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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第二話 辿り着きたい場所
39/55

改め捌き(2)



 マユは左利きだ。ハルも左構えのため、オーソドックス対オーソドックスの鏡合わせのようになっている。

 ジャブ、というか刻み。

 ハルの右拳がマユの胸元に飛んでくる。

 マユは後ろ足を少し曲げ、拳一つ分下がる。ハルは出した右手を戻さず、マユの首の後ろに手を開いて添える。キックボクシングのように開かないグローブではない、指の出た拳サポならではだ。

(マジかよ)

 顔面への膝でしかない。その遠慮の無さにヒロが驚く。サポーターの上に膝サポを着けているとはいえ、ハルの殺人膝である。

「がっ」

 その膝が届く前に、ハルが背中から道場の床に落ちた。マユはハルを見下ろすように横に立ち、足を持ち上げてハルの顔の横に、

ドン

と軽く音がする程度に落とした。

「それまで、だな」

 ヒロは、少し安心するように右手と声を上げた。マユの技量を疑ったわけではないが、やはり心配だった。

「あー、連続でやられた」

 マユへの信頼もあったが、先にヒロに負けた悔しさも残っていたのだろう。それが顔への膝に現れたのだとしたら、やはりやり過ぎでもある。

「動画撮ってても、イマイチ分かんなかったんだけど、結局どういうことだよマユ?」

「今から説明するわ。とりあえず、携帯並べましょうか」

 そう言って、マユは再びヘアゴムを外した。



「マユ? 近ぇんだけど。てか場所おかしいだろ」

 マユはヒロにあぐらをかかせた後、その上に乗ってスマホを持っている。

「何よ。わたしがせっかく丁寧に教えてあげようとしてるのに。教えてあげないわよ?」

「……いいけど、キャラじゃねぇだろ。デケぇんだよお前」

 言うが、ヒロの背中や肩が太すぎるため、170センチ近くあるマユでも、むしろ小さく見える。

「お前って言うな。デカいっても言うな」

 マユは言って、頭を振って後頭部で頭突きをする。ヒロは首を傾げて避ける。

 カシャカシャカシャカシャカシャ!

 マユのスマホから、連続撮影の音がする。

「あ、間違えちゃった☆」

「……お前な、露骨すぎるだろ。そしてそんなキャラでもねぇだろ」

 お前って言うなと言いながら、マユは写真をクラウドに保存する。ヒロはため息を吐いて、諦める。

「……反応してもしらねぇぞ」

「反応したら殺す」

 理不尽な扱いに、またため息を吐く。

「お前が乗ったんだからな。終わるまで離さねぇぞ」

 ヒロは仕返しとでも言うように、腕をマユの腹に回し、両手を組んだ。

「……ひぁ!」

 顔を赤くして、黙る。強がらない、本来のマユだった。

「ホラ、さっさと始めろよ」

「いいいいいーいわよせせ精々神妙に聴くがいいいいわ」

 上擦った声で、強がりだけは取り戻す。

「あのー、僕もいるんだけど」

 ヒロの後ろに立つハルからは、ヒロの背中に十分な余裕を持って隠れてマユの姿は見えない。が、また顔を赤くしたのがわかった。

 パン、と音がする。マユが自分の頬を両手で叩いた音だった。

「じゃ、再生するからよく観ておきなさいよ」

 そう言って、二つを同時に再生した。



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