世界など様々だ。
その様子を見ては、僕が自分の気まぐれで各世界に少しずつ干渉していく。
創造主である僕の干渉ともなれば、世界にとってみればとても大きな出来事になってしまう。
争いを起こしてみたり、特定の存在を贔屓してみたり、やり方は様々だし、結果も様々だ。
遥か昔、僕がまだ産まれてから数億年経った辺りに、ほんの出来事で他とは比べられない程干渉してしまったある世界。
13番目の世界。
思い返していた時だった、そんな少しばかりの思い入れのあるその世界を移す画面にある変化が起きたのだった。
(?!
なんでコイツがっ!)
激震。
いつもの様にして画面を眺めては他を見てと繰り返していた創造主は警戒した。
ある世界で一人の男が突然日常が終わったように。
別の世界で1つの存在が楽しみを見つけたように。
創造主もまた、普段覚えることの無い感情を抱いたのだ。
《警告、この世界へと侵入してくる存在を確認。
直ちに迎撃致しま━━》
「いや無理だ!
やめろ、素直に通せ。
あれは、アイツは消すことは不可能だ。
僕と同じようにして創ってしまった、失敗作なんだから。」
そう、かの退屈に明け暮れていた原初の存在がこの地に、暫くぶりにやって来てしまっのだ。
アイツばかりはタチが悪い。
僕が消されたりする訳では無いが、それでもアイツとは争う気にはなれない。
ふざけ半分で僕の力を分け与えてしまったのだから、それからしばらく経ってるともなれば僕でも幾分かの面倒事になりそうだ。
《このまま無視して宜しいのでしょうか?》
「あぁ、ここまで来させていいさ。」
はぁ……。
僕としたことが失敗だ。
もう少し事前にこの世界を確認していれば、ここに繋がっている道を閉じていたのに。
仕方ないとしか言いようがない。
来てしまったものはしょうがないのだ。
そこはすぐにでも切り替えていかねばならないな。
《創造主、対象となった転生者の準備が管理致しました。》
そんな時、システムの完了を告げる一言で、僕はいい事を思いついてしまった。
やはりシステムは完璧だったようだ。
僕が悩んでいたらすぐに解決策を出してくれる。
(?!
これさえ出来ればこれ以上悩まなくて済むな。
となれば、早速行動しないと……。)
もうこいつに悩むのは飽きた。
昔の僕に創り出さないように言うことは出来ないので、今僕が対処しなければならない。
どうやって対処するかは自由だし、僕が決められる。
折角解決するなら、僕がより楽しめる方法で解決してしまおう。
《侵入者の到着を確認。》
「ここに通してくれ。
それと、転生者も宜しく。」
《了解。》
さぁ、僕の楽しみの始まりだ。
━━━◀■▶━━━
創造主……万物の主。絶対。完璧。
退屈してたので四ノ宮とアザゼルを転生させて観察する。