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第一章34話 御館の乱前夜

 朝井・麻倉・足利連合軍は兄川の戦いにおいて、魔王軍の前に劣勢の戦いを挑むも、大敗北を期してしまう。

 魔王軍の勢力を畿内入りを許してしまったのである。


 戦勝の宴にわく、岐阜魔王城。

 しかし、戦勝に関わらず、渋い顔をしている男が一人いた。


「牡丹がしくじり、自害したとな?」


「はい……。 残念ながら」


「まさか、閻魔丸を服用した牡丹が散るとは……」


「殿……。 上杉にも閻魔丸を服用した者がいます。 名を保科銀太。 神子である山県遥の配下の者の様です」


「あの神子の配下? ふむ……。 あの神子は大殿と相打ちになって貰うため生かしておいたのが仇となったか……」


「唯一、大殿を殺すことが出来る女です。 殿の判断は誤ってはおりませんでした……。 しかし、神子を擁する上杉は強兵。 神子と上杉が結託するとは想定外でした」


 桔梗は、軍配を握りしめていた。


「ふん……。 天下を戴くのに、万時うまくいくとは思うてはおらん」


「恐れながら!」


 瑠璃が口を挟む。


「牡丹の敵討ちは私に任せていただけませんでしょうか!」


「……答えは否です。 下がりなさい、瑠璃」


 桔梗は軍配を口元にあて言った。


「なぜです!」


「まもなく始まる朝井攻め……。 その先鋒として命じられるのは私たち羽柴軍。 その軍勢の中に牡丹はおろか、あなたまでいないとなると、織田家中の方々はどう思うでしょうね?」


「そんなの関係あるのですか!?」


「大いにあります。 私たちの目的は殿に天下を取らせること。 私たちはまだその第一段階に入ってるところなのですよ……。 まだ、織田家中の方々に変に気取られるわけにはいきません……」


「桔梗は! 桔梗は悔しくないの!? 幼きころより殿に拾われ、一緒に育った牡丹が殺されたのに!」


「……悔しくないわけないでしょう……。 でも、今は殿の、殿の天下の道が優先です!」


「……く!」


 瑠璃は渋々引き下がる。


「……いずれ上杉と雌雄を決することもありましょう。 そのときこそ、上杉を討ち、牡丹に天下という土産を持っていけばいいのです」



 一方、場所は変わって春日山城。


「想定どおり、椎名殿、柴田殿、南条殿が謀反を起こしました」


 金次はゆっくりとした口調で桜に言った。


「思ったより早かったね。 ひとつずつ、速やかに鎮圧しましょう」


 金次は地図を広げる。


「さて、どこから攻めますか?」


 地図には赤く塗られた城と青く塗られた城がそれぞれ描かれていた。 赤は謀反を起こした反乱軍の城。 青は自軍。 赤の城が青に比べると多い。 半数以上が、反乱に加担したと見てよかった。


「かなり多いね」


 遥はその地図をじっと見て呟いた。


「銀太殿。 銀太殿ならどのような策を使いますか?」


 銀太はそう尋ねられ、地図に目を落とす。


「後方の憂いが無い以上……」


 銀太は扇子の先を春日山城に指す。 そしてゆっくりと隣接している一之瀬城、葵城を通過させ、椎名らの篭る椎名城を指した。


「一気にここを落とすのが味方の被害が少ない」


 尚江実綱は首をひねりながら言った。


「どのようにして?」


「一之瀬、葵を攻めかかる。 そうすれば両城に救援に椎名が来るだろう。 その間に椎名城を別働隊が攻める」


「椎名が援軍を出さなかったら?」


「出す……」


 銀太の左目が青白く光っていた。


「銀太殿が出すと断言するということは、椎名殿は援軍を一之瀬、葵に出すでしょう。 しかし問題は如何に椎名殿を一之瀬、葵に引き付けるか……ですか」


「そりゃ、ここに上杉謙信がいれば、躍起にもなるだろ?」


 銀太は一之瀬、葵をぐるっと囲った。


「躍起にはなるでしょうが、肝心の桜姫が討たれでもしたら何もかもおしまいですよ……」


「金次……、お前は本当に姫に過保護すぎ」


「何を言ってるんです! 私はあらゆるケースに想定しているんです! 猪突猛進な銀太には言われたくありませんよ!」


「猪突猛進って、俺が何も考えていないような短絡バカだっていってるのか、貴様は……」


「今までのあなたの所業を振り返るに、そう揶揄されて仕方の無い箇所は多々ありましょうや。 自戒なされませ、上杉の将として生きるのならば!」


「俺は上杉の将になったつもりはない。 俺はお嬢の将だ!」


「ですが遥姫は上杉に帰属されているのをお忘れか! 銀太の主君は上杉に帰属しているという事は遥姫の将であるあなたも上杉の将! それを理解しなされ!」


「ちょっと、金次!」


「銀ちゃん!」


 金次と銀太の口論に口を挟む桜と遥。

 しかし……。


「姫は口を挟まないで戴きたい。 これは銀太と私の論戦なのですから」


「お嬢、これは男同士の喧嘩だ。 女が無闇に口を挟むもんじゃない」


「……あ、あんたら……」


「……あはははは……。 はぁ……」


 桜のこめかみには血管が浮かび、遥は苦笑しつつもため息をはく。


「……遥、あんたの部下も私の部下もどうしてこうなのかね」


「……まあ、あの二人らしいといえばそれまでだけど」


「いっそ二人とも不敬罪で」


 桜は腹に手を当て横一文字に動かす。


「桜ちゃん、それやりすぎだよ」


「全く、侍も落ちたものだわ。 主君に平気で不敬を働いて悪いとも

思わないんだから」


「そうかな……。 金次さんも銀ちゃんも立派な侍だよ」


「どこが?」


「ああして硬く譲らないのは己の信念を信じているから。 金次さんは桜ちゃんを守るのを第一とし、銀ちゃんは如何に犠牲少なく勝つことを第一としている。 だから衝突するのも当たり前かな」


「そもそも銀太は初陣も果たしていないという有様ではありませんか! なのにどうしてこうも偉そうに出来るのか不思議でなりません!」


「初陣果たしてなきゃ男じゃないって前時代的だっての。 これだから生きた化石は」


 二人は不毛な言い争いを続けていた。


「申し上げます!!」


 二人言い争いが止まったのは、この伝令の一言だった。


「朝井・麻倉・足利連合、兄川にて魔王軍と対峙! 連合が敗走しました!」


「……金次、わかったろ。 急がなければならないってことが」


「………他に策はないのですか?」


「古今東西、頭を討てば大抵の戦争は終わるさ。 宗教戦争でもない限りね。 こんなとこで上杉の勢力を削ぐような真似は出来ない。 それにそもそも、椎名らの裏切りも魔王軍のだれかの思惑が絡んでる。 そう、思わないか?」


「…………確かに。 桜姫を狙った刺客は織田家臣、羽柴秀吉の手の者。 つまり魔王軍は我々上杉を危険視している……」


「朝井・麻倉・足利が滅べば次はどこに兵が向くか……。 ここだろう? そのために色々な策を講じて上杉を疲弊されようとしているのさ」


「…………姑息な手段を使う。 わかりました、銀太の策を採用しましょう。 で、桜姫の安全は確実でしょうね?」


「そりゃ金次。 お前次第だろう?」


「はい?」


「まさかお前、戦場で桜姫おいて別働隊に入るつもりだったのか?」


「そんなつもりは毛頭ないに決まっているでしょう?」


「じゃあ、桜姫の傍で如何に桜姫に矢刀が届かないように指揮すればいい」


「……ところで別働隊は誰が?」


「俺が行くよ。 俺と会いたがってる奴がいるからね」


「会いたがってる?」


 銀太はニヤリと笑って再び地図をみつめていた。

参考までに


羽柴秀吉家臣団


加藤牡丹→加藤清正

福島瑠璃→福島正則

石田小梅→石田三成

竹中撫子→竹中半兵衛

黒田桔梗→黒田官兵衛

蜂須賀百合→蜂須賀正勝

羽柴紅葉→羽柴秀長


見事女ばかりな猿羽柴軍団。

秀吉自体がそもそもBL嫌いで女好きですからね。

そんな設定を盛り込んでみたらこうなってしまったわけで。

まもなく織田VS上杉の手取川の戦いが勃発しますが、確か秀吉は史実では不参加・・・。

西国にいっちゃいますからね、羽柴・・・。

羽柴より柴田の設定も一応ありますがそれは別の機会に。


ちなみに第一章模倣編、全骨組み終了。

終了予定は52話……となっていますが、設定変更やらそのたトラブル(路線変更など)がおきたらまた伸びます。

第二章の舞台はウェンデス王国に戻ります。

結構批判の高い第一章模倣編。

話飛びすぎとか番外編で書けよとのご意見頂いておりますが

すみません……。

本編に盛り込んでいるのは訳があるんです。

ネタばれになるので言えないもどかしさ……。

そもそもなんで「模倣」と冠してるのか……。

それもそろそろ(というやっと)書けるので個人的には楽しみなんですが、ここで語ったら面白くないですよね。

一章35話は一応投稿準備できてるので明日には投稿します。(携帯で)

36以降は現在まだ執筆段階。

これからは戦記らしく、戦争、戦争戦争になってしまいます。

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