第一章第47話 不知火城の戦い
銀太は目前にある親不知城を見る。
ぎっしりと敵兵に囲まれていた。
「あの隙間無い敵兵の間を通って、城に入らないといけないんすね」
銀太の部下は寡兵というか命知らずの集い。 こんな絶望的な状況下にあってもニヤニヤしながらその光景を見つめているのがほとんどだった。
「さて、どうでやすか、大将?」
正面突破だ、突っ込んで敵兵の壁に風穴空けろ! と、言ってほしそうな顔つきで銀太を見ていた。
冗談ではない。 そんな盲戦、するわけにはいかない。
持久戦が今から始まるというに、こんなとこで飛ばしたらあっという間に力尽きる。
さてさてどうするか……。
「おお、そうだった」
忘れていた。
わざわざ春日山から苦労して持ってきていた新兵器を。
「アレもってこい。 そして、爆矢隊は戦闘準備」
「応!」
俺は名軍師ではないので全員無傷で不知火城に入城できる策なんざ持ち合わせていない。
しかし俺には先を読む目と、命知らずな寡兵がいる。
「準備完了ですわ」
「ああ、ご苦労」
俺はそれを見て、考える。
どうこれを使えば有効な手段となるか……。
一応、切り札のつもりで用意したつもりだったが、こんなに早く切る羽目になるとは思いもしなかった。
「出し惜しみしてヘタこくよりはマシか」
想定できるうちで最悪のパターンは、何もせずここで全滅すること。
今でこそ敵に見つかっている形跡はない。
しかし敵が周囲を哨戒していないわけがないし、何より春日山から俺らがいない程度の情報は得ているだろう。
ここで浮かばない知恵を絞っていても想定範囲の最悪な事態になる可能性は時間が過ぎていくほど確率は上がる。
ならば……。
「正面突破!!」
「応!」
俺の決断と共に保科隊は各々武器を構える。
「爆矢部隊、長槍部隊はそのまま正面突破!」
俺の号令と共に爆矢、長槍部隊は不知火城を取り囲む魔王軍に突撃を仕掛けた。
「爆矢、寅の方向に向けて発射、二射目巳の方向!」
「左から伏兵接近!」
「よし、前進!」
左目に宿る先見の目のお陰で最も効果的な選択肢を選んでいく。
先見の目はなかなか精神力を使うが、死ぬよりマシだ。
精神力、瞬間的判断力、行動力と何気に備えていないと意味の成さない能力なため、色々と大変である。
こう動けば、こういう結果になるという式と答えが俺が思いつく限り描かれる。
予期せぬ伏兵とか奇襲は食らうことはないが、俺が思い付きもしないようなビジョンは見れない。
未だに新兵器を使わないのは、使った後、後悔しているビジョンのみしか見えていないのだ。
この新兵器は対策をとられてはあまり意味を成さない。
対策されているのだ。
すなわち、新兵器の事を敵側に漏れている。
「羽柴、秀吉………」
敵の指揮官の名前を呟く。
思えば、俺の世界の羽柴秀吉には有名な軍師が二人いた。
二兵衛と呼ばれた男達……。
黒田官兵衛、竹中半兵衛。
戦国時代の伏龍と鳳雛。
この世界にそれに類似した奴がいても不思議ではない。
「まもなく左翼に死角が開く! そのタイミングで不知火城まで全速力で突っ切れ!」
「応!」
凡人の俺が、先に起こる事象を知ることができるというハンデだけで天才軍師相手にどこまで対応できるかわからない。
だが、負ける訳にはいかない。
「城に入られてしまいましたか」
「桔梗よ、結局なんだったんだ?」
秀吉は無駄に重い甲冑を脱ぎ捨て、黒田桔梗にこの甲冑を着るよう指示した意図を聞く。
「火には万全の対策を取っているということを感づかれました」
それを聞いた秀吉は感嘆の表情をして、
「お前が読み負けたか……」
感心している秀吉に竹中撫子は言う。
「読み負けとは違いますよ、殿……」
「ん?」
「新兵器を封殺し、敵の手札を削れました。 後は爆矢という手札を使い物にならなくさせれば積みですね」
「しかしなんだ……。 爆矢といい、火を吹く槍といい、保科銀太という男、次々と……」
「ええ。 爆矢を封じても次の手札を新たに作られますとイタチごっこです。 となりますと、手は一つかと」
桔梗と撫子はクスリと微笑んだ。
「いや、待て」
秀吉が言う。
「何でしょう?」
「殺さずワシの部下にすることはできんか?」
「…………保科銀太をですか?」
「うむ」
「簡単なんですが………………難しいと思います」
「ん? 簡単で難しい?」
「保科銀太を釣るには最大の餌があります。 しかしその餌は殿の将来的構想にて必要な楔です」
「ふむ……。 だが惜しい」
「二者一択です。 確実か、冒険かの」
「参考までに聞こうか、保科銀太を我が軍に引き込む方法を」
「神子です」
「神子?」
「保科銀太の弱点は山県遥です。 山県遥を我が軍に落とせばどうとでもなります。 保科銀太が上杉にいるのは山県遥を守るためですから」
「ふむ」
「ですが保科銀太を手元に置いておくには神子の秘技を使う事は断念せざる得ないでしょう。 どちらを取るかは殿にお任せします」
「そうよな。 神子の秘技が使えなくなるのは痛いな。 多少残念ではあるが」
「賢明です、殿」
更新遅れて申し訳ありません。
DSの遊戯王にハマってしまい(ウワナニスルヤメr
コホン……。
いや、仮病使うのも痛い人ですがはっきり更新が遅れた理由をいうのもどうなんでしょうね。
更新忘れていた訳ではありません。
執筆するのを飽きたというわけでもありません。
と、弁明してみます