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第一章 46話

三人はファラスの道を歩いていた。

金と銀の目的は、ウェンデス海軍が所有する戦艦を見ることだった。

多恵はその二人を案内する水先案内人といったところ。

一見、優しそうな好青年だが発言する内容は節々に毒のある金套。

口も悪く態度もでかい銀蝶。

二人は倭国滅亡までを知り、それを語っていた。


「ちなみにお二人はどこでファラス人の提督と知り合ったのですか?」


率直な疑問をぶつけた。

多恵の主であるリーズ提督は倭国とは縁も縁も無いファラスの人。

倭国から来た彼らとの接点が思いつかないのだ。


「リーズの旦那との接点? そりゃあれだ」


「まあまあ、銀。 とりあえず落ち着いて。 ここでいきなり種明かしは芸がないですよ」


と、金套はニコニコ笑って言った。


「は?」


「金? いきなり何言ってやがる」


「まだまだ道中はあります。 ファラスに着くまで倭国滅亡からリーズ提督に出会うまでゆっくり、たっぷり、ねっぷり話しますよ。 ここで会話を切るのは私のポリシーに反しますから」


「ポリシーってお前……。 まあ、あんまりここから先の話は嫌な話だしな。 金、次はお前中心で話せよ」


「話すのはあなた。 私はそれを注釈します」 銀蝶はじろりと睨みつけ、金套はにへらにへらと交わす。


「………相変わらず食えない男やな」


「誉め言葉として受け取らせて頂きます」


銀蝶は舌打ちをした。

相変わらずこの男は、とブツブツ言っていたが、よく金套の性格を掴んでいるのか、反論するだけ時間の無駄と悟り、銀蝶が喋り出した。


「えっと、ドコまで話してるっけか」


「武多信玄が死んだとこまでですね」


金套は答えた。


「信玄が死んだ後、信玄の嫡子勝頼が武多を継いだんだが、父親が偉大すぎてその陰を追ったからかな。 国内も家臣間も纏まってないにもかかわらず、魔王軍に挑んでは負け、挑んでは負けを続けて国力は衰退していった」


それを見逃す魔王ではなかった。

魔王は逆に武多を侵略しだす。

長篠、富士川、天目山と連戦連敗を続け、遂には最強武多軍団は全滅した。 武多が滅び、魔王軍の標的は上杉に絞られた。


「南、北、東っと、完璧に囲まれましたな」


南は羽柴秀吉率いる羽柴軍団、東からは滝川一益率いる滝川軍団、北からは前田利家率いる前田軍団が越州を取り囲んでいた。


「本隊は軽率に春日山を動くわけにはいかないし……。 八方塞がりですね」


金次は拳を握りしめ悔しそうに言った。


「金次、桜姫」


銀太は言った。


「お嬢の事、頼みます」


いきなりの銀太の発言に場は戸惑う。


「銀太、何言って……」


「親不知城が抜かれたら春日山まであっという間に連中は来る。 親不知城は羽柴秀吉率いる軍団に猛攻をかけられている。 かといって本隊をうごかせば北から前田、東からは滝川が攻めてくる。 本隊が動けないからといって親不知城をほっておいたら結局結末は一緒」


「で、でもね、銀太殿。 今親不知城に行くのは死ににいくものだよ」


桜は銀太にそう言うが、銀太は稟とした目で言った。


「ここでああだこうだ言っても魔王軍は待ってはくれない。 他に策はありますか?」


銀太の的確な指摘に一同黙り込む。


「本隊を動かせないなら俺の隊が行くしかない。 南は俺らに任せて東と北をなんとかする策を模索してくださいや」


「銀太、死ぬ気か?」


「冗談。 お嬢と元の世界に帰るまで死ぬつもり毛頭ないよ」


銀太は有無言わせず立ち上がる。


「だから、お嬢の事、頼みます」


「………すまん、銀太。 生きて戻って来いよ。 お前とはまだ決着ついてないんだからな」


金次はそう言った。


「保科隊、出るぞ!」


「応ッ!!」


保科隊は春日山を出立しようとしている矢先。


「銀ちゃん」


「……………」


銀太は優しく遥の頭を撫でた。


「わ、私、私がなんとかするから銀ちゃんは行っちゃダメ!」


「なんとか?」


「私は神子だよ。 私が行けば銀ちゃんまで死ぬことはない。 だから銀ちゃん。 私に任せて!」


銀太は大きく溜め息をついた。


「却下な」


「でもでもでもでも」


「でもじゃなくて……。 大恩ある社長の娘を自分が助かる為犠牲にしてしまったら、俺は永久に社長に合わせる顔がなくなっちまう。 お嬢は俺を失業させる気?」


「……………………いっつも社長の娘なんだね……」


「ん?」


遥は目に涙を溜めていた。


「銀ちゃん、観覧車で約束した事覚えてる?」


「………………」


「私、あの時と気持ちは一切変わってないんだよ……」


ーーーー銀ちゃん、私をお嫁さんにしてくれる?

ーーーーお嬢が大きくなったらね。

ーーーー約束だよ?


「私、大きくなったよ……。 歳だって銀ちゃんと釣り合いがとれるようになったんだよ……」


遥の目からポロポロと涙がこぼれ落ちていく。


「銀ちゃんのいない世界だったから私は、私は、諦めて神子になった。 でも銀ちゃんがこの世界に来た……。 初めて孫いっちゃんに連れてこられた銀ちゃんを見たあの時、驚いたよ。 死んだと聞いていた銀ちゃんが孫いっちゃんと一緒に立っていたあの日……。 本当はあの時、私、神子として死ぬのが怖くなったの…………」


「…………お嬢」


「顕如さんが、銀ちゃんが死んだ一因は魔王の魔力の干渉が影響している。 だから私は銀ちゃんの敵をとろうと神子になった。 でも、でも銀ちゃんは生きていた。 だから私は死にたくなくなっていた。 ………だってね、銀ちゃんは生きてるんだよ? 大好きな人がいるのに死にたくない………」


遥は、下を俯き呟いた。


「………でも」


「私が生きたいと思ってしまったから、正宗が……、信玄のおいちゃんが、孫いっちゃんが………。 私がこの世界での大事な人がどんどん死んじゃった……」


「お嬢………。 そりゃ勘違いだ」


「え?」


「信玄さんにゃあんまり話した事はないからはっきり言えないが孫一や正宗が死んだのはお嬢の生きたいというワガママの性じゃない。 正宗も孫一も己の信念で戦い、死んでいった。 お嬢よっか短い付き合いだったけど、俺は連中と一緒の事考えている」


「え?」


銀太は遥の両肩をぐっと掴んで言った。


「お嬢の犠牲に何もかも押し付けた平穏なんざやってやれっか。 そんなんは平穏なんざじゃない。 世界は平穏であっても俺らにしたら敗北だ」


「……敗北?」


「ああ。 敗北だ。 覆す事の出来ぬ敗北を背負って生きていける程器用な生き物じゃないんだよ……。 それが男………、いや、侍だと思う」


「でも私、銀ちゃんが死んじゃったら私だって生きていけないよ」


「………お嬢。 約束する。 生きて帰ってくるって」


「………本当?」


「俺がお嬢に嘘ついたことあったか?」


遥は首を横に振る。


「な?」


「でも、親不知は……」


「親不知が抜かれたらここだって危険さ。 それに桜姫……。 この世界のお嬢の親友だって危険になる。 だからちょいちょいと俺が行ってくるだけさ」


「……………」


「それに勝算がないわけじゃない。 全くなければ親不知に行く事を志願するわけじゃないさ」


「勝算………、あるの?」


「お嬢、忘れた? 手抜川での俺の策略。 圧勝だったじゃないか。 またあんな感じにちょいちょいと片付けてくるから大人しく待ってなって」


「銀ちゃん、絶対だよ。 絶対生きていて帰ってきてよ」


「了解」


銀太はおどけて右手で簡単な敬礼のポーズをとる。


「さて、行くよ」


「うん、いってらっしゃい」


遥は銀太を見送った。



「さてと」


銀太は自分の部下に向かって言った。


「正直に言うが、今から行く親不知は激戦地。 はっきりいって勝算は全く無い。 それでも付いてきてくれる命知らずは付いてきてくれ」


銀太直属の部下は顔を見合わせる。


「保科様……、我々を舐めてませんか?」


「んあ?」


「あんたの部下になった酔狂極まりない一団ですよ。 保科様が行くんなら俺らも行く。 それこそ真の主従ですわ」


「とはいっても口も悪ければ頭も悪い集団でやんすがね」


銀太の部下たちは豪快に笑い飛ばした。


「仕方ない。 保科様の部下だから」


「違いない、違いない」


ゲラゲラゲラゲラと、爆笑しながら銀太と親不知に行く事を全員が決めていた。

「わかった……、行こうぜ」


「応!!」

「そういや保科様」


「ん?」


「アレ、持っていきますか?」


銀太は少し考えこむ。


「そうだな。 籠城戦主体を想定しているが全て籠城戦ってのは保科隊向きじゃないしな。 あって邪魔になるもんじゃなし、持っていこう」


「ヘイ………」


「あ、那須」


「ヘイ?」


「ついでだ。 アレも持っていこう。 保科隊一世一代の鉄火場だ。 派手に行こうぜ」



久しぶりの携帯入力で作成したはいいですが、打つの時間かかりすぎ。

やっぱキーボードはいいっすね。速いから

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