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第一章第51話 不知火城の戦い5

「保科隊、出るぞ!」


おおおおおおおおおおおおおお!!


 出陣の太鼓と兵らの威勢ある叫びで、不知火城の大手門は開門した。

 城壁には、鉄砲や爆矢を構えた兵たちが配置に着いている。


「火縄一列目、構え!!」


 火縄部隊は銃口を敵の一団に向ける。

 火縄部隊を指揮する吉江氏は、突撃部隊の動向を見守る。


「動!!」


 騎乗した銀太は掛け声を発して、城門を出る。

 それに続く保科突撃部隊。

 吉江氏はその突撃部隊の動向を見て、火縄部隊の方を向いた。


「目標、敵本陣!! 第一列目、撃てえええ!」


パパパパパパパパパパパ!!


「第二列目、前へ!! 目標同様! 撃てええええええ!」


パパパパパパパパパパパ!!


「第三列目、前へ!」


 城から放たれる途切れない射撃が、羽柴軍団を襲う。

 そして保科突撃部隊は真っ直ぐ本陣へ一列縦隊で突撃してきた。


「撫子様、不知火城から討って出てきました!」


 石田小梅は、竹中撫子に告げた。


「でしょうね。 もうあの攻城兵器の作成に気付いたという事ですね。 あれが完成したらあちらはなすすべありませんからね」


 撫子は扇子の端を口元に当て、クスクスと笑う。


「火縄の連射ですか。 私もあれは考えた事があったんですが先に実践されちゃいましたね。 さて、罠の方はどうなっていますか?」


「それがまだ見る限りだとまだ一兵も引っかかってないです」


「え? 無作為に罠を張り巡らしたのに?」


「それが、罠のある場所を確実に避けて突っ込んできているのです」


「………これが牡丹を破った先見の眼ですか。 そこまで対応力のある力だったとは」


「どうしましょう?」


「罠を踏まないならば罠を踏ませればいいです」


「へ?」


「罠のある地を踏むしか無い状況にしてしまいましょう。 小梅さん、移動指示を各軍に。 層の薄い所を狙って動いているようですから罠密集地の前方向を薄めに、他を厚めに。 罠に嵌って散るか我が兵に囲まれて散るかくらいは選ばせてあげましょう」


「わかりました。 皆さん、陣型変更しますよ、配置に着いてください」


 陣型変更の号令が出ると同時に羽柴軍団の動きは素早く指定された場所に移動を終えていた。

 銀太は罠の箇所を巧みに避けながら敵の動きに目を見張っていた。


「ち……。 面倒な事しやがって」


 今まで敵兵すらも目にくれずただ本陣めがけて疾走していたが、敵はその目的地の敵本陣をぐるっと囲むように布陣してきた。


「なら、そろそろ使うぞ、火を噴く槍、構え!」


 保科部隊は肩に背負っていた火を噴く槍を持ち出し、構えた。

 

「放て!」


 銀太の号令と共に敵陣中心部にかけて火の柱が昇竜の如く吹き上がる。

 銀太の読み通り、羽柴軍団は火を噴く槍の対策防具を外していたため、効果は絶大だった。

 火の柱を見て、今まで沈着冷静だった撫子はほんの一瞬、我を忘れてその火柱を見ていた。

 桔梗があれほど火を噴く槍の対抗策を渋っていたのは正にこれが使われる可能性を警戒していたからだ。

 しかし一度見破られた切り札を再度投入してくる訳がないとその意見を一蹴し、通常装備に戻したのは他でもない撫子だった。

 完全に裏の裏をかかれて呆気をとられていた。

 だがすぐ我に帰り、撫子は兵に指示を飛ばす。


「あれは一発撃てば終わりの兵器です。 既に使用されましたので火を噴く槍は通常の槍以下。 押し返しなさい!」


 体勢の立て直しを図る羽柴軍団を見て、銀太は刀を抜き、刃先を敵本陣に向けて言い放った。


「一点突破!!」


 保科部隊はその合図を聞き、手に持っていた火を噴く槍を投擲し、各々が刀を抜いて真っ直ぐ本陣に突っ込んでくる。

 火を噴く槍の投擲と、城から止まらぬ火縄の連続砲火によって、手動で罠を発動させる人員は機会を次々と逃し、ついには銀太が本陣の垂れ幕を刀で突き破り、本陣まで到達していた。

 そしてなだれ込むように保科部隊が次々と本陣に到達していた。


「あんたが大将か?」


 銀太は撫子と対峙した。


「あなたが保科銀太ですね……」


「とりあえず王手ってとこだな」


「ええ、戦略においては敗北を認めざる得ないですね。 ですけど私は最低限の役目は果たしました。 ……本当に最低限ですけど」


「何?」


「局地戦での戦略でなら見事です。 ですけど、大局的に見るとどうでしょうね?」


「大局的?」


「私如きに、武器道具を使い切ってしまいましたようですね。 その後はどう凌ぐつもりなのでしょうか」


「……………………」


「そしてこの場に大将自らノコノコやってくる蛮勇、誉められたものではないと思いますよ?」


「というと?」


「私も閻魔丸で地獄から帰ってきたものですから……」


 撫子は冷めた目で銀太を見つめる。


「あなたは戦闘的な力ではありませんよね? 先見の眼……でしたか。 人外系の力の前では無力な力であることを悟るといいですよ」


 扇子の端を口元に当てクスクス笑う撫子の横に、小梅も立ちはだかる。


「こんにちわ、保科銀太さん。 私もご想像に漏れず閻魔丸の使用者です。 どうせ貴方も私たちもここで朽ち果てるからネタばらしをしますね」


「私たち………も?」


「ええ、貴方も私たちもここで死ぬのが確定しましたから。 ネタばらしをするとですね、上杉の動向が羽柴軍団に筒抜けだったのは私の力です。 あなたの先見の眼ほど一点に集中した能力ではありませんけどね」


 小梅の背後の空間が揺らめく。


「紹介しますね。 私の友達、義継と左近です」


 小梅の背後に二人の男が現れる。

 白い覆面をした男と、人の背丈の倍はある巨大な刀を担いだ男。


「義継は遠くの事を見たり聞いたり出来るんです。 それであなたたちの情報を知り得ていたわけですよ。 ですからあなたが吉江氏にも内密でスパイを探っていたのも知っています」


「道理で……。 全くスパイの痕跡らしい痕跡が残ってないと思ったらそういうオチって事か」


「はい。 残念でしたね、無駄な労力お疲れ様です」


「で? そっちのでっかい刀を担いでいる左近さんとやらはさしずめ攻撃特化のお方というわけかな」


「はい。 私自身はただの小娘です。 戦も下手ですし、チャンバラも出来ません。 だから私の代わりに戦ってくれるのが左近です」


「ただの小娘……ね。 そういう風に自分を評しているやつは大抵厄介なやつと相場は決まっているんだが、お前もその口かな」


「期待を裏切るようで悪いですけど本当にただの小娘ですよ」


 小梅はニコニコ笑いながらそう言った。


「さて、お嬢ちゃんの力はわかったが先ほどお嬢ちゃんが吐いた台詞に現状だと結びつかない言葉があったんだが……。 それは竹中撫子さんの力に意味しているととって間違いない?」


「私たちもここで朽ち果てる、と先ほど言った言葉が気になってしょうがない感じですか?」


「ああ、全くその通りだな。 充分その左近さんとやらで切り抜けれると思われるんだが?」


「私を舐めないで下さいね。 柴田殿を破ったあの力がある以上、左近でも荷が重いです」


「………………………ああ、あれか」


 魔王信長と同等の魔力を得た状態。

 それで柴田勝家を手抜川で打ち破った力。

 あれを使えばこんな回りくどいことしなくても楽勝で羽柴軍団など蹴散す事ができるのになんで使わないのかと疑問に思った諸兄もいるだろう。

 あの力は正直言うと、自分の意志で意図して引き出せる力ではない。

 はっきり言って、どうやってああなっているのか、銀太自身も分からないのである。

 ついでにいうならその時の銀太の記憶はひどく曖昧で小梅に言われてなんとなくそんなことあったなぁ、と思い出したほどなのである。

 流石に銀太はそんなことを今この場で暴露するほど空気を読めない男でもないし、せっかく警戒してくれているんだからそのまま警戒さておけという感じに落ち着いていた。


「では、次は私ですね」


 撫子はそう呟き、扇子を開く。

 その扇子には一羽の真っ赤な鳥が描かれていた。

 扇子をゆっくりと仰ぐ撫子。

 その仰がれる風に乗り、扇子の鳥が姿を現した。

 真っ赤な体躯で七面鳥くらいの体格。

 そして最も目を引くのは躰中よりとめどなく溢れている火炎。


「鳳凰……………」


 不死鳥、火の鳥、フェニックスと、共通しているのは、破壊と再生の象徴。


「伊達党首、伊達正宗は龍を使役していました。 だから誰かは鳳凰を使役しているという考えはありませんでしたか?」


 微笑みながら銀太の反応を楽しむかのように振る舞う。

 鳳凰の出現によって気温が一気に上昇する。


「確かに戦では負けました。 しかし、桔梗や殿が警戒している貴方を撃ち破れれば、結果的に羽柴の勝利なのですよ」


 銀太は刀を撫子と小梅に向けて言った。


「なんだかな……。 そうまで言われると自分が大物なんじゃないだろうかと錯覚してしまうよ。 だけどあいにくと俺は小物でね。 とりあえずこれまたその場しのぎでなんとかするさ」


 とはいっても先ほどの桔梗らの指摘は正しい。

 銀太の力の先見の眼は、使役系の力の前ではあってもなくても変わらない。

 こうするとこういう結果になるのがわかるのみで、どうしようもない場合はまるで無意味な力なのだ。


「どうするかね……」


 時間もかけられない。

 ここは敵本陣の真っ只中であり、本陣の外は敵だらけ。

 時間が過ぎる毎に、どんどん状況は悪化していく。

 今までうまく事を運んだが、最後の最後、大将の前までたどり着くことしか考えていなかった銀太の失策である。

 この大将と対峙まで想定して先見の眼を使用していたのならば結果は変わっていたかもしれない。

 いや、見ていたら何も出来なかったかもしれない。

 なんとなく頭がぼうっとしてくる。

 やがて視界がだんだんと霞みだしてきた。


竹中半兵衛→今孔明→三国志、ショク漢の二大軍師の一人緒葛亮孔明、別称伏龍であり龍。もう一人のホウトウが鳳凰と例えられているみたいな突っ込みつつな文章を泣く泣く削除しました。

理由は2つあります。

一個目はホウ統の別称がホウスウだったっけか? 漢字はどう書くんだっけ、と悩んだ事。

まあこれは調べれば解決しますが、致命的な理由その2は、、、

上記カタカナの漢字が携帯電話に入っていないという、致命的すぎる原因です。

流石にカタカナ表記では、書きたくないのでいっそ書くのを断念しました。

文字数にしてだいたい千文字近くが忘却の彼方に墜ちていきました。

まあ、携帯なんてメールに使う文字さえあれば大して困らないもんですから、入ってなくても不思議ではないですが……。

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