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第一章第55話 毘沙門天の侍2

 土州、豊岡城。


「殿! 東でまたもや爆発を確認! その爆発による揺れが城下を襲い、城下の被害は甚大です!」


「ええい、何が起きている!?」


 土州でも魔王軍の攻撃に先日まで晒されていたが、いつの間にか魔王軍は土州から引き上げていた。

 安心したのも束の間、遠い東の方で爆発がおき、その爆発による振動が遠い土州にも襲ってきた。

 土州を治める長宗我部元親はこの異常事態に何も手が打てず、ただただ狼狽しているだけだった。


「と、殿! そ、空、空を!」


 家臣が慌てた様で空を指差している。

 元親は空を見上げると2つの黒点が見える。


「あ、あれはなんじゃ?」


 目が良いと評判の家臣にそう訪ねると、その家臣はその2つの黒点をじっと見つめる。


「…………人、のように見えます」


「人!? 人が空を飛んでいるとでも申すか!!」


 その2つのうち、1つの黒点がもう片方に近づいている。

 そして黒点同士が接触した瞬間、その地点で爆発が起こる。


「うわ!?」


 爆発による振動が再び豊岡城を襲い、豊岡城の城壁や天井の瓦が砕け、ボロボロになる。

 元親がいた部屋の屋根も当然のように崩れ落ちた。

 爆発した地点から、黒点がこちらにめがけて落ちてくる。

 かろうじて瓦礫から這い出て来た元親はその黒点が落ちてくるのを気付き、さらに狼狽える。

 その黒点はやがて点から人の形をしていった。

 そう認識した瞬間、その人は地面に落下。

 再び、大きな音と揺れが土州全土を襲う。


「………ワシの見間違いか?」


 落下してきた人物は一度だけ面識がある、忘れもしない人物だった。


「魔王、信長?」


 魔王信長がボロボロになって落ちてきたのだ。

 一度だけ、信長の事を見たことがある元親だったが忘れる事はなかった。

 その信長がボロボロになっている。

 一体何が?

 ふと気付くと空が異様に明るくなってきた。

 元親は恐る恐る、空を見上げる。

 そこには太陽があった。


「………夢でも、みているのか?」


 この時間、この方角に太陽があるわけがない。

 元親は太陽が本来あるはずの位置を見る。

 そこには予想通り太陽があった。

 太陽が2つ?

 有り得ない。

 あの太陽はなんだ?

 その凝視している方の太陽がだんだん大きくなっていく。

 それに伴い、どんどん気温が上昇し、ついには呼吸すらままならない状態になる。

 暑い、息苦しい。

 それが長宗我部元親の感じた最後の感情だった。



 上杉の党首がやってきて、我の半分の力を封じ込めたと思ったら、いきなり奴が現れた。

 我と同質の力を我と同等に保有する奴は、不知火を囲みし我が軍を一瞬で壊滅させ、我と対峙。

 力の半数を失いし我に攻撃をしかけ、我は半死半生となっている。


「ぐぐぐぐぐ……」


 我に並ぶもの無しと思うておったが、あやつの出現で我の存在が消されようとしている。

 あやつはあの者どもの差し金であろう。

 あの者どもに復讐するため、我はこの地で力を蓄えていたが、あやつのせいでそれすらままならぬ。

 このまま屈するのも容易いがそれは許されぬ。

 こうなれば、我はこの倭国を灰とし、我の野望を果たすほかなし!

 下には薩州がある。

 このままこの上空で待っていればあやつは我を殺しにやってくるだろう。

 我の今の力ではロクなことが出来ぬが、奴の力を使えばそれは叶う。

 せいぜい我の仕事を手伝っていただこう。

 倭国への復讐を!

 信長が同等の気配を感じ、そちらの方に視線を向ける。既に我は同等の姿を目に捉えているが、体はそれには反応が出来ない。

 このままでは我が肉体は滅びを迎えるだろう。

 我にはまだ成すべき事がある。

 こんな所で朽ちてたまるか……。

 信長は諦めなかった。

 自らの力が無理ならば、利用できるものを利用する。

 それだけだ。

 保科銀太と呼ばれた同質は、我を排除するべく突っ込んでくる。

 あれはあきらかに保科銀太という個の意志ではなく何者かの意志が働いている。

 恐らく、我にこの力を授けし神と名乗る天人であろう。

 我が天人の意図通り動かぬからあの哀れな操り人形をよこしてきたか……。

 口惜しいものよ……。

 我をうつけと呼びし、この倭国を滅するのを自らの手でやれぬとは……。

 銀太の放った魔力の塊が、信長の眼前に迫ってきた。

 信長はそれを誘導するように、下にある安州に自らもダメージを受けながら落ちていく。

 安州は爆風で消滅したのを確認し、ヨロヨロと信長は立ち上がった。


「後、みっつ………」


 信長はそう呟いた。

 信長がフラフラになりながら、次の目的地に向かって飛ぶ。

 目指すは岩山本願寺。

 信長を異端と呼び、それを流布した連中。

 奴らは最後の最後にするつもりだったが、信長の体力と魔力がそれを許さない。


 眼前に見える岩山本願寺を見据える。

 こちらに気付いているようで、信長に向けてRPG核を向けている。

 これはある意味好都合。

 自分らも吹き飛ぶとは微塵にも思っていないようだ。

 千里先の声を聞き分ける信長の耳は岩山本願寺で交わされている愚かな声が聞こえていた。


「法主、魔王接近!」


「奇跡の砲、発射準備整いました!」


「時期は来ました、奇跡の砲、発射します」


「法主、お待ち下さい!」


「なんですか?」


「奇跡の砲、果たして本当に邪悪だけを滅する聖なる雷なのでしょうか?」


「大陸の技師はそうおっしゃっていました」


「その大陸の技師は、それを証明するものを提示していますか? 私はその大陸の技師を信用出来ません!」


「信用できない?」


「だってそうでしょう、この本願寺滅亡の危機に姿を眩ます輩ですぞ!」


「彼らは彼らの義があります。 我らは魔王を討つこと。 彼らは魔王を大陸に行かせない事。 利害の一致していた共闘です」


「法主、本当に奴らは大陸の技師ですか?」


「と、いいますと?」


「この奇跡の砲は、法主が異界より呼び出した兵器。 それを大陸からきた技師がなぜ知っているので?」


「彼らは言っていました。 大陸にも似た兵器はあると」


「失礼ながら拙者は大陸と交易している商人を知っていますが、大陸にそんな技術があるとは聞いたことありませんぞ!」


「初耳てすね、そんな我が法を破る商人とあなたは懇意なのですか。 あなたの処分は後日行うとしましょうか」


「私の処分などいつでも結構! その代わり奇跡の砲を使ってはなりませぬ!」


「発射しなさい」


「法主!」


 一発の弾丸が信長めがけて放たれた。

 その後、本願寺があった箇所は何もなくなった。


「愚かな生き物よ……」


 信長は、ゆっくりと次の目的地に飛ぶ。

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