ステージ02
ステージ2に変わると、すぐに出場は顔を曇らせた。
「バグの匂いが濃いな」
「何で分かるんだい?」
須戸が尋ねると出場は軽く返す。
「デバッガーの勘ってやつだ」
ステージ1はゲームシステムの基本を作る必要が有るため、他よりもテストプレイが多くなる。それがデバッグの作業となりバグも修正される事が多いが、ステージ2以降はステージを増やす事が目的になるので、まず作ってしまい修正は後からとなる。それでバグが残りやすくなるのだ。
だがそれ以上に何か危険な気配を出場は感じていた。
ステージ1と同じく画面中央に変化が有り、クリア条件が表示される。
『敵に気を付けろ。触れるとゲームオーバー』
それを見た途端に、先ほどの気配の正体はこれだと出場は確信した。
進むとすぐに敵キャラクターは見つかった。水色の球体に目玉が付いているだけのシンプルな形状で、同じ場所を左右に移動している。しかし動き続ける物体はそれだけで予測を困難にする。「意図しない動き=バグ」ならば、動く敵はそれだけでバグの温床なのだ。
これは意外なところに危険が潜んでいるかもしれない、さっきよりも慎重に行動した方がいいと出場が警告し、須戸も同意する。
二人は最初の敵を観察した。触れればゲームオーバーなので慎重に動きを見極めるが、最初だけあり簡単に通り抜けることができた。
その後も出場の懸念に反して問題なく進む。敵の動きも縦か横に動くだけで、奇をてらったものがなかったからかもしれない。
(心配しすぎたか)
途中まで来た時、出場は息を吐いた。だがそれで知らずに緊張の糸が切れていたのだ。
ステージを進む中である仕掛けがあった。敵を避けるために中空のブロックに乗るのだが、そのブロックは乗ると落ちてしまう。タイミングを間違えばブロックを失い、そのまま敵の前というわけだ。
普通ならタイミングを合わせる事だけ考える。だが出場はふと思ってしまった。
(敵の上にブロックを落としたらどうなるだろう?)
そして無意識にそれを実行していた。
(しまった!!!)
その瞬間に我に返ったが遅かった。ブロックは落下し、ちょうど移動してきた敵の上に落ちる。
そしてブロックは敵にぶつかった。
時間が止まったかのように一瞬が長く感じる中、何が起こるのか息を止めて待っていたが、敵はブロックをすり抜け、何も異常は起こらないまま移動した。
「何してるんだい!心臓が止まるかと思ったよ!」
数秒後、須戸が激しく動揺しながら出場に泣きそうな顔で訴える。
「すまない。無意識だった」
もしキャラクター以外に接触した場合の処理があったなら、そしてそれがプレイを止めるような処理だったなら、出場たちはゲームを続けることができずに永久に閉じ込められていただろう。今回はある意味プログラマーがゲームを作り慣れていないおかげで、何の処理も書いて無かったから助かったのだ。
バグを発見して減らす手伝いをすることで、ストレスのないプレイに貢献するのデバッガーの仕事だというのに、そのデバッガーの性がこんなところで不利に働くなんて思っていなかったと出場は思った。
(ますますデバッガーの意味が無いじゃないか!)
早くこのゲームをクリアして元の世界に戻ろうという気持ちが強くなり、出場はすぐに集中してプレイを再開し、そして二人はステージ2をクリアした。