第一章36話 御舘の乱2
椎名城に火の手が上がる。
打ち合わせどおり、軒猿衆の忍びが椎名城に潜入し放火したのだった。
「おし! 全軍攻撃開始!」
その火を見て銀太は軍配を手に持ち兵たちに指示を出した。
弓隊が火矢で椎名城に一斉に射撃を開始する。
歩兵隊が丸太を持ち、硬く閉まっている城門に丸太をぶつけこじ開けようとする。
騎兵隊は火炎瓶を手に持ち、城の周りを駆けながら要所要所で火炎瓶を城に投げつける。
消火、防衛、迎撃を一斉に行える兵数のいない城内は混乱していた。
「焼け! 夜空を朱色に照らせ!」
弓隊は通常の矢とは異なる形をした矢を手に取る。
矢先が筒状になっており、一見殺傷力の低そうな矢であるが……。
「爆矢、放て!」
弓隊は城内に向けて爆矢と呼ばれた矢を放った。
ズドーーーーーン!
ズガーーーーーン!
ズドーーーーーン!
爆矢は着弾と同時に化学反応を起こし、爆発する。
一発の威力はこの世界の鉄砲以上だった。
この世界では画期的な発明であるが、銀太は漫画でこの爆矢を知っていたためそれを模倣して作ったにすぎない。
しかし敵はこんな武器を見たこともなく、恐慌に陥っていた。
「保科様! 敵の一部隊がこちらに向かってきます!」
兵の報告を聞いた銀太は向かってくる部隊を見る。
「敵は怪しげな矢を使うが、所詮少数部隊! 各人奮起せよ! 目指すは大将首!」
敵部隊の指揮官は自軍を鼓舞しながら突っ込んでくる。
「……………バカだな、あの指揮官。 ……ただの的だ」
保科部隊は向かってくる敵部隊に爆矢を浴びせる。
ズドーーーーーン!
ズガーーーーーン!
ズドーーーーーン!
「爆矢とか得体の知れない兵器で攻撃されている兵士の士気はもはや最底辺……。 そんな状態で突撃を図ろうともこうなるのは目に見えてるのにな……。 突撃っていうのは、こういう勝ち戦のとどめに使うからこそ真の破壊力を生むんだよ……」
銀太は軍配を構えて全軍を鼓舞するように言った。
「保科隊、敵は爆矢で混乱している! 今こそ上杉の魂を見せるんだ! 突撃!!」
突っ込んできていた敵部隊は保科部隊の突撃によって離散する。
「保科、銀太ああああああああああああああああ!!」
一騎が保科部隊に大声で呼びかける。
「我こそは南条高弘! 貴公と一騎討ちを望む!! 返事は如何に!!」
「戦略では大敗北もいいところ……。 起死回生を狙って大将首を狙った一騎討ちか。 まるで教科書通りの相手だな……。 そして何より俺に一騎討ちを挑むのは愚の骨頂だ。 ちっとは諜報活動してればわかるものを世間知らずもいいところだな」
銀太は苦笑する。
「上杉の客将、山県遥が家臣、保科銀太! 一騎討ちを引き受けよう!」
銀太は長刀を手に取り、南条高弘の前に出向く。
「いざ……」
「…………尋常に!」
「勝負!!」
その場にいる両軍が二人の一騎討ちを見守る。
「銀ちゃん………」
遥は心配そうに銀太を見る。
銀太の左目は再び青白く光る。
南条高弘は一撃で一刀両断するように上から下に刀を振り下ろす。
先見の目を持つ銀太はそれを把握し、左下腹部に出来る隙に一撃を入れるため左に避け、持っている長刀で予定通りできた左下腹部を斬る。
「ぐは!」
左下腹部を斬られた南条高弘はうろたえる。
当然、うろたえる所も先見で既に知っている銀太はさらに追い討ちとばかりに長刀で南条高弘の首を斬る。
ダン!!
南条高弘の首は地面に落ちる。
銀太は生まれて初めて人を殺した。
しかし、戦場の魔性とでもいうのか、人を殺すときに大抵の人が感じる罪悪感も嫌悪感も不愉快感もなかった。
あるのは高揚感。
死と隣り合わせのこの世界が銀太の神経を狂わせている。
……そう、自分に言い聞かせた。
人から吹き出る血飛沫を見て、嫌悪どころか、心躍っているのは戦場の狂った空気。
そう思わなければ、銀太はこの自分の中に沸いた感情の為に崩壊しそうになる。
こんな猟奇殺人者が持ちそうな感情は、現代日本に生きる銀太にとって、自らの事ながら信じられない感情なのだ。
「南条高弘、討ち取ったり!!」
自軍が鼓舞され、敵軍が自らの総大将が討たれたことに戦意喪失している。
完全勝利だった。
その勝利を、遥は悲しそうな目で見つけていた。
一方、銀太の目論見どおり、出陣していた椎名の目に赤く染まる自城の方角の空は見えていた。
「なんだ、あれは……」
「ほ、報告します。 椎名城に上杉の別働隊が強襲! 椎名城が炎上しております!」
「な、なんと!」
同じころ、椎名軍と対峙していた上杉本陣でも赤く染まる空が見えていた。
「早いね。 もう真っ赤に染まっている」
「ええ……。 銀太の爆矢とかいうやつは武士の戦いとしてはどうかと思いますが、威力は認めざるえませんね」
「さて、じゃあ……」
桜はコホンと咳払いをして
「敵は今、浮き足だっている! 今こそ最大級の好機だ! 全軍突撃せよ! 今こそ、謀反人椎名を討て!」
と、号令を下した。
椎名軍は混乱に混乱。 指揮官は混乱する自軍を鎮める術を持っておらず、いや、自身も混乱していた。
「く……。 永生の兵の癖に謀略を駆使するとは!」
元来、永生家の戦いは策略に頼らず己の武勇で突き進む武の国として生きていた。
謀反こそしたが椎名もその流れを汲んだ戦いを常套としている為、策を講じる新党首にさらに反感を買った。
しかし、次々と自らの家臣は討たれいく。
「姫、今が絶好の好機!」
「わかった。 今こそ毘沙門天の加護を得て、敵を打ち砕け!!」
桜は凛と通る声で言い放った。
兵士たちはわが身に毘沙門天、即ち、戦いの神が宿ったと思い込む。 気の持ちようとでもいうのか、ただでさえ強い上杉軍がさらに強大な強さになる。
金次は上杉謙信隊の副将として桜の言葉に続く。
「上杉謙信部隊、尚江金次隊、進撃開始! 獅子奮迅の働きを見せよ!」
「上杉謙信隊、金次に遅れるな! 獅子奮迅の働きを見せよ!」
「上杉謙信部隊、尚江実綱隊も続くのだ!」
三隊が連携して、それぞれ椎名軍を攻撃する。
三隊の意気が見事に合い、椎名軍にさらに大打撃を与えた。
勝敗は椎名安種の降伏により上杉に反目する勢力は滅んだのだった。
ひっさしぶりの投稿……。
最後は2月ですか、そうですか……。
ちょっと、いうか半端なく、厄年と!!といいたくなるトラブルに次ぐトラブルが立て続けに発生して、執筆どころじゃなかったふじぱんです。
事故の加害者になるわ、詐欺にあうわ、散々でしたが、まぁ、そんなことはおいといて
とりあえず44話まで作ってはいるので、のんびりまったりと投稿していきます。
おまたせしてしまいもうしわけありません。
え?
待ってない??
……ですよねぇ。 とりあえずはこそっと更新します。