表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/55

四天王一人目



 理想は、実現可能であるとは限らない。

 それを制限するのが自らの不足なのか、他人の存在に達成できない要因があるのか、覆しようのない環境に因るのか。様々ではあるが、何かに阻まれることの方が多い。

 多くが次善の策を取る。理想には及ばないが、次に望ましいものを得るための方策を考える。他にも自分の不足を補い、他人を説得するか排除するかして、理想の実現に向かい続けることもできる。

 愚かなことは、どうしようもないことをどうにかしようと奔走することだ。人間は、機械なしでは空を飛べない。諦めた方がまだ良い。

 しかしそれが、どうしても実現しなければならない理想であれば?

 その場合、最前の次善の策は何か。





 放課後。ユウダイとマナブは二年の教室に向かって、廊下を歩いていた。ヒロとハルに会いに行くためだ。

「しっかし、四天王先輩って序列高かったんスねー」

「まぁ体が鍛えてあるから、意外ってわけではないけど。生徒会もやりながらってのは、スゴいよね」

「それにしても、ハル先輩やヒロ先輩もやっぱり序列高かったんスね」

 クラスメイトに、比武に詳しい眼鏡の子がいたので、聞いてみた。序列第一位は会長、第六位までは四天王の五人。そこに、ヒロとハルが続くようだった。

 高い序列の生徒は、その筋では情報がやり取りされているようで、通っている道場やジム、果ては成績から交友関係まで知っていた。

「僕は、二人の成績が学年一位と二位だっていうことが、驚きだったよ」

 なぜかショックだった。自分が今欲しい筋肉というものを、すでに手に入れている二人が、自分の得意分野でも優秀だった。悔しいわけではないけれど、筋肉馬鹿であってくれた方が嬉しかった。

「筋トレも比武もやって、道場やジムにも通って――、勉強もしてるってことっスよね。本格的に化け物かと思うっスよ」

「……あんまり、同年代に教えてもらうの好きじゃなかったけど、今度方法を教えてもらうよ」

 筋肉では敵いはしないし、勉強している学年も違うけれど、負けられないと思った。やっぱり、得意分野と思っていたもので劣るのは、悔しいのかもしれない。

 そうこうしているうちに、二学年の教室が並ぶ二階に上がった。

 はじめは二年の教室に行くのに躊躇いもあったが、今は気にせずに入っていける。春校の先輩達はみな優しく、特に筋トレを頑張っている生徒に対しては暖かだった。

「おっ、また来たのか二人とも」

 そう声をかけて、ヒロとハルを呼んでくれる男子生徒。

「……大丈夫? ヒロハルから変なこと教わったりされたりしてない? 何かあったら、すぐわたし達に相談するのよ?」

 そう気にかけてくれる女子生徒も、毎回いた。特にマナブはかわいいと気に入られ、何人かに拉致されそうになるほどだった。

「筋肉もいいと思うけど、あなたはその華奢さが似合っていて、そのままで需要が大きいのよ? そこも理解した上で筋トレするか判断してね?」

 そうどこか切実な声で手を握りながら言う女子生徒が、友人らしき数名から、どこかへ連れ去られていくのも恒例行事だった。

「YES ショタコン、NO タッチぃいい!」

 という断末魔を残して、今日も見えなくなっていく。

 そんな毎回の流れが終わり、ヒロとハルがバッグを肩に掛けてやって来た。

「悪い。俺達今日は筋トレ館行かねぇわ」

「わかってるっス。四天王先輩たちと、比武するんスよね?」

「ボクたち応援に――観戦に行かせてもらいたいと思って、来たんです」

 すでに二人で話し終わって来ていた。二人は今月と言っていたが、今日言ったことを後に回さないだろうと思った。そして、今日やらないなら、今日言わなかっただろうと。

「別にいいけど――、比武にも興味あったっけ? 興味ないなら、見ても面白くないと思うよ?」

 ハルも来て、言う。

「実はオレたちも、興味あるんです。自分が強くなれるかもしれないことにも、ハルさん達が一所懸命やっていることにも」

 応援を観戦に言い換えたり、強くなれるに『かもしれない』と加えるところに、マナブの性格が出ているようで、ヒロは笑った。

「まぁ、朝もコソコソ見てたみたいだし。そもそも観るのは自由だしな」

 そう言って、わしゃわしゃとマナブの頭を掻いた。長い髪がくしゃくしゃになる。

「わ、やっぱりわかってました?」

「会長に声かけられてたしねぇ。そりゃ気づくよ」

 ハルは言って、じゃあ行こうかと促した。どこに行くかもわからないまま、マナブとユウダイは二人についていく。

 やはり、春校の中でも鍛えられた体を持ったヒロとハルは、目を引く。すれ違う生徒は全員が歩く四人を見ていた。

 視線を感じて、マナブとユウダイは思わず下を向く。堂々と視線を受けるヒロとハルを、真似できないと思いながら。

 そもそも赤い短髪や茶髪の長髪で目立っており、成績や比武と肉体のいずれの分野かで、二人は知らない生徒はほとんどいない。その上、全裸で走り回ったり愛撫しあったり、朝の校舎で学長と脱いでいるのだ。

 マナブとユウダイも二ヶ月連続で一緒に朝から脱いでいたことで、悪い意味で知られていることは、本人達は気づいていない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ