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第一章28話 銀の決意4

 地獄……。

 宗教的価値体系において、霊界のうち、悪行を為した者の霊魂が死後に送られ罰を受けるとされる世界。 多くは地面の下にあり、厳しい責め苦を受けるとされる。 魔界と同一視されることもある。


 仏教では、六道(人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)の最下層。 閻魔の審判に基づいて様々な責め苦を受けるとされる世界。

 キリスト教では、神の言葉に背いた者や、罪を悔い改めない者が永遠の責め苦を受けるとされる世界。 最後の審判において人間は、地獄に向かう鬼畜と人に分けられるという。

 イスラム教では、ジャハンナムと呼称される。 世界の終末に際しての審判において、不信心者や悪事を成した者が灼熱の責め苦を受けるとされる世界。


 出典 フリー百貨辞典Wikipedia


「で、地獄に着いた訳なんだが……」


 銀太は地獄駅から降りて、景色を見て溜息をつく。


「地獄名物、地獄饅頭」

「元祖地獄ラーメン」

「地獄のセレブご用達の店、HELL」

「針の山から地獄の景観を楽しむ2泊3日のツアー」

「めんそーれ地獄」


 目に飛び込んでくるのは、ここはどこぞの観光地かと言いたくなるような商魂たくましくも感じる看板。


「根本から地獄のイメージをひっくり返されたよ……」


「まあ、この駅で降りるのは死神だけですから。 死神の働き手の誘致に地獄も必死なんですよ。 好き好んで地獄で働きたいと思う死神はいませんから」


 ティックスは自販機で買ったジュースを飲みながら説明した。


「咎人は咎人の区域がありますが、今はまだ銀太さんには関係ありませんけどね。 ま、試練に落ちたらそっちに行っちゃいますが」


「まるで人事のように言うな」


「だって人事ですから」


「で、試練を受けるにはどうすればいいんだ?」


「もうすぐ迎えの人が来る手筈になっています。 まあ、気長に待ちましょう。 銀太さんもジュース飲みます? 地獄コーラ」


「いや、炭酸はいい……」


「そういえば銀太さんって免罪符ってご存知ですか?」


「免罪符? なにそれ?」


「下界の教会とかいう所がお金を取って天国の切符を売ってるらしんですけど、その免罪符を買ったとかいう人の担当になったことがありまして、色々大変な目にあったんですよ」


「ほお?」


「免罪符を買ったから俺は無条件で天国行きだとかなんとか言ってらしたんですけど……生前裁判で、地獄送りの判決が出ちゃって、それはもうごねて、再審を要求する! だとか、俺は免罪符を購入した! だとか、色々と私に食いかかられたんですよ。 免罪符なんて、人間が勝手に発行したお金を得る手段でしかないのに。 まあ、発行した人も問答無用で地獄行きになってましたけど」


「で、その話の教訓は?」


「……んー、そうですねぇ。 教訓の提示というか、暇そうにしている銀太さんの暇つぶしになればと思っての他愛の無い世間話のつもりでしたから」


「そりゃ、ご厚意痛み入る。 興味は無いことも無いが、今は自分の心配で精一杯だ」


「心配?」


「試練に落ちたら地獄行きだと散々脅した張本人だろうが、お前は」


「まあ、落ちるときは落ちますよ。 そもそも成功率なんて一割切るんですから……」


「……一割!?」


「あれ? 言ってませんでしたっけ?」


「初耳だよ、お嬢ちゃん……」


 一割……。

 この数字を聞いて、銀太の内心は不安に包まれた。


「一割か……」


 そんな中、迎えの者と思われる者がやってきた。


「やあやあ、お待たせしました。 遠路はるばるご苦労様です。 私、こういったものです。 短い間ですが宜しく」

 

 男はそういって名刺を銀太に手渡した。


「地獄省亡者特別試練執行部係長 トルーマン」


「地獄省……。 係長……。 なんだかなぁ……」


「ささ、地獄庁舎まで、お送り致します。 試練に関する説明等は省庁でご説明しますよ。 ささ、車に乗って」


 勧められるまま、車に乗るティックスと銀太。

 二人が車に乗ったのを確認すると、トルーマンは車を発車させた。

 

「えっと、確か保科銀太さんでしたね。 詳細な情報はメールにてご確認致しております。 閻魔丸を服用されてこちらにこられたとか。 しかし、なんと言いますか。 下界の方々の心理というのがよくわかりませんなぁ。 まさに九死に一生ともいえるこのような大博打を行うその心情。 ほとほと感服する次第で御座います」


「………」


 そもそも成功率一割という話はついさっき聞いたばかりだ。

 閻魔丸を飲ませた金次からも、こっちに来てから地獄に来るまでほとんど一緒にいたティックスからも聞かされていなかった、この確率の低すぎる賭け。

 知らぬが仏とはよく言ったものだ。

 まあ、知らないなら最後まで知りたくなかった情報だが……。

 いっそ、自分の対人運とでもいうのか。

 出会う奴出会う奴が曲者過ぎて、いかに自分がまだ真っ当な奴だと認識させられる。


「まあ、いわゆるあれですな……。 今から最終確認をさせて頂きます。 試練……、受けますか?」


「……ああ」


 ここ、地獄まで来たのは試練とやらを受けるためだ。

 それに、死は覚悟しているし、地獄送りも覚悟している。

 お嬢を守る力が得られないのなら、俺はあの世界で生きていく意味を失う。

 唯一、あの世界で生きる意味。

 力なき者の発言はただの野次と、どっかの誰かが言っていたっけ。

 おかしいものをおかしいと言える為には力を手に入れるしかない。

 異邦者である俺があの世界で権力という力を得るのはまず不可能。

 なら、暴力の力を得るまで……。


「わかりました。 覚悟がお有りな様ですね。 なら、こちらも真剣に審査させて頂きます」


「望むところだ……」


 吹っ切れる、とでもいうのか。

 先ほどまで銀太の中にあった不安は一抹も感じなくなった。

 ただ、チカラを得て、お嬢の元に帰る……。

 それだけだ……。


 やがて、赤い色をした高層ビルが見えてきた。


「あれが地獄省庁です。 地獄を統括する……役所ですな」


「綺麗なビルですねー」


 ティックスは地獄省庁を見て、観光客のようにはしゃぐ。


「ええ、それはもう……。 なにぶんお金かけてますから。 どうです、見習いのお嬢さん。 正式な死神になりましたら地獄で働きませんか?」


「や、私はそのまま審判省で就職を狙ってますので」


 と言って、何気なくやってきた勧誘を華麗にスルーする。 

 トルーマンはがっかりとしていた。


 やがて、地獄省庁の地下の一室に案内される。


「このドアの先に試験官がいます……。 まあ、試験の内容はまずは軽く問診です。 気構え無くて気楽に答えてください」


 銀太はゴクリと唾を飲み込み、扉に手をかけた。


「銀太さん、銀太さん」


「……なんだよ?」


 ティックスは銀太に言った。


「ノックしないんですか? 最低限のマナーだと思うんですが……」


「…………」


「ティックスさん!」


 トルーマンがティックスに向かって人差し指を口の前で立てるジェスチャーをする。


「あ、やっちゃった」


 つまり、何か……。

 もう、試練は始まっているということか……。

 これはティックスのボケに感謝しないとな……。


 銀太は軽く息を吸い、肩を上下させる。

 そして意を決してノックした。


「どうぞー」


「失礼します」


 銀太はゆっくりと扉を開ける。


 中には3人の男が椅子に座っていた。


「どうぞ、お掛け下さい」


 銀太は促されるまま用意されている椅子に座る。

 男の一人が書類に目を落とし、


「えっと、保科銀太さんですね。 私、あなたの試練の一次試験官を行いますベッチャーと申します。 さて、まずは試練の内容の説明をさせて頂きます。 まず、あなたの求めるチカラを得るためにはそれを扱うに相応しい、知、心、体、そして運の4つの要素を持っている事が条件となります。 私の担当、即ち一次試験は知を司る試験ですね」


「知……ですか」


 つまり、それって……。


「まあ、要は知識を計るのに最も見極めやすい筆記試験とさせて頂きます」


 ……マジデスカ。


 ベッチャーの左となりにいた男が問題用紙と解答用紙、そしてペンを持って銀太の前にある机に持ってくる。


「制限時間は特にありません。 問題を解いたら終わった旨を私にご報告下さい」


 ベッチャーと横の二人は席から立ち上がる。


「それでは始めてください」


 そういって退出して行った。


 銀太は恐る恐る解答用紙を開いた。


「…………はい?」


「問題その一。 1+4の答えを書きなさい」


 引っ掛けか?

 問題用紙をすみずみまで見渡す。

 あまりにも簡単極まりない問題だった。

 小学校低学年を修学していれば、どの問題も簡単に解けるような問題。


「…………………」


 全ての解答欄が埋まった。


「あのー、終わったんだけど?」


 ベッチャーは入室し、解答用紙を銀太から受け取り、答え合わせをする。


「やりますね……。 全問正解です」


「………………そりゃどうも」


「それでは、一次試験合格の証です。 お受け取り下さい」


 ベッチャーは銀太に野球ボールくらいの大きさの赤い球を渡した。


「それを二次試験の試験官にお渡しください。 以上です。 お疲れ様でした」


 ベッチャーは退室していった……。

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